国鉄C57形蒸気機関車 「貴婦人」の愛称について

国鉄C57形蒸気機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/09 21:16 UTC 版)

「貴婦人」の愛称について

本機の愛称である「貴婦人」だが、そもそもの由来は急行旅客用テンダー機関車として、C51形以来の標準である1,750mm動輪を装備するが、それに対して、それまでのC53形C55形よりも細いボイラを搭載しているため、脚の長い整った容姿の女性に例えてつけられたものである。

しかし、C57形全車を「貴婦人」とするかには異論があり、準戦時設計となった2次形では蒸気ドームが拡大され、戦後型の3次形以降は補器類も見直されて厳つくなったため、「貴婦人」の愛称にはふさわしくないともいわれる。結果として次のような定義がなされている場合がある。

  1. 原設計の1次形のみ。
  2. 蒸気ドーム以外の基本設計がほぼ共通の2次形まで。
  3. ボイラ設計が共通の3次形まで。

C57形全車を「貴婦人」としている文献もあるが、その由来の元であるボイラの設計が変更された4次形は含まないのが普通である。また、4次形は重装備に加え、製造時すでにC59形が登場しており、C59形に似た外観及び密閉式運転席やD51形の戦中型と同様の舟底式炭水車の採用など、別形式と言っても良い改良が行われているなどの理由に加え、導入当初から山あいの亜幹線での使用となったため、正反対の「山男」や「戦後型C57」と例えられることもある。

保存機

動態保存機

現在、西日本旅客鉄道(JR西日本)に所属する1号機と、東日本旅客鉄道(JR東日本)に所属する180号機の2両が動態保存されている。いずれも本線運転用に整備され、車籍を有している。因みに、1号機は車籍を一度も抹消されていないが、180号機は1969年(昭和44年)に廃車後、1999年(平成11年)に車籍の再登録を受けた。

1号機は、日本国有鉄道→JRにおける蒸気機関車の恒常的保存運転の嚆矢と呼ばれ、2006年(平成18年)に、「梅小路の蒸気機関車群と関連施設」の物件として、準鉄道記念物に指定された。

また、台湾では同型の機関車CT273が2014年6月9日よりイベント列車として動態保存機としての運転を開始した[5]。同機は1984年に退役後は彰化県花壇郷の台湾民俗村に静態保存されていたが2010年2月2日彰化扇形庫へ移送され、動態復元に向けた整備が約3年掛けて実施された。

2017年(平成29年)5月21日、JR西日本の1号機と台湾のCT273「仲夏宝島号」が姉妹列車協定を結ぶことが明らかとなる[6]

