《いらっしゃる》の敬語
「いらっしゃる」の敬語表現
「いらっしゃる」は、「おはいりになる」という意味の「入(い)らせらる」から転じた言葉で、「行く」「来る」「居る」という動詞の尊敬語になります。また、補助動詞「ある」「いる」の尊敬語でもあります。そのため、「いらっしゃる」はこれ自体で敬語表現として成立しています。「いらっしゃる」の敬語の最上級の表現
「いらっしゃる」はこれ自体が敬語表現ですので、さらに敬意を示して最上級の表現にする場合は、最高敬語を用いることになります。最高敬語とは、天皇と皇族、外国の国王・王族だけに使用することができる最上級の尊敬語を指していいます。「いらっしゃる」の意味にあたる最高敬語は「あらせられる」です。文法的には動詞「在る」に尊敬の助動詞「せる」「られる」が接続した連語となります。「いらっしゃる」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「いらっしゃる」はこれ自体で敬語となりますので、ビジネスメールや仕事上の手紙の中ではこのかたちのまま使用します。手紙の冒頭文やあいさつ文の定型表現として、たとえば「猛暑の毎日が続きますがいかがお過ごしでしょうか」「寒さが一段とつのってまいりましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか」「その節はたいへんお手数をおかけいたしました。その後のご経過はいかがでいらっしゃいますでしょうか」などと用います。ビジネスメールの中で用いる場合は「明日本社にいらっしゃった際に、少しお話させていただいてもよろしいでしょうか」「先日はご自身で現地までいらっしゃったそうですが、状況の変化は見られましたでしょうか」「御社のお役に立つ内容のセミナーだと思います。ぜひいらっしゃいませんか」「明日の会議に課長はいらっしゃらないと伺っていますが、それでお間違いないでしょうか」「当日、会場にはお車でいらっしゃるということでよろしいでしょうか」などと使います。
「いらっしゃる」を上司に伝える際の敬語表現
「いらっしゃる」は、これ自体で敬語として成立しています。そのため上司には「居る」「来る」「行く」という目上の人の動作を「いらっしゃる」という表現に適切に言い換えて伝えます。たとえば「午後は会社にいるか」ということを尋ねたい場合は、「午後は会社にいらっしゃいますか」とし、「社長がこれから視察に来る」ことを伝える場合には、「社長がこれから視察にいらっしゃいます」などといった具合に動詞部分を改めます。このとき、「いらっしゃる」という尊敬語だけではなく、「です」「ます」の丁寧語を付け加えて「いらっしゃいます」などに言い換えれば、より丁寧さが増して敬意のこもった敬語表現となります。さらに「いらっしゃる」は動詞の尊敬語だけではなく、補助動詞の「ある」「いる」の尊敬語でもあります。そのため、目上の人が話題になった内容を上司に伝える際には、この部分を適切に変換する必要があります、たとえば上司に対して「休みの日はどうしているのか」ということを尋ねたい場合は、「お休みの日はどうしていますか」ではなく、「お休みの日はどうしていらっしゃいますか」という具合に、補助動詞の「いる」部分を敬語に言い換えて伝えるようにします。
「いらっしゃる」の敬語での誤用表現・注意事項
「いらっしゃる」は「居る」「来る」「行く」の尊敬語として複数の意味を持ちます。そのため、「いらっしゃる」だけでは、どの意味の言葉の敬語なのか、不明な場合があります。たとえば「社長はいらっしゃいますか」と聞かれたら、「社長は会社にいるのか」「社長は会社に来るのか」、または「社長はどこかへ行くのか」といったように、内容が特定しにくいようなケースです。この場合は、どの行為の敬語なのかが相手に伝わりやすいように、前後に言葉を付け加えて状況を明確にすることが必要です。「社長は今社長室にいらっしゃいますか」「社長はこれから会社にいらっしゃる予定ですか」「社長は先方との打ち合わせにいらっしゃいますか」などとすれば、どの行為をさして尋ねているのか明確になるでしょう。また「いらっしゃる」の曖昧さを避けるために、「居る」は「おられる」、「来る」は「来られる」、「行く」は「行かれる」などと個別の行為を尊敬語「れる・られる」を用いた敬語表現に言い換えてしまうという方法もあります。ただし、「れる・られる」表現の敬語は、比較的尊敬の度合いが低く受け取られる場合がありますので、状況に応じて適切に使い分けるようにしましょう。さらに、「おられる」という表現は、「いる」の改まった表現の「おる」に敬語を加えたもので、文法的には誤りではありませんが、一方でこれは謙譲語の「おる」に「尊敬語」の「れる」を混用した誤用であるという解釈もあり、違和感を抱かれるおそれもありますので、その点は注意する必要があります。
「いらっしゃる」の敬語での言い換え表現
「いらっしゃる」はこれ自体で敬語であり、「居る」「来る」「行く」の尊敬語なので、言い換え表現を考える場合は、「居る」「来る」「行く」それぞれにふさわしい敬語をあてるのがよいでしょう。この場合、「居る」の尊敬語は「おいでになる」、「来る」の尊敬語は「お見えになる」「お越しになる」、「行く」の尊敬語は「いらっしゃる」となります。- 《いらっしゃる》の敬語のページへのリンク