モモ 利用

モモ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 15:24 UTC 版)

利用

もも 生[65]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 167 kJ (40 kcal)
10.2 g
食物繊維 1.3 g
0.1 g
0.6 g
ビタミン
チアミン (B1)
(1%)
0.01 mg
リボフラビン (B2)
(1%)
0.01 mg
ナイアシン (B3)
(4%)
0.6 mg
パントテン酸 (B5)
(3%)
0.13 mg
ビタミンB6
(2%)
0.02 mg
葉酸 (B9)
(1%)
5 µg
ビタミンC
(10%)
8 mg
ビタミンE
(5%)
0.7 mg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
1 mg
カリウム
(4%)
180 mg
カルシウム
(0%)
4 mg
マグネシウム
(2%)
7 mg
リン
(3%)
18 mg
鉄分
(1%)
0.1 mg
亜鉛
(1%)
0.1 mg
(3%)
0.05 mg
他の成分
水分 88.7 g
水溶性食物繊維 0.6 g
不溶性食物繊維 0.7 g
ビオチン(B7 0.3 µg
有機酸 0.4 g

ビタミンEはα-トコフェロールのみを示した[66]。別名: 毛桃

試料: 白肉種

廃棄部位: 果皮及び核 
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

果実は食用、花は観賞され、庭木として植栽に用いられたり、あるいは華道切り花として用いられる。材は割れにくく丈夫であるため、などに利用されている。樹皮の煎汁は草木染めの染料として用いられる事がある。

栽培中、病害虫に侵されやすい果物であるため、袋をかけて保護しなければならない手間の掛かる作物である。また、傷みやすく収穫後すぐに軟らかくなるため、賞味期間も短い。生食する他、ジュース(ネクター)や、シロップ漬けにした缶詰も良く見られる。

果実のの時期は7 - 9月ごろで、全体に産毛があり、左右対称でふっくらとしているものが市場価値の高い良品とされる[12]。選ぶときは果皮の色がよく甘い香りがあるのもがよく、軸周辺の色が緑色のものは未熟である[67]。かたいものは常温において追熟させ、食べる直前に1時間ほど冷蔵庫で冷やすとよいといわれる[67]。冷蔵で冷やしすぎると甘みが落ちてしまうが、果肉は冷凍保存もできる[67]

生食する場合は柔らかく熟してから食べるのが一般的。流通においてもそれに近い状態で取り扱われるため、客へ向けて特に手を触れないよう注意書きをしている店舗も見られる。しかし、山梨県では齧った際にカリカリと音がするほど固く熟しきっていない状態が好まれる[68]など、多少の地域性も見られる。

栄養素

代表値で可食部100グラム (g) あたりのエネルギーは40キロカロリー (kcal) で、水分は約89 g、タンパク質は0.6 g、脂質0.1 g、炭水化物10.2 gが含まれている[12]。その他成分として、腸の調子を整えたり便秘解消に役立つ食物繊維ペクチンが多く含まれ、ほかには高血圧予防によいカリウム、コレステロール改善によいナイアシン、抗酸化作用があるカテキンビタミンCが含まれている[12][67]

薬用

薬用とする部位は、種子、葉、花、成熟果実である[14]。種子の内核は桃核(とうかく)あるいは桃仁(とうにん)とよばれ、成熟果実の中の核を割って種子を取り出し天日乾燥させて調整する[14]。葉は桃葉(とうよう)、花は桃花(とうか)とよばれ、葉は6 - 7月ごろ、花は開花期に採取したものを天日乾燥して調整する[14]。また成熟果実は桃子(とうし)ともよばれ、市販のものが使われる[14]

種子(桃仁)は生理痛、生理不順、便秘に対する薬効があるとされ[14]漢方においては血行を改善する薬として婦人病などに用いられる。民間療法では、桃仁1日量2 - 5グラムを400 ccの水に入れて煎じ、3回に分けて服用する方法が知られる[69]。生理初期に刺すような痛みがあり塊が出ると楽になるような人、ころころ便の便秘によいといわれる一方で、妊婦や貧血気味の人への服用は禁忌とされる[69]。また、花(桃花)はむくみ、尿路結石、便秘に対する薬効があるとされ[14]、利尿薬、便秘薬に使われる。民間療法では、利尿やむくみとり、便秘の改善に、1日量2 - 3グラムの桃花を400 ccの水で煎じて3回に分けて服用する方法が知られる[69]。ただし、妊婦への服用は禁忌とされる[69]。果実もまた便秘によく、のどの渇きを潤し、腹部を温める効果があるが、妊婦や胃腸に熱がある人は多食しないよう注意が呼びかけられている[69]

葉(桃葉)は、あせも湿疹に薬効があるとされ[14]、乾燥葉を布袋に入れて浴湯料とし湯に入れた桃葉湯は、あせもなど皮膚の炎症に効くとされる[69]。ただし、乾燥していない葉は青酸化合物を含むので換気に十分注意しなければならない。

なお、シラカバ花粉症を持つ人のうち一定割合の人がリンゴやモモなどバラ科の果物を食べた際に咽喉(のど)にアレルギー症状を起こすことが知られている[70]


注釈

  1. ^ APG は、被子植物の科と目の分類で目より上位の分類群は英語表記で国際植物命名規約にもとづく設定がされていない[1]
  2. ^ モモは冬の低温期に休眠する果樹であり、春に花芽が休眠打破して開花するためには一定量の低温に遭遇する必要があり、それを低温要求量という[41]

出典

  1. ^ 大場秀章(編著)『植物分類表』(初版第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4  p.327
  2. ^ 大場秀章(編著)『植物分類表』(初版第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4  p.XV
  3. ^ a b c d e An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG III - - 2009 - Botanical Journal of the Linnean Society - Wiley Online Library https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1111/j.1095-8339.2009.00996.x p108 2023年1月2日閲覧。
  4. ^ 大場秀章(編著)『植物分類表』(初版第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4  p.84
  5. ^ 大場秀章(編著)『植物分類表』(初版第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4  p.92
  6. ^ 大場秀章(編著)『植物分類表』(初版第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4  p.119
  7. ^ a b c 大場秀章(編著)『植物分類表』(初版第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4  p.140
  8. ^ 米倉浩司(著)『新維管束植物分類表』北隆館 2019年 p129
  9. ^ a b 米倉浩司(著)『新維管束植物分類表』北隆館 2019年 p131
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  11. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Amygdalus persica L. モモ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月31日閲覧。
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  13. ^ a b c d e f g h i j k 田中潔 2011, p. 28.
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  15. ^ a b 辻井達一 1995, p. 194.
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  18. ^ a b 岡山大学埋蔵文化財調査研究センター報No.55 https://www.okayama-u.ac.jp/user/arc/issue/leaf/leaf_55.pdf 2022年9月19日閲覧
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  64. ^ うどん県農産物紹介ポータルサイト LOVEさぬきさん かがわの県産品一覧 もも
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  71. ^ 21世紀研究会・編『食の世界地図』143頁 文藝春秋社






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