現代機の翼面荷重
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/09 04:12 UTC 版)
航空機の登場からしばらく、航空機の速度性能は上昇の一途をたどっており、それにつれて翼面荷重も高くなっていき、F-104戦闘機でそのピークに達した。しかし1950年代から60年代にかけて、速度性能はほぼ頭打ちとなっている。よって現代の航空機の設計では、速度性能と翼面荷重の値に相関関係は見られず、別の理由によって翼面荷重が決定される傾向にある。 F-104以降の戦闘機は、運動性を重視し、翼面荷重を小さく設計する傾向にある。例えばアメリカ機では、F-4戦闘機は比較的翼面荷重を小さく設計した。これは艦上戦闘機としての離着艦性能を重視したためであるが、結果としてその運動性の高さでベトナム戦争で活躍した。その次世代機であるF-15はさらに翼面荷重が小さくなった。 軍用機・民間機を問わず大型機は、高翼面荷重の設計になる傾向にある。大型機において翼面荷重を低くすると野放図に機体規模が大きくなってしまうため、要求される性能を満たしかつ機体規模を最小限に抑えるには、高翼面荷重の設計にする事が欠かせない。前述のF-104戦闘機は主翼面積が極めて小さく、高翼面荷重設計の機体の代表格であるが、後述の通り大型ジェット旅客機の翼面荷重は、軒並みF-104よりも高い。 A-10攻撃機のように低速性能を重視した機体は、翼面荷重が小さい。また現代航空機においても、小型プロペラ機、グライダーといった極めて低速の機体は、依然として翼面荷重は極めて小さい。 ただし戦闘機の設計においては、近年はあまり翼面荷重の値にはこだわらない傾向がある。かつては航空機の翼平面形は直線翼のみであったが、現代では後退翼やデルタ翼、可変翼など種類が多くなっている。さらにはストレーキやカナードといった種々の設計手法が存在する事から、単純な翼面荷重の値で戦闘機の性能比較ができなくなっている。ブレンデッドウィングボディのような胴体と翼を滑らかにつないだ設計では、どこまでが翼でどこからが胴体なのか区別ができないため、翼面積、ひいては翼面荷重の値がそもそも明確ではない。最近ではCCV設計やジェットエンジンの推力偏向など、揚力を上げるという手段以外での旋回性能向上手段が存在することから、なおさら翼面荷重が性能に寄与する割合は低くなっている。
※この「現代機の翼面荷重」の解説は、「翼面荷重」の解説の一部です。
「現代機の翼面荷重」を含む「翼面荷重」の記事については、「翼面荷重」の概要を参照ください。
- 現代機の翼面荷重のページへのリンク