BE-4
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/28 23:37 UTC 版)
![]() 輸送中のBE-4 | |
原開発国 | アメリカ合衆国 |
---|---|
開発企業 | ブルーオリジン |
前身 | BE-3[1] |
現況 | 運用中 |
液体燃料エンジン | |
推進薬 | 液体酸素 / 液化天然ガス |
サイクル | 一軸式酸素リッチ二段燃焼サイクル[2] |
性能 | |
推力 | 2,450 kN |
燃焼室圧力 | 13,400 kPa (1,950 psi) |
使用 | |
ヴァルカン, ニューグレン |
BE-4またはブルーエンジン4 (Blue Engine 4) は、アメリカ合衆国の宇宙企業ブルーオリジン社が開発した推力2,450 kNの大型の液体燃料ロケットエンジンである[3]
元々ブルーオリジン社が開発する大型ロケットのニューグレンに使用するべく開発されており、BE-4を第一段に7基用いるニューグレンは45トンの重量物を衛星軌道に乗せる能力がある[4]。後にユナイテッド・ローンチ・アライアンス (ULA) 社のアトラスV後継機のヴァルカンにも採用されており、2024年1月にまずヴァルカンが初打ち上げ成功した[5]。次いで2025年1月にニューグレンも初打ち上げに成功している[6]。
歴史

ブルーオリジンは2011年にBE-4の開発を開始した。新型のエンジンは液体酸素と液化天然ガスに推進剤を変更したエンジンである。同社は当初開発していることを公表しなかった[7]。
2014年9月にULA社がブルーオリジンのBE-4を新型打ち上げ機(後のヴァルカン)のエンジンとして選択した事が報じられ、初めてBE-4の開発が明らかにされた[8]。
2015年4月には開発作業が並行して進められていることが報じられた。1つの計画は実物大のBE-4 パワーパックで、動弁系とターボポンプのセットで燃料/酸化剤を混合して噴射機と燃焼器に送る。2つ目の計画は縮小版のエンジンの噴射装置であり[9]、2015年初頭に試験に入る予定であるとされた。
その後、2016年末には実物大エンジンの試験に入るというスケジュールが報じられ[9]、2017年3月に1基目のBE-4が完成した事が発表された[10]。燃焼試験は2017年10月より開始され、2018年3月には65%の出力で114秒の試験に成功した[11]。一方で2023年6月30日の燃焼試験中に爆発事故を起こした[12]。
2024年1月、BE-4を搭載したヴァルカンが初めて打ち上げに成功した。次いで翌2025年1月には、同じくBE-4を搭載した自社のニューグレンも初打ち上げに成功した。[6]
採用
ブルーオリジンではBE-4を独自の人工衛星打ち上げロケットに搭載する他、エンジンの外販もできるように開発を進めており、ULA社の次期ロケットでの採用が伝えられている[13]。
ヴァルカン
2014年末、ブルーオリジンはULA社とBE-4エンジンの共同開発に合意し、新型のエンジンを改良型アトラスVの後継機であるヴァルカンのエンジンとして採用する事を決めた。ヴァルカンは2基のBE-4を搭載している[14]。
ULA社が共同事業を発表したのは、2014年ウクライナ騒乱によりロシア製エンジンの信頼性と供給について地政学的・政治的に深刻な懸念が出てきたためである[13]。ULA社はBE-4を搭載したヴァルカンの打ち上げを2019年以降に予定していた[7]が、BE-4開発の遅れに伴い、2024年1月と大幅に遅れた[14]。
ただし、このRD-180換装計画ではAR-1も長らく対立候補とされていた。メタンを推進剤とするBE-4と異なりAR-1はRD-180と同様にケロシンを推進剤とする[15]。ULAは2018年9月、AR-1ではなく、BE-4を1段目エンジンとして採用したことを発表した[16]。
XS-1
ユナイテッド・ローンチ・アライアンスのメンバーであるボーイング社はDARPAのXS-1再使用型ブースター計画にBE-4を搭載できるか検討を行った[17][要文献特定詳細情報]。結果、2017年には、XS-1にはエアロジェット・ロケットダインのAR-22が採用、2021年に試験飛行予定と発表された[18]。しかし、XS-1は2020年に開発が中止され実際には利用されなかった[19]。
諸元
- 推力: 最大出力時2,400 kN (550,000 lbf)[7]
出典
- ^ Achenbach, Joel (2014年9月17日). “Jeff Bezos's Blue Origin to supply engines for national security space launches”. The Washington Post. オリジナルの2014年9月25日時点におけるアーカイブ。 2014年9月27日閲覧。
- ^ “ULA taps Blue Origin for powerful new rocket engine”. Spaceflightnow.com (2014年9月17日). 2016年12月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年4月8日閲覧。
- ^ “BE-4” (英語). Blue Origin. 2024年3月22日閲覧。
- ^ Spectrum59-1 2022, p. 38.
