現代海洋法と『自由海論』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/22 19:54 UTC 版)
「自由海論」の記事における「現代海洋法と『自由海論』」の解説
現代ではこのような公海自由の原則が慣習国際法として確立しているだけでなく、1958年の公海条約第1条や1982年の国連海洋法条約第86条、第89条では国家による公海の領有や排他的支配が禁止され、国連海洋法条約第87条第1項では公海使用の自由が認められる範囲が定められたが、こうした現代の公海自由に関する国際制度はグロティウスが『自由海論』で論じた理論に起源を持つとされている。しかし19世紀から20世紀前半では公海と、沿岸国の領域とみなされる領海を大きくふたつに分けるという考え方が一般的であったが、1982年の国連海洋法条約では沿岸国に基線から200海里までの排他的経済水域が認められることとなった。これにより世界の海は法的には領海、排他的経済水域、公海という3つの区域に大きく分けられることとなり、『自由海論』で述べられた海洋の自由が現代でも妥当する領域、つまり公海の範囲は大幅に減少して、現代ではグロティウスが説いた海洋の自由は後退することとなった。またグロティウスは『自由海論』の中で海は他人に害することなく利用することが可能な共有物としたが、環境保護の観点からこのような考え方も現代社会に妥当するとは言えない。『自由海論』が執筆された17世紀当時は海洋資源の枯渇の問題は差し迫ったものではなかったが、技術の進歩により20世紀以降は海の資源が有限ということが認識されるようになっている。
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