江の川
江の川は、広島県山県郡芸北町阿佐山にその源を発し、幾つもの小支川を合わせながら盆地の上を北東に流れ、途中三次市において同規模の馬洗川、西城川を三方向より合わせて西流し、河口までは先行性峡谷を通り島根県江津市において日本海に注ぐ流域面積3,900km2、幹川流路延長194kmの中国地方最大の川です。 |
三次市で巴状に合流する江の川、馬洗川、西城川 |
河川概要 |
| ○拡大図 |
1.江の川の歴史 |
"江の川は、中国山地の山間狭隘部を貫流し、近年まで瀬戸内側と日本海を繋ぐ交易の要路として利用されてきました。また鵜飼いを代表とするアユ漁の文化が優れていました。治水工事も早くから行われ、水害防止用の植林(竹藪)も800年程前から実施されていました。" |
2.地域の中の江の川 |
"祭や観光遊覧船、カヌーなど水面部分を含んだ河川空間利用が積極的に行われています。 環境整備事業実施時には、該当個所を利活用する地域住民との協働作業により整備計画を策定しています。 また、市街地を洪水被害から守るため、防災ステーション等の水防施設を整備しています。" |
江の川の河川空間を活用したイベント、親水施設等はたくさんありますが、高水敷を利用したレクリエーションスペースだけではなく、豊かな水量を利用したカヌーや鮎釣り等水面を活かした自然的利用が中心に行われています。
レクリエーション施設としてキャンプやカヌーが楽しめる拠点も2箇所(邑智町、作木町)整備されており、作木カヌー公園は水辺プラザとして平成10年(1998年)から都市との交流の場となる「交流の里」として、地域活性化を目指した整備が行われました。
江の川では、河川空間利用の為に環境整備を行うだけではなく、市街地を洪水被害から守ることを目的とした防災ステーションの整備も実施しています。整備箇所である三次市街地はほぼ全域が山地に囲まれ、同規模の江の川、馬洗川、西城川が合流する地形となっていたため、過去幾度となく大災害が発生しました。
平常時には地域住民や学校の課外授業を行うコミュニティースペースとして活用できる計画になっています。 |
3.江の川の自然環境 |
" 多種多様な動植物が生息し、水質環境も良好ですが、人工構造物の影響などにより、回遊魚の遡上や特定種の減少が見受けられるため、過去の環境を取り戻すことを目的とした自然再生事業に取り組み始めています。" |
江の川上流は、他には類を見ない中国山地を跨いで流れる珍しい河川であり、中上流域は我が国でも浸食平坦面の最もよく発達する地域になっています。古くから人跡が到達し、田畑や放牧地として利用されてきました。中流域となる三次盆地から河口までは先行性峡谷が続き、平野を作らず江津市において日本海に注いでいます。 江の川流域の地質・気候等には特徴があり、表層地域は、中生代末白亜紀から新生代初期にかけて生成した酸性火山岩類が広い範囲で分布しており、気候についても河口部となる日本海側平野部の年平均気温に対して、中流域となる盆地地帯は内陸性気候となり1度程度気温が低くなる傾向がでています。
毎年、流域小中学校の総合的学習において、水生生物調査による水質の判定も盛んに行われています。 豊かな自然環境をもつ江の川流域には数多くの動植物が確認されており、文献調査及び現地調査による確認数は次のとおりです。
しかし、江の川にも人工構造物が設置されており、下流部に位置する浜原ダムが発電用ダムとして昭和28年(1953年)に建設され、中流域まで遡上していた回遊魚(サケ、サクラマス、アユ)がダム上流には上がらなくなってしまいました。中上流域で普通に食卓に上がっていた江の川の天然アユの殆どは、下流に位置する川本町あたりで留まることより、上流において捕獲されるアユは放流アユが占めていることになります。
植物・鳥類などについては、高度経済成長期に活発に行われた砂利採取や河道内工事等の影響を大きく受け、流況の安定に伴い洪水が減少し、かつてレキ河原であった所に細粒土砂が堆積し、樹林化が進行することで河原を生息域としていたオキナグサやイカルチドリ等の繁殖場所が激減しています。江の川沿いの谷底平野は水田地帯として発達し、昭和40年代まで家畜の餌や田畑の肥料とするために川の中の植物が持ち出されており、また、昭和50年代初頭まで川土手の植物を山羊に採食させていたため、現在と違い河道内には僅かな植物だけが残り、植物の発達を抑えていたとも考えられています。江の川においては、平成14年(2002年)から過去の環境を取り戻す事を目的とした自然再生事業に取り組んでいます。 |
4.江の川の主な災害 |
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(注:この情報は2008年2月現在のものです)
江の川
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/13 20:22 UTC 版)
江の川(ごうのかわ)は、島根県および広島県を流れる一級水系の本流。流路延長194km、流域面積3,900km2 [1][2]。全国ランキングでは、延長で12位、面積で16位[2]。中国地方においては最大の河川であり、中国地方の一級河川の中で唯一中国山地を貫流する先行河川[2][3]。
注釈
出典
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- ^ 「川」と「川を渡る橋」の情報と資料 - 中日本コンサルタント
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