《いってください》の敬語
「いってください」の敬語表現
「いってください」は、「行ってください」あるいは「言ってください」の二通りの漢字表記が考えられます。「行ってください」は「行く」に「ください」が結びついてできた言葉です。「ください」は「くれる」の命令形である「くれ」を尊敬語にしたものです。尊敬語が含まれているため「行ってください」はそれ自体が敬語表現であるとわかります。「言ってください」もまた、「言う」に尊敬語である「ください」が結びついたものであるため、それ自体が敬語表現です。「いってください」の敬語の最上級の表現
「行ってください」の「行く」には丁寧さも尊敬さも含まれていません。「行ってください」を敬語の最上級表現とするためには「行く」を敬語表現にする必要があります。その結果、ほかの語彙に言い換えない限りは、「行かれてください」は「行ってください」における敬語の最上級の表現になります。対して、「言ってください」の最上級の敬語表現は「おっしゃってください」です。これは、尊敬や丁寧なニュアンスを持たない「言う」を尊敬語「おっしゃる」に変更した敬語表現です。「いってください」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「行ってください」敬語表現ではありますが、ビジネスメールや手紙において、そのまま使われることは一般的にありません。「行ってください」の意味に応じて、次のように使い分けられます。迎え入れる場合には「当日、弊社展示室を解放しておきますので、ぜひお越しになってください」のように「行ってください」は「お越しください」となります。この使い方ではほかに「開場時間までにぜひお越しください」「ぜひ弊社展示会にいらっしゃってください」「セミナー会場までお出でください」などが例として挙げられます。よその場所に行くことを勧めるなら「現地イベント会場にお出かけください」、自分と一緒に行ってほしいときは「お時間がありましたら、ご一緒にいかがですか」、何かを持って行ってほしいときは「当日は弊社スタッフが資料を用意しています。出席される場合は、お持ちください」となります。
「言ってください」も、そのままビジネスメールや手紙に使われることが少ない言葉です。自分から言って出ることを促すなら「お申し出ください」を使います。ビジネスメールや手紙では「もし不具合ございましたら、お申し出ください」のように使います。自分たちに言って出てほしいと促すなら「お申し付けください」です。「担当の者にお申し付けください」あるいは「弊社店頭窓口でご用命ください」などの例文が考えられます。また、ほかの言葉と組み合わせて使われるのも一般的です。例えば、「もう一度」という言葉と結びつき、問い合わせに対して「弊社窓口において、その旨をもう一度言っていただけませんか」のように使います。
「いってください」を上司に伝える際の敬語表現
「行ってください」は敬語表現です。しかし、行動を相手に促すニュアンスを持っているため、上司のような目上の人にそのまま使うと、丁寧さに欠く言葉遣いだとみなされることがあります。「行ってください」を上司に使うときはクッション言葉を付け加えるとよいでしょう。クッション言葉は不快な印象を和らげるために使われる前置きの言葉のことです。例えば「差し支えなければ、行ってください」「もしよろしければ、行ってください」「お忙しいところ申し訳ありませんが、行ってください」のようにします。このような形で「行ってください」と伝えれば、不快なイメージが和らぎます。「言ってください」もまた敬語表現なので、率直な意見を上司に求める場合などに「言ってください」と使うケースは珍しくありません。ですが、「言う」には丁寧なニュアンスは含まれていないため、上司に使う敬語表現としてはあまり適切とはいえません。上司に「言ってください」と伝えたいのであれば「おっしゃってください」という敬語表現を使うようにしましょう。
「いってください」の敬語での誤用表現・注意事項
「行ってください」をより丁寧にしようと考え「行く」の謙譲語「うかがう」や「参る」を使い、「うかがってください」「参ってください」とする表現が使われる場合があります。しかし、これは誤用表現です。謙譲語は言葉の行動者がへりくだった表現です。ですが、「行ってください」は相手に行動を促しています。「うかがってください」「参ってください」とすると、相手にへりくだった目線で「行く」ことを促します。そのため、これらの表現は一般的に誤用表現とされています。「言ってください」を丁寧表現にしようとした場合に、「申してください」と表現する人は、少なくありません。「申す」は「言う」の謙譲語なので、一見すると、正しい敬語表現のように見えるかもしれません。「申してください」は、へりくだりながら「言う」ことを相手に求めることになるので、大変失礼な言葉になります。敬語は使い方を間違えると大変失礼な表現となる場合があります。「いってください(行ってください、言ってください)」のような、相手に行動を促す敬語を使う場合は、特に注意しましょう。
なお、「おっしゃってください」が二重敬語であると勘違いされることがあります。しかし、「おっしゃってください」は、「言う」と「くれる」という言葉を、それぞれ尊敬語と丁寧語の形で組み合わせたものです。二重敬語にはあたりません。
「いってください」の敬語での言い換え表現
「行ってください」における敬語の言い換え表現で、最も一般的に使われるものは「おいでください」です。「おいで」は「行く」の尊敬語です。丁寧語の「ください」と結びついて、相手への敬意を示すにふさわしい言葉になっています。「おいでください」は上司など目上の人に向けて使うことが多い言葉で、「どうぞ先においでください」「足元に注意しておいでください」のように使います。「言ってください」の言い換えには、「おっしゃってください」「言われてください」「仰せになってください」などがあります。最もよく使われる敬語での言い換え表現は「おっしゃってください」です。「仰せ」は「お命じになる」という命令的なニュアンスを持ちます。
- 《いってください》の敬語のページへのリンク