静態保存機

C57形静態保存機一覧
画像 番号 所在地 備考
C57 144 北海道岩見沢市9条東2丁目
みなみ公園
C57 201 北海道旭川市神居古潭
古潭公園(神居古潭駅跡)
C57形ラストナンバーで現存唯一の4次形。重油併燃化されたため蒸気ドーム・砂箱の後方に重油タンクが設置されている。
C57 130 北海道旭川市神居古潭 神居古潭駅跡 第一動輪のみ保存。JR北海道旭川支社に第二動輪が保存されている。
C57 46 福島県福島市桜木町7-36
児童公園
整備前 C57 26 埼玉県行田市本丸3-5
本丸児童公園
現役時代に集煙装置を取り付けていたため、煙突が短くなっている。2024年に、修復が行われた。
C57 135 埼玉県さいたま市大宮区大成町3丁目47
鉄道博物館[7]
1975年に室蘭本線で国鉄最後の蒸気牽引旅客列車を牽引した。同年11月24日、NHKのテレビ番組『さらば蒸気機関車』で加藤芳郎山口百恵がこの機関車が牽引する普通列車に乗車したことから、「百恵ちゃん号」と呼ばれている[1]。その後、廃車となり交通博物館に保存されたのち、鉄道博物館の開館により移設された。車両ステーション1階の転車台上に設置され、回転実演が行われる。
C57 129 千葉県野田市清水906
清水公園[8]
※解体済み
1996年7月解体
C57 198 千葉県君津市東坂田3丁目2
坂田駅前公園
※解体済み
2003年6月解体
C57 57 東京都世田谷区大蔵4丁目6-1
大蔵運動公園
C57 66 東京都大田区大森北4丁目27
入新井西児童交通公園
毎日12時と15時になると汽笛が鳴り、5分間にわたって圧縮空気によりシリンダーを動かし動輪が回転する[9]
C57 186 東京都小金井市関野町1丁目13-1
東京都立小金井公園
客車スハフ32 2146と連結され保存されている。3月から11月までの土日祝日と都民の日(10月1日)の10時から16時までの間に限り公開される。
C57 19 新潟県新潟市秋葉区新津東町2丁目5-6
新潟市新津鉄道資料館 屋外展示スペース
1972年9月に引退した後[10]、同年10月16日[11]から2013年6月まで新潟市中央区の鳥屋野交通公園にて保存されていた。同月18日の深夜に鉄道資料館へ移設され[12]、翌2014年より公開された[10]
C57 30 静岡県富士市今井3丁目4-2
富士市立元吉原小学校
C57 139 愛知県名古屋市港区金城ふ頭3丁目2-2
リニア・鉄道館
戦後の名古屋機関区のお召列車牽引機で、お召列車を18回牽引した。1969年に関西本線で名古屋発のSL列車さよなら運転にも使用されたのち、中部鉄道学園(のちJR東海研修センター)に保存された。1971年(昭和46年)4月17日準鉄道記念物に指定されている。2011年にリニア・鉄道館の開館にあわせてJR東海研修センターから移設された。
C57 128 滋賀県大津市におの浜4丁目2-12
市立科学館跡
科学館は移転したが屋根付き状態で保存されており、月一度の割合で国鉄OBにより定期的に整備されており状態は良い。機関区票差しには「滋」「大」のプレートが挿入されている。バック運転に対応したためであろうかテンダーにもライトが残されている。なお当機の先輪にはC544の刻印があり、仮にこれがC54のことであれば、現存する数少ないC54の部品となる。
C57 56 京都府木津川市加茂町里西上田11-1
木津川市立加茂小学校
C57 189 京都府与謝郡与謝野町滝941-2
加悦SL広場
C57 148 大阪府大阪市西区九条南3丁目20-10
共栄興業本社
非公開だがガラス越しに見学可。
C57 5 兵庫県姫路市御立西4丁目4
御立公園
C57 11 兵庫県豊岡市立野町1
中央公園
昭和20年代には九州に配置され特急「かもめ」の牽引にも使用されており、門鉄式除煙板が装備されている。1957年に豊岡機関区に転属後に取り付けられた集煙装置、重油タンク、スノープローは保存時に取り外された。現存唯一の汽車製造会社製C57形。
C57 93 兵庫県朝来郡生野町口銀谷546
生野町立生野小学校
※解体済み
1998年8月頃に解体。
C57 160 奈良県生駒郡三郷町勢野西1丁目6-1
三郷町立三郷小学校
※学校敷地内
C57 110 和歌山県橋本市北馬場454
橋本運動公園
1956年(昭和31年)10月15日に発生した六軒事故の事故機で、事故機4両中当機だけが復旧され、蒸気機関車の末期まで使用された。形態的には煙室前端下部が丸型ではなく水平であること[13]や、運転室の明かり取り窓が四角形であることが特徴である。
C57 119 和歌山県和歌山市岡山丁3
岡公園
C57 7 和歌山県田辺市高雄1丁目17-8
会津児童公園
1972年(昭和47年)10月14日・15日に汐留駅 - 東横浜駅間で「鉄道100年記念号」を牽引し、翌1973年(昭和48年)9月9日には紀伊田辺駅 - 和歌山駅間でさよなら運転に使用された。
整備前 C57 156 島根県益田市あけぼの西町1-9
西公園
2010年頃を最後に手入れが行われておらず、サビが目立っていたが[14]、2022年12月に修復された[15]
C57 165 島根県浜田市黒川町
東公園
C57 76 広島県三原市糸崎南1丁目1-1
三菱重工業三原製作所
※工場敷地内
2024年3月に三原製作所糸崎工場から三原製作所和田沖工場へ移設[16]
C57 44 愛媛県西条市大町927-2
四国鉄道文化館南館
当初保存の市民公園より2014年に移転。
C57 158 福岡県北九州市門司区大里本町2丁目1-15
八坂神社
※解体済み
2005年(平成17年)5月27日解体。
C57 95 長崎県諫早市宇都町27-1
長崎県立総合運動公園
C57 100 長崎県長崎市賑町5
中央公園
※解体済み
被爆救援列車牽引機の代替として保存[注 2]されていたが、中央公園を祭事会場として使用するため移設が検討された。しかし調査の結果、老朽化が激しく移設が困難であるとされたため2017年3月ごろ現地で解体され、動輪等の一部の部品が保存された。また運転室内の計器類はC57 19に移植されており、同機の水面計等に「C57 100」の刻印が刻まれている。
C57 175 宮崎県宮崎市大字熊野字藤兵衛中州
宮崎県青島青少年自然の家
C57 151 鹿児島県鹿児島市平川町5669-1
平川動物公園
C57 87 沖縄県国頭郡今帰仁村字越地
今帰仁村総合運動公園
※解体済み
現役時代は北海道で使用されており、廃車後、沖縄海洋博を前に1975年に開業したSLホテル「沖縄リゾートステーション」用に保存。島式ホームに複数の車両が保存されていた。計16両という日本最大級のSLホテルであったが1983年に閉鎖。その後機関車のみ敷地とともに今帰仁村に譲渡され、1991年に村がふるさと創生資金を活用し修復した[17]が、海沿いでもあり再び老朽化が進行し、2005年6月頃に解体された。
台湾鉄路管理局
CT271
台湾
基隆市安楽区基金一路208巷付近
情人湖公園
台湾鉄路管理局
CT278
台湾
彰化県二水郷
二水駅
台湾鉄路管理局
CT284
台湾
宜蘭県宜蘭市中山路一段755
宜蘭運動公園

