モモ
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文化
風習・伝説・年中行事など
中国において桃は仙木・仙果(神仙に力を与える樹木・果実の意)と呼ばれ、昔から邪気を祓い不老長寿を与える植物・果物として親しまれている[13]。桃の木で作られた弓矢を射ることは悪鬼除けの、桃の枝を畑に挿すことは虫除けのまじないとなる。戸口や門に赤い紙でできた春聯(しゅんれん)が飾られるが、春聯は別名で桃符(とうふ)ともよばれ、本来は桃の木から作られた薄い板でできていた[13]。
桃の実は長寿を示す吉祥図案であり、祝い事の際には桃の実をかたどった練り餡入りの饅頭菓子・寿桃(ショウタオ、繁体字: 壽桃、簡体字: 寿桃、拼音: )を食べる習慣がある。寿桃は日本でも桃饅頭(ももまんじゅう)の名で知られており、中華料理店で食べることができる。寿命をつかさどる女神の西王母とも結び付けられ、魏晋南北朝時代に成立した漢武故事などの志怪小説では、前漢の武帝が西王母の訪問を受け、三千年に一度実をつける不老長生の仙桃を授かったという描写がある。さらに後代に成立した四大奇書のひとつ、『西遊記』の主人公孫悟空は、天上宮に住む西王母が開く蟠桃会に供された不老不死の仙桃を盗み食いしている[16]。
日本においても中国と同様、古くから桃には邪気を祓う霊力があると考えられていた。『古事記』(712年)には、オオカムズムの名で桃の神様として登場する[21]。『日本書紀』(720年)では、黄泉の国でイザナミの追手から逃げるイザナギが、黄泉比良坂に辿り着いた際、そこにあった桃の実を投げつけて、追手を退散させて逃げ延びることに成功した[21]。イザナギはその功を称え、桃に意富加牟豆美命(おおかむづみのみこと)の名を与えたという。また、『桃太郎』は、桃から生まれた男児が長じて鬼を退治する民話である[16]。
3月3日の桃の節句は、桃の加護によって女児の健やかな成長を祈る行事である。モモはウメよりも花期がやや遅く、3月に花が咲くことが桃の節句と呼ばれる所以である[16]。桃の花を飾って祈願する風習は、女子が妊娠を希望して子供を授かり、その子の誕生を祈ることも意味した[13]。桃の核(種子)の中心にある空間は、竹の桿(かん)の中空と同様に、神の居場所と考えられていた[13]。
英語圏においては、傷みやすいが美しく美味しい果物から古い俗語で「若く魅力的な娘」を表し、そこから「ふしだら女」「(複数形で)乳房」などの意味にも転じている。
“モモ”の名を持つ植物
地方によっては甘い果実の総称として“もも”の語を用いることもあり、別種でありながら名前に“モモ”と付けられている植物も多い。
- ゲットウ (月桃):ショウガ科ハナミョウガ属
- スモモ(李/酸桃):バラ科サクラ属
- ヤマモモ(山桃):ヤマモモ科
- コケモモ(苔桃):ツツジ科
- クルミ(胡桃):クルミ科クルミ属
- フトモモ(蒲桃):フトモモ科
- キウイフルーツ(獼猴桃、びこうとう):マタタビ科マタタビ属
- ゴレンシ(楊桃、ようとう):カタバミ科
自治体の花・木
- モモ
- ももの花
名所
- 一宮桃の里 (山梨県)
- 古河総合公園 (茨城県)
文学
「桃の花」は春の季語。桃が咲き始める時期は七十二候において、中国では桃始華、日本は桃始笑と呼ばれ、それぞれ啓蟄(驚蟄)の初候、次候にあたる。「桃の実」は秋の季語。
モモの花言葉は、「天下無敵」「あなたに夢中」である[13]。
『桃太郎』は日本の御伽噺のひとつ。岡山県伝承のものが有名だが、各地に様々な伝承がある。日本文学の夏目漱石『三四郎』で、三四郎は、列車内で広田先生から水蜜桃を振る舞われる。桃をめぐる正岡子規やレオナルド・ダ・ヴィンチのエピソードも出る。
熟語・慣用句・ことわざ
- 桃色
- 色のひとつ。薄い赤色。ピンク(ナデシコ色)の和訳としても使われる。
- 桃源郷
- 俗世間を離れた、素晴らしいところ。理想郷、ユートピアとは似て非なる概念。中国の詩人陶渕明の詩にある「桃花源記」に由来する[71]。
- 桃栗三年柿八年(ももくりさんねんかきはちねん)
- 発芽から結実まで、桃や栗は三年、柿は八年かかる。物事を成し遂げるには時間がかかることを示唆することわざ。ことわざのとおり、実際にモモは比較的早く実がなり、種を植えてから3年目で花が咲く[16]。
- 桃栗三年柿八年 梨の大馬鹿十八年(-なしのおおばかじゅうはちねん)
- 桃栗三年柿八年 くるみの大馬鹿二十年(-くるみのおおばかにじゅうねん)
- などと言われる地方もある。
- すもももももももものうち(李も桃も桃のうち)
- 早口言葉のひとつ。なお李はバラ科サクラ属で、モモとは別の植物である。
- 桃割れ
- 日本髪の髪型。丸くまとめた髷(まげ)の部分が二つに分かれていて、割った桃のように見える。明治期に考案され、大正期までは未婚女性の髪型として盛んに結われていた。
- 桃尻
- モモの実はすわりが悪い事から、馬に乗るのが下手で鞍に尻が落ち着かないことを指す言葉。この語源以外に、(専ら女性の)モモのような形をした尻を表現する際に使われている。
注釈
出典
- ^ 大場秀章(編著)『植物分類表』(初版第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4。 p.327
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- ^ 農林水産省 平成25年産もも、すももの結果樹面積、収穫量及び出荷量
- ^ おいしい山形 もも
- ^ 旬の食材百科 フルーツ 桃 あかつき
- ^ 福島県公式 福島県ブランド認証産品(もも)
- ^ 福島県公式 国際課 中通り21(福島市):桃の薫る夏
- ^ JA全農にいがた ニュース 新潟の桃が真っ盛り!
- ^ ふえふき旬感ネット 笛吹市の桃の花
- ^ JA長野県 いいJAん!信州 農畜産物情報 モモ
- ^ ネット農業あいち 特産品紹介 モモ
- ^ 近畿農政局 もも(大阪泉州地域)
- ^ 大阪府公式 なにわ特産品 大阪もも
- ^ あら川の桃振興協議会
- ^ 岡山県公式サイト 農林水産部 農政企画課 白桃
- ^ JA香川県 らりるれ倶楽部 品目一覧 果物:もも
- ^ うどん県農産物紹介ポータルサイト LOVEさぬきさん かがわの県産品一覧 もも
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
- ^ a b c d 竹下大学 2022, p. 175.
- ^ “2023年も「桃」の直売が始まりました!”. 道の駅つる. 2023年8月27日閲覧。
- ^ a b c d e f 貝津好孝 1995, p. 197.
- ^ “体調不良は給食のリンゴ原因 美幌の小中学生、アレルギー反応”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2014年7月12日). オリジナルの2014年7月14日時点におけるアーカイブ。
- ^ 21世紀研究会・編『食の世界地図』143頁 文藝春秋社
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