Th1・Th2:ヘルパーT細胞の応答
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 09:56 UTC 版)
「獲得免疫系」の記事における「Th1・Th2:ヘルパーT細胞の応答」の解説
古典的には、APCによって2種類の効果CD4+ ヘルパーT細胞応答が誘導され、其々が異なるタイプの病原体を排除するように設計されており、Th1とTh2と呼ばれる。感染症がTh1型とTh2型のどちらの反応を惹起するかを決定する要因は完全には解明されていないが、生起された反応は様々な病原体の排除に重要な役割を果たしている。 Th1応答は、インターフェロン-γの産生によって特徴付けられる。このインターフェロン-γは、マクロファージの殺菌活動を活性化し、B細胞にオプソニン化抗体(貪食の目印)と補体結合抗体を作らせ、細胞性免疫を引き起こす。一般的にTh1反応は、細胞内病原体(宿主の細胞内に存在するウイルスや細菌)に対してより効果的である。 Th2応答の特徴は、インターロイキン-5の放出であり、これは寄生虫の排除において好酸球を誘導する。また、Th2は、B細胞のアイソタイプ切り替えを促進するインターロイキン-4を産生する。一般に、Th2反応は細胞外の細菌、蠕虫を含む寄生虫、毒素に対してより効果的である。細胞障害性T細胞と同様に、CD4+ヘルパー細胞の大部分は感染の解決に伴い死滅するが、少数はCD4+記憶細胞として残る。 CD4+効果ヘルパーT細胞のサブセットがより多様化していることは、マウスやヒトを使った科学的研究からも明らかになってきている。制御性T細胞(Treg)は、自己抗原に対する異常な免疫反応を制御するために、免疫系を制限・抑制する獲得免疫の重要な負の制御因子として同定されており、自己免疫疾患の発症を制御する重要なメカニズムとなっている。濾胞性ヘルパーT細胞(英語版)(Tfh)は、効果CD4+T細胞のもう一つの異なる集団で、未感作T細胞の抗原活性化後に発生する。Tfh細胞は、B細胞の体液性免疫に特化しており、二次リンパ系器官の濾胞性B細胞(英語版)に移動し、高品質な親和性成熟抗体の生成と回収を可能にする積極的な傍分泌シグナルを提供する。Tfh細胞は、Tregsと同様に免疫寛容にも関与しており、Tfh細胞が異常に増加すると、無制限の自己反応性抗体産生が起こり、重篤な全身性自己免疫疾患を引き起こす可能性がある。 CD4+ Tヘルパー細胞の重要性は、HIV感染時に顕著になる。HIVは、CD4+T細胞を特異的に攻撃することで、免疫システムを破壊する事が出来る。CD4+T細胞は、まさにウイルスの排除を促進する細胞であると同時に、生物の一生の間に遭遇する他の全ての病原体に対する免疫を促進する細胞でもある。
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