モモ
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歴史
原産地は中国からペルシア(現在のイラン)、アフガニスタンなどに渡る地域とされる[16]。ヨーロッパ(欧州)へは紀元前にシルクロードを通り、ペルシア経由で紀元前後ごろに伝わった[17]。アメリカ大陸へは、16世紀ごろにスペイン人やポルトガル人によって持ち込まれ、そこから南北アメリカへと広まった[17]。日本へは縄文時代から食べられていたと考えられ[12]、相当古い時代に中国から渡来したものと見られている[13]。
中国では裴李崗文化(約7500年前)において、モモの出土が確認されている[18]。日本では長崎県の多良見町にある伊木力遺跡[19][20]から、縄文時代前期(約6000年前)の日本最古となる桃核が出土しており、これが日本最古とされている[18]。弥生時代後期には大陸から栽培種が伝来し桃核が大型化し、各時代を通じて出土事例がある。桃は食用のほか祭祀用途にも用いられ、斎串など祭祀遺物と伴出することもある。平安時代 - 鎌倉時代には日常的な食材となり「菓子」として珍重されていたが、当時はスモモ程度の大きさで明治時代以降のモモとは異なる果実と考えられており[21]、それほど甘くなく主に薬用・花の観賞用として用いられていたとする説もある[16]。江戸時代にさらに広まり、『和漢三才図会』では「山城伏見、備前岡山、備後、紀州」が産地として挙げられるほか、諸藩の『産物帳』にはモモの品種数がカキ、ナシに次いで多く、特に陸奥国と尾張国に多いと記されるほど、全国で用いられるに至った[22]。
明治時代の中頃には、甘味の強い水蜜桃系(品種名:上海水蜜桃など)が輸入され、食用として広まった[16]。1875年(明治8年)、清(中国)を調査していた内務省の武田昌次と岡毅、通訳の衣笠豪谷は、日本へ帰国時に多くの種苗を持ち帰ったが、その中に上海種と天津種の水蜜桃があった[21]。現在日本で食用に栽培されている品種は、この水蜜桃系を品種改良したものがほとんどである[23]。昔の桃は小ぶりで固く、果汁も少なかったとみられているが、現在の日本ではやわらかくて果汁が多いタイプの桃が主流で、これら栽培種の多くは岡山県の「白桃」が元になっている[12]。「白桃」は、1899年(明治32年)に岡山県磐梨郡可真村(現在は岡山市の一部)の大久保重五郎が上海種の実生から優秀な品種を発見したもので、さらに改良を進めて1927年(昭和2年)には新品種「大久保」を誕生させた[23]。
注釈
出典
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