CCV設計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 15:07 UTC 版)
航空工学にアクティブ制御技術(Active control technology, ACT)が導入されると、機体形状を決定するにあたり、空力・エンジン・構造の古典的な3分野に並んで、飛行制御も重視されるようになり、このようにして設計された機体は運動能力向上機(CCV)と称された。フライ・バイ・ワイヤ(FBW)のような飛行制御技術の発達とともに、ACTは様々な形で導入されたが、軍用機で特徴的な応用法としては、直接力制御(DFC)や静安定緩和(RSS)による機動性の向上がある。上記のように、従来の航空機は、全飛行領域に渡って静安定がプラスになるよう、重心は空力中心より前方に位置するように設計されている。しかしこのためには、釣合い飛行状態では水平尾翼が負の揚力を発生せねばならず無駄になるほか、十分な安定性を確保しようとすると尾翼面積が大きくなり、構造重量や抵抗が大きくなる。 これに対し、静安定緩和 (RSS)特性を備えた航空機では、重心位置を後退させて静安定を小さくしたり、あるいは負の静安定をとる=不安定として、不足する安定性は制御によって補償する。このようにすることで水平尾翼を小さくでき、構造重量や抵抗を減少できる。また軍用機であれば運動性の向上も期待できる。 そしてより積極的に機動性を向上させるのが直接力制御(DFC)である。上記の通り、従来の航空機は3舵を用いて機体姿勢をかえることで飛行経路をかえるため、機体姿勢の制御と飛行経路の制御は分離できなかった。これに対しCCVでは、新しい舵面を備えたり、フラップと併用したりすることで、機体姿勢と飛行経路を分離した飛行方式が可能となる。ただしCCVの揺籃期には、新しい舵面による多彩なDFC手法が試みられたものの、実際には全てをパイロットが使いこなすことは難しいなど実用性が乏しい部分があり、実用機では、可能な範囲で漸進的に取り入れる方向となっている。 直接揚力制御(DLC) - 昇降舵とフラップ(フラッペロン)を用いて、迎角を変えないで揚力を増加でき、なめらかな引き起こしができる。 直接応力制御(DSC) - 垂直カナードを利用することで、ローリングしないで水平旋回を行える。 上下・左右首振り制御 - 飛行経路を変えないで姿勢角や方位角を変える。 上下遷移制御 - ピッチ姿勢一定で迎角(上下角度)を変える。 左右遷移制御 - 機首方位を一定に保ちながら機体を左右に移動させる。 CCVの飛行経路変更なしの姿勢制御 CCVの姿勢変更なしの横遷移飛行 CCVの姿勢変更なしの上下遷移飛行
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