FS Class ETR 200とは? わかりやすく解説

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イタリア国鉄ETR200電車

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 22:45 UTC 版)

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ETR 200
保存車両となっているETR232、前面窓は1970年代の改造でオリジナルは2枚窓
基本情報
製造所 Società Italiana Ernesto Breda
主要諸元
編成 18
軌間 1,435 mm
電気方式 直流3kV
最高運転速度 160 km/h
編成重量 116.8 t
編成出力 1,050 kW
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イタリア国鉄ETR200電車(イタリアこくてつETR200でんしゃ)はイタリアイタリア国鉄(Ferrovie dello Stato Italiane(FS))で1937年から使用された高速列車用電車である。

開発背景

1930年代イタリア国鉄(Ferrovie dello Stato)の幹線であるミラノ - ボローニャ - ナポリ間の電化の完成や他の新しい電化路線用に速達列車に投入する車両が必要となった。1934年スティール航空力学の新しい技術を用いた車両の開発計画が始まり、先頭車の先端部分はトリノ工科大学の風洞実験の研究に基いて開発が行われた一方、イタリア国鉄の車両設計では初めて建築家がデザインを担当しており、外装はジュゼッペ・パガーノ、内装はジオ・ポンティがそれぞれ担当している[1]1936年ソチエタ・イタリアーナ・エルネスト・ブレーダ・ペル・コストゥルツィオーニ・メッカニケ [注釈 1]によって、4基のボギー式連接台車を装備した3両編成の試作車が製造された。4基の台車のうち2基にはT 62-R-100モーター1基が装備され、他の2基には同じモーターがそれぞれ2基ずつ装備された。

ETR200

ETR200は175 km/hに対応する設計がなされていたが、最初に装備されたパンタグラフは130 km/h以上で問題が発生した。ETR200は1937年ボローニャ - ローマ - ナポリ間の路線に投入された。ETR200は当時、ヨーロッパで最も快適で速い列車と考えられ、ベニート・ムッソリーニ1939年ニューヨークで開催されたニューヨーク万国博覧会に1編成送り込んだ[2]1937年12月6日、ETR200はローマ=フォルミア=ナポリ線間において、201 km/hの最高速度記録を打ち立てた。1939年7月20日にはアレサンドロ=チェルヴェラッティ[注釈 2]が運転するETR212によってミラノ - ボローニャ線のポンテヌーレピアチェンツァ間で203 km/hの新記録が出ている。しかし、ETR200は第二次世界大戦によって運行停止され、戦時中の空襲により多くの損害を被った。ETR200の各機体の経歴は以下の通り。

ETR200/ETR220/ETR240経歴一覧
ETR200 ETR220 ETR240 廃車年月 解体年月
形式機番 発注年月日 製造年月 製造所 形式機番 ETR220 ETR220P ETR220AV 形式機番 改造年月
改造年月 改造年月 改造年月
ETR201 1934年9月21日 1936年6月 Breda ETR236 - 1966年2月 - - 1999年5月 1999年3月
ETR202 1936年9月 ETR225 1960年12月 - 1970年7月 ETR243 1988年11月 1999年3月 2000年10月
ETR203 1936年10月 ETR234 1964年12月 1969年3月 - ETR242 1986年7月 静態保存
ETR204 ETR231 1963年3月 1967年11月 - 1998年以前 1999年10月
ETR205 ETR224 1960年11月 - 1970年6月 2000年10月
ETR206 1936年11月 ETR235 - 1965年9月 - 1998年以前 1999年12月
ETR207 1936年12月15日 1938年11月 ETR221 1960年3月 1969年1月 1996年5月 2001年2月
ETR208 ETR227 1961年4月 - 1971年8月 ETR244 1988年5月 1998年3月 1999年7月
ETR209 1938年12月 ETR230 1962年5月 1967年4月 - - 1992年以前 1998年8月
ETR210 ETR228 1961年8月 1966年10月 2000年12月
ETR211 ETR223 1960年10月 - 1971年3月 ETR241 1989年2月 1999年10月
ETR212 1939年1月 ETR232 1963年9月 1968年2月 - - 静態保存
ETR213 1939年2月 ETR226 1961年2月 1969年8月 2001年2月
ETR214 ETR229 1962年11月 - 1972年5月 ETR245 1987年12月 1995年3月 2002年4月
ETR215 1939年4月19日 1941年11月 ETR233 1964年4月 1968年8月 - - 2004年1月 2004年6月
ETR216 - 1946年3月
ETR217 ETR222 1960年7月 1968年7月 - 1999年3月 2000年9月
ETR218 1941年12月 - 1946年3月

ETR220/240

1960年代初期に残っていた16編成は更新および4両編成化改造を実施してETR220へ転換され、このうち5編成はさらにETR240に改造された。これらの編成は1980年代まで営業運転に使われていた。

一部の編成は保存車両となっており、イタリアFS財団[注釈 3]により、2014年時点ではETR232がフィレンツェ・オスマンノロで動態保存、ETR242がファルコナーラで静態保存されており[3]2019年時点ではETR232がローマ・テルミにで動態保存されている[4]