動輪のみ保存

登場した作品

ドキュメンタリー

  • NHK特集「よみがえれ貴婦人C571〜最後のSL解体修理〜」(1985年2月24日、NHK[18]

ドラマ

  • NHK大河ドラマいのち」(1985年1月5日放送「帰郷」、NHK)冒頭付近で、1号機が集煙装置を外した状態で主人公たちが乗る列車(旧型客車と貨車の混成)を牽引する場面に登場。

コンピューターゲーム

  • SLで行こう(PlayStationソフト、1998年12月17日発売)JR西日本の1号機が登場。
  • 汽車でGO!(PlayStationソフト、2000年3月16日発売)JR東日本の180号機が登場した。

注釈

  1. ^ ただし1号機は製造後車籍を失ったことが一度もなく、定期列車からの引退後も臨時列車として運用され続けている。
  2. ^ 長崎原爆直後、最初の救援列車を牽引したのは、C51 68といわれている。1973年頃になって「救援列車牽引機を保存したい」という話が持ち上がったが、該当機は1960年に小倉工場で解体されており、他のC51形は数両の保存機を残すだけとなっていた。そのため代替として長崎本線で運転実績のある「姉妹型機」として1973年4月に人吉機関区で廃車となったC57 100が選定され、保存されることとなった。

出典

  1. ^ a b c d e 【五感紀行】日本最後のSL/室蘭線の汽笛 今も響く『北海道新聞』日曜朝刊別刷り2021年1月10日1-2面
  2. ^ 栄光の日本の蒸気機関車 久保田 博 (著), 広田 尚敬 (著, 写真), 片野 正巳 (イラスト) 出版「JTBパブリッシング」P187
  3. ^ 原武史『昭和天皇御召列車全記録』新潮社、2016年9月30日、141頁。ISBN 978-4-10-320523-4 
  4. ^ 国鉄時代2008年11月号 AUTUMN Vol.15(ネコ・パブリッシング)
  5. ^ “帰ってきた貴婦人 台湾の蒸気機関車、30年経て復活”. 朝日新聞. (2014年6月5日). http://www.asahi.com/articles/ASG646CY8G64UHBI02R.html 2014年6月9日閲覧。 
  6. ^ 「台湾のCT273とSLやまぐち郷 姉妹列車協定締結へ」山口新聞/ニュース
  7. ^ “鉄道博物館の車両たち 8”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 3. (2007年10月2日) 
  8. ^ 19【自然・公園】乗り物公園 - 令和2年度特別展 まちの記憶—写真でたどる野田・関宿の昭和30〜40年代—”. 野田市郷土博物館 (2020年1月4日). 2021年10月26日閲覧。
  9. ^ 入新井西公園”. 大田区 2021年10月1日. 2021年10月7日閲覧。
  10. ^ a b 屋外常設展示”. 新津鉄道資料館. 2021年10月3日閲覧。
  11. ^ 鉄道のまち「新津」の歴史”. 新潟市新津鉄道資料館. 2022年1月13日閲覧。
  12. ^ さよなら交通公園のSLは、深夜移動”. Komachi Web 2013年6月18日. 2021年10月3日閲覧。
  13. ^ 事故修理の際に施工されているが、これは整備受持の鷹取工場がC57形に行っていた腐食対策の施工であり、亀山機関区所属のC57形は当該機以外でも戦後製造のC57 198を除き全てに施工されていた。
  14. ^ 腐食していく公園の「野良SL」 引退後に待っていた哀れな末路”. 毎日新聞 2021年12月9日. 2023年3月6日閲覧。
  15. ^ 益田市内で保存のC57 156、お化粧直しで美ボディ復活…!”. 鉄道ホビダス 2022年12月16日. 2022年3月6日閲覧。
  16. ^ 伝説の蒸気機関車「貴婦人」C57“移設大作戦”に密着 重さはなんと90トン、果たして…三菱重工・三原 | 広島ニュースTSS | TSSテレビ新広島”. www.tss-tv.co.jp. 2024年3月14日閲覧。
  17. ^ 【FILMS】沖縄リゾートステーション”. 沖縄アーカイブ研究所 2018年7月19日. 2022年10月14日閲覧。
  18. ^ よみがえれ貴婦人C571〜最後のSL解体修理〜”. NHK (2021年10月12日). 2021年10月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月15日閲覧。


「国鉄C57形蒸気機関車」の続きの解説一覧




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「国鉄C57形蒸気機関車」の関連用語

国鉄C57形蒸気機関車のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



国鉄C57形蒸気機関車のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの国鉄C57形蒸気機関車 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS