pccsとは? わかりやすく解説

PCCS

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/06 13:59 UTC 版)

PCCSPractical Color Coordinate System、日本色研配色体系)とは、色彩調和を目的に日本で開発された表色系である。多くの場合、顕色系の表色系として分類される[1][2][3]1966年(昭和41年)に一般財団法人日本色彩研究所が開発・発表した[4][5]

マンセル表色系などと同様に色の三属性による表記も可能だが、「彩度」と「明度」を複合した『トーン』の概念が存在し2属性での表記も可能な点が特徴的で[1][3][5]、色の2属性表記で実際の色をイメージしやすいため配色を考えるのに適している[5][3]。「色相(ヒュー)」と「トーン」で体系付けられるため『ヒュートーンシステム』とも呼ばれる[2][3][5]

色相(Hue)

心理四原色を骨格とした24の色相が、知覚的に均等になるように配列されている[3][5][6]。色相の構成は以下の手順で成り立っている[3][5][6]

  1. 心理四原色のを円周上に配置する。(下図●、計4色)
  2. 心理四原色の心理補色を円の対向位置に配置する。(下図○、計8色)
  3. 知覚的に均等になるように4色を加える。(下図△、計12色)
  4. それぞれの中間色相を加える。(計24色)

12色相として用いる場合、4.で追加した中間色相を除いた12色相(●○△があるもの、偶数番号)を用いる。

手順 番号:略号 名称 備考
  1:pR 紫みの赤
2:R
  3:yR 黄みの赤 色光3原色の赤に近い[6]
4:rO 赤みの橙
  5:O
6:yO 黄みの橙
  7:rY 赤みの黄
8:Y 色材3原色のイエローに相当[6]
  9:gY 緑みの黄
10:YG 黄緑
  11:yG 黄みの緑
12:G 色光3原色の緑に近い[6]
  13:bG 青みの緑
14:BG 青緑
  15:BG 青緑
16:gB 緑みの青 色材3原色のシアンに相当[6]
  17:B
18:B
  19:pB 紫みの青 色光3原色の青に近い[6]
20:V 青紫
  21:bP 青みの紫
22:P
  23:rP 赤みの紫
24:RP 赤紫 色材3原色のマゼンタに相当[6]

複数の色を比較するとき、色相差(色相番号の差)によって以下の関係性に分類される[7]

色相差 関係性 赤( 2:R)を基準にしたときに該当する色相
0 同一色相 2:R
1 隣接色相 1:rP、 3:rY
2・3 類似色相 4:rO、 5:O、 23:rP、 24:RP
4~7 中差色相 6:yO、 7:rY、 8:Y、 9:gY、 19:pB、 20:V、 21:bP、 22:P
8~10 対照色相 10:YG、 11:yG、 12:G、 16:gB、 17:B、 18:B
11 隣接補色色相 13:bG、 15:BG
12 補色色相 14:BG

明度と彩度

明度(Lightness)

マンセル表色系の明度表記にあわせて、最も明るい白を9.5、最も暗い黒を1.5として0.5刻みの17段階で定義している[5][8]。色相によって彩度が最高値のときの明度が異なり、最も明るい色相の黄( 8:Y)は明度は8.0、最も暗い色相の青紫( 20:V)は3.5となっている[3][8]

彩度(Saturation)

他の表色系と区別するため頭文字の「s」を付して表記し[8]無彩色が0s、純色が10sの10段階で定義しているが[8]、色票では10sが表現できないため9sが事実上の純色として扱われている[5]。各色相の最高彩度を統一している点はマンセル表色系と異なる。

トーン

明度と彩度の複合的な概念で、有彩色は12種類、無彩色は5種類のトーンに分けられる[3][9]。一覧表示する際は縦軸を明度、横軸を彩度として掲載されることが多く、以下は赤みの橙( 4:rO)を例にした等色相面(トーンマップ)のイメージと、トーンの名称の一覧[10]。また、それぞれのトーンにはイメージする形容詞が設定されており[5]、その一例を記載している。

9.5 W p lt
  ltGy b
  ltg sf v
5.5 mGy s  
g d  
  dkGy dp
  dkg dk
明度1.5 Bk
  彩度0s 1~3s 4~6s 7~8s 9s
区分 記号 名称 イメージの一例
明清色 p ペール 薄い
lt ライト 浅い
b ブライト 明るい
純色 v ビビッド さえた
暗清色 dp ディープ 濃い
dk ダーク 暗い
dkg ダークグレイッシュ 暗い灰みの
中間色 ltg ライトグレイッシュ 明るい灰みの
sf ソフト 柔らかい
s ストロング 強い
d ダル 鈍い
g グレイッシュ 灰みの

vは純色[3][5]。上方に位置する3種類(b・lt・p)は純色に白のみを混ぜた色で「明清色」と呼ばれ、対して下方の3種類(dp・dk・dkg)は純色に黒のみを混ぜた色で「暗清色」と呼ばれる[3][5]。中間の5種類は白黒の混色(灰色)を混ぜた色で「中間色」と呼ばれる[3][5]

なお、上記のトーンマップは代表色(vトーン)の明度が中央値と同じ5.5の赤みの橙( 4:rO)を採用しているため上下対称に近い形をとるが、高彩度での明度が高い黄( 8:Y)であれば高彩度のトーンが全体的に上に、明度が低い青紫( 20:V)であれば下に大きく歪んだ形をとる。そのため同じトーンであっても、色相によって明度が異なる場合がある(後掲「色彩調和の形式」を参照)。そのためPCCSの色立体は最高彩度ごとに明度が異なる歪んだ形状をとるが、マンセル表色系とは異なり各色相の最高彩度は9sで統一されているため、上下から見ると真円に近い形状となっている。

色の表記方法

色相・明度・彩度の3属性で表記する場合、有彩色は色相・明度・彩度の順に「-」で繋いで表記する[3][5][8]。無彩色は無彩色を示す「n」を用いて、彩度は省略して明度のみを付記する[3][5][8]

色相とトーンの2属性で表記する場合、有彩色はトーン・色相番号を順に表記する[3][5][9]。無彩色は灰色を示す「Gy」を用いて明度を付記するが、白や黒の場合は単に『W』『Bk』と表記し明度は付記しない[3][5][9]

以下は、同じ色を3属性と2属性の2種類の表記方法で表現した場合の例と、参考としてマンセル表記の例。色彩調和を目的としたPCCSでは2属性表記が主に使われる(後掲「色彩調和の形式」を参照)。

3属性の表記 2属性の表記 マンセル表記
12:G-5.5-9s v12 3G 5.5/11
2:R-8.5-2s p2 4R 8.5/2
n-5.5 Gy-5.5 N 5.5
n-9.5 W N 9.5
n-1.5 Bk N 1.5

色彩調和の形式

3属性の表記 2属性の表記
6:yO-5.0-8s dp6
12:G-5.0-8s s12
22:P-5.0-8s b22

これらは明度と彩度が同じ数値であるため3属性の表記では似た印象を受けるが、色相によっては明度と彩度の分布に偏りがあるためトーンは一致しない。色彩調和を考える場合は色相やトーンを基準に考えるため[7]、それらの要素を比較しやすい2属性の表記が多く用いられる[5]。上の3色と同じトーンで色相を統一、あるいは同じ色相でトーンを統一した色の組み合わせの例は次のとおり。

3属性の表記 2属性の表記 3属性の表記 2属性の表記
12:G-4.0-8s dp12 6:yO-6.5-8s s6
12:G-5.0-8s s12 12:G-5.0-8s s12
12:G-6.5-8s b12 22:P-3.5-8s s22

こういった色相やトーンを統一する形式は「同系の調和」と呼ばれ、隣接・類似した色相やトーンを用いた形式の「類似の調和」とともに共通性があるために調和すると考えられている[7]。それとは逆に対照的な色相やトーンを用いる形式は「対照の調和」と呼ばれ、色味の違いが明瞭であるために調和すると考えられている[7]。以下は「対照の調和」の一例。

3属性の表記 2属性の表記 3属性の表記 2属性の表記
4:rO-6.5-8s b4 4:rO-6.5-8s b4
16:gB-5.5-8s b16 4:rO-2.0-2s dkg4

脚注

  1. ^ a b PCCS”. 日本色研事業. 2021年6月29日閲覧。
  2. ^ a b 槙究著『カラーデザインのための色彩学』(2006年、オーム社
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 色彩活用研究所サミュエル監修『色の事典 色彩の基礎・配色・使い方』(2012年、西東社
  4. ^ 研究所のあゆみ”. 日本色彩研究所. 2021年6月29日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q PCCSとは”. DIC color & comfort. 2021年6月29日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h PCCSの色相”. 日本色研事業. 2021年6月29日閲覧。
  7. ^ a b c d PCCSを用いた色彩調和の形式”. 日本色研事業. 2021年6月30日閲覧。
  8. ^ a b c d e f PCCSの明度と彩度”. 日本色研事業. 2021年6月29日閲覧。
  9. ^ a b c PCCSのトーン”. 日本色研事業. 2021年6月29日閲覧。
  10. ^ 赤みの橙のイメージ 3:yR-4:rO”. IROUE. 2021年6月30日閲覧。

外部リンク


PCCS

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色空間」の記事における「PCCS」の解説

詳細は「PCCS」を参照 1966年日本色彩研究所発表した色彩調和目的とした表色系明度彩度複合した要素トーン」の概念特徴で、トーン用いることで実際の色のイメージがしやすく、カラーデザインに向いている。

※この「PCCS」の解説は、「色空間」の解説の一部です。
「PCCS」を含む「色空間」の記事については、「色空間」の概要を参照ください。

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