主要諸元 

ETR200/ETR220/ETR240主要諸元
項目 ETR200 ETR220 ETR240
1次製造分 2次製造分 3次製造分 ETR220 ETR220P ETR220AV
軌間 1435 mm
電化方式 DC3000 V
車軸配置 Bo'(1A)'(A1)'Bo' Bo'(1A)'(A1)'Bo' + 2'2' Bo'2'2'Bo' + Bo'2'
編成長 62800 mm 62863 mm 87550 mm
車体幅 2920 mm
屋根高 3800 mm[表注 1] 3800 mm[表注 2]
固定軸距 3000 mm[表注 3] 3000 mm
台車形式 C1000/D1000 C1000/D1000/V920 Z1040/Zpm1040
台車中心間距離 17500 + 17500 + 17500 mm 17500 + 17500 + 17500 / 17500 mm
車輪径 1000mm 1000/920 mm 1040 mm
自重 空車 103.6 t 109.9 t 112.2 t 164 t 175 t 186 t 185 t
積車 116.8 t 1215.5 t 127.7 t 175 t
粘着重量 86.0 t 93.1 t 94.7 t 92.0 t 96.5 t
定員 編成 94名/100名[表注 4] 100名 154/161名[表注 5] 161/240名[表注 6] 205名
1等 70/100名[表注 4] 100名 154/161名[表注 5] 161/84名[表注 6] 205名
2等 24/-名[表注 4] - -/156名[表注 6] -
集電装置 42FS→42LR FS 42LR FS→52FS 52FS
主制御装置 抵抗制御(直並列制御、弱め界磁制御付)
主電動機 62-100直流直巻整流子電動機[表注 7]×6台 T165直流直巻整流子電動機[表注 8])×6台
駆動装置 クイル式駆動装置[2]
歯車比 32/42 = 1.31[表注 9] 28/42 = 1.50 34/50 = 1.47[表注 10] 38/46=1.21
性能 1時間定格出力 1050 kW 1350 kW
連続定格出力 800 kW 1100 kW
最高速度 160 km/h[表注 9] 160 km/h[表注 11] 180km/h
ブレーキ装置 空気ブレーキ、発電ブレーキ、手ブレーキ
装備一覧 1等室
2等室 ○/×[表注 4] × × × ×/○[表注 6] × ×
厨房 ○/×[表注 6] ×
ミニバー × × × △/×[表注 5] ×/○[表注 6] ×
荷物室 ○/×[表注 6] × ×
郵便室 ○/×[表注 6] × ×
乗降扉 4 4 4 5 5 5 5
トイレ 4/2[表注 4] 2 2 3 3 3 3
  1. ^ 3750 mmとする文献もある、屋根上搭載で冷房更新を実施したETR203-206、215を除く
  2. ^ 屋根上搭載で冷房更新改造を実施したETR224、231、233-235、242(旧ETR203-206、215)を除く
  3. ^ 連接台車は1350 + 1650 mmの偏心台車
  4. ^ a b c d e 2次、3次製造分の導入に伴い、客室配置をこれらに合わせて変更
  5. ^ a b c ミニバー付のETR221-230は154名、無しのETR231-236およびミニバー撤去改造後のETR221-230は161名
  6. ^ a b c d e f g h 1986-89年に厨房、荷物室、郵便室を撤去し、2等室とミニバーを設置、一部1等室を2等室に変更
  7. ^ 1時間定格188 kW、連続定格147 kW、ETR220は62R-100(1時間定格190 kW、連続定格150 kW)とする文献もある
  8. ^ 1時間定格250 kW、連続定格200 kW、なお、1時間定格262 kW、連続定格218 kWとする文献もある
  9. ^ a b ETR205は当初歯車比24/42 = 1.75、最高速度130 km/hであった
  10. ^ 一部は31/53 = 1.71とする文献もある
  11. ^ 設計上180 km/hであったが、ブレーキ等が未対応であり、運用では160 km/hに制限されていた

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ Società Italiana Ernesto Breda per Costruzioni Meccaniche, Milano
  2. ^ Alessandro Cervellati
  3. ^ Fondazione FS Italiane(FFSI)、イタリア鉄道に関する歴史的遺産を管理する財団

出典

参考文献

書籍

  • Cherubini, Fabio (1979) (イタリア語). Materiale Motore F.S.Italia 1979-01-01. malmö: Frank Stenvalls Förlag. ISBN 9172660430 
  • Haydock, Dvid (2007) (英語). ITALIAN RAILWAYS LOCOMOTIVES, MULTIPLE UNITS. Sheffield: Platform 5. ISBN 9781902336565 
  • Haydock, Dvid (2014) (英語). ITALIAN RAILWAYS LOCOMOTIVES, MULTIPLE UNITS. Sheffield: Platform 5. ISBN 9781909431164 
  • Haydock, Dvid (2019) (英語). ITALIAN RAILWAYS LOCOMOTIVES, MULTIPLE UNITS. Sheffield: Platform 5. ISBN 9781909431607 
  • Kalla-Bishop, P. M. (1971) (英語). Italia Railways Railway Histories of the World. Newton Abbot: DAVID & CHARLES. ISBN 9780715351680 

その他

  • 臼井敬太郎「1930 年代イタリア国鉄の新形式車両デザインイタリア近代の鉄道デザイン研究 2」、日本デザイン学会、2010年。

関連項目


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