CCTV監視カメラにおけるプライバシー対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/08 00:31 UTC 版)
「プライバシーバイデザイン」の記事における「CCTV監視カメラにおけるプライバシー対策」の解説
市民の防犯意識の向上によりCCTV監視カメラは多くの場所で設置されるようになった。撮影したデジタルデータは、離れた監視センターのデータベースにて一元管理され、表示、保存、索引付け等の処理ができる。CCTV監視カメラは、犯罪の検知や問題発生時の証拠確保等が可能である。しかし、これらの撮影データは、Webアプリケーション上に存在するものもあり、誰もが見ることができ、第三者による監視やプライバシー侵害の問題が発生する。また、撮影画像の第三者による二次的利用のプライバシー侵害をどのように対策するのか、誤操作による情報漏洩に対する安全性確保をどのように対策するのか等の懸念が残る。 プライバシーを考慮した防犯カメラの方式として、一般的に次の2つの方式がある。 ひとつ目の方式は、公共エリアをカメラで撮影し、そのデータは人を介さずデータベースに保管するものである。警察利用などで必要になった場合のみ、データを利用するというもので、プライバシーの確保は行われているという。これは、犯罪捜査における証拠を収集する以上の効果はなく、確かにプライバシーは確保されているが、商店街利用者の安全性向上には役に立っているとは言い切れない。 もう一つの方式は、撮影画像をデジタル画像処理し、人を棒などの抽象的な記号に置き換え、監視人が随時カメラ画像をモニタリングするというものである。犯罪行為が発生した場合、監視人は適正な防護対応をとることができる。しかし、保管するデータは、オリジナルな撮影画像であるため、監視人が視認可能である。つまり、セキュリティの確保は行われているが、プライバシーへの配慮は十分とは言えない。 上記の方式は両方とも、プライバシーとセキュリティを総括的に考慮するPbDの考えに基づいていないため、一見プライバシーの対策を行っていることを強調するあまり、セキュリティとのバランスが適正にとれていないと言える。 カナダのトロント市では、公共機関に数千台のビデオ監視カメラを設置する際にプライバシーの懸念に対しPbDを適用して、効果的なプライバシー保護を実践した。そこでは、公共機関の利用者を特定する必要がない場合には、撮影画像を暗号化かつ非表示としプライバシー性を向上させる方法を採用している。個人情報に暗号化技術を利用し、管理者が秘密鍵で暗号化された画像を復号して元の撮影画像を表示できる。このため、犯罪捜査等において個人を特定する場合は、公共機関の利用者が写った画像を視認表示できる。PETによるプライバシー対策ソリューションにより、個別の対象のみの暗号化が可能である。この技術は画像の利用において柔軟性が高く、撮影画像全体を暗号化する従来技術より効果的である。また、画像の管理者には見ることを許可し、一方で個人のプライバシーを保護し、記録できる。 例えば、顔を対象オブジェクトとして識別し、抽出データとして効果的に暗号化して保管が可能である(出典: Ann Cavoukian PhD『Privacy by Design Book』(IPC))。この技術により、原画像(図a参照)と人物を取り除いた画像(図b参照)から、暗号化された画像(図c参照)を抽出する。犯行現場の調査に暗号化された撮影画像を利用する際、警察は識別する対象の内容を復号できる。暗号化は監視カメラの映像取得時に行われるため、画像確認時に識別する対象を見逃すリスクを低減できる。 PbDの考え方によりシステム開発を行えば、上記のように管理者や警察関係者による画像確認を容易にし、許可されていない者には、必要以上に情報を開示しないというセキュリティ確保とプライバシー保護を両立できる。また、設計時に実装する方式や、運用方法に関しPIAの手法を利用することで、関係者が納得のいくシステムの開発・運用が可能となる。
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