- ^ ULA. “United Launch Alliance Successfully Launches First Next Generation Vulcan Rocket” (英語). newsroom.ulalaunch.com. 2024年1月8日閲覧。
- ^ a b c Ferster, Warren (2014年9月17日). “ULA To Invest in Blue Origin Engine as RD-180 Replacement”. Space News 2014年9月19日閲覧。
- ^ Gruss, Mike (2015年4月24日). “Evolution of a Plan : ULA Execs Spell Out Logic Behind Vulcan Design Choices”. Space News 2015年4月25日閲覧。
- ^ a b Foust, Jeff (2015年4月7日). “Blue Origin Completes BE-3 Engine as BE-4 Work Continues”. Space News 2015年4月8日閲覧。
- ^ “ブルー・オリジンの新ロケットエンジン「BE−4」、アマゾンCEOが完成を初ツイート”. Sorae.jp (2017年3月7日). 2017年3月9日閲覧。
- ^ “ブルー・オリジン、「BE-4」エンジンの認証試験を年内にも完了予定”. Sorae (2018年4月24日). 2018年10月6日閲覧。
- ^ Sheetz, Michael (2023年7月11日). “Jeff Bezos’ Blue Origin rocket engine explodes during testing” (英語). CNBC. 2023年7月16日閲覧。
- ^ a b Foust, Jeff (2014年9月22日). “Commercial crew and commercial engines”. The Space Review 2014年10月1日閲覧。
- ^ a b “ULA、新型ロケット「ヴァルカン」初号機打ち上げ 月着陸船ペレグリンの分離に成功”. sorae 宇宙へのポータルサイト (2024年1月8日). 2024年3月22日閲覧。
- ^ Mike Gruss (2015年2月27日). “Timing of Russian Engine Ban Puts ULA, Air Force, in a Bind”. Space News 2015年4月8日閲覧。
- ^ “ブルー・オリジン「BE-4」、次期ロケット「ヴァルカン」に採用決定”. Sorae (2018年10月1日). 2018年10月2日閲覧。
- ^ http://www.darpa.mil/NewsEvents/Releases/2014/07/15.aspx
- ^ “ボーイング、スペースプレーン実験機「XS-1」製造へ 初飛行は2020年”. Sorea.jp (2017年5月25日). 2017年5月25日閲覧。
- ^ “宇宙分野で後退続くボーイング。衛星、宇宙船、スペースプレーンでも(秋山文野) - 個人”. Yahoo!ニュース. 2022年1月22日閲覧。
参考文献
- FOUST, JEFF (2022年1月). "NASA'S SPACE LAUNCH SYSTEM WILL LIFT OFF". IEEE Spectrum. 59 (1).
関連項目
外部リンク
BE-4
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 01:09 UTC 版)
詳細は「BE-4」を参照 ブルーオリジンはより大型のロケットエンジンの開発を2011年に開始した。そのエンジンはBlue Engine 4またはBE-4で推進剤は液化メタンと液体酸素の組み合わせに変更された。推力は2,400 kN (550,000 lbf) に設計され当初の予定ではブルーオリジンの打ち上げ機に使用される予定だった。ブルーオリジンは2014年9月まで新型エンジンを公表しなかった。 2014年末、ブルーオリジンはユナイテッド・ローンチ・アライアンスとBE-4エンジンをアトラスVロケットの既存のロシア製のRD-180を換装するために共同開発に合意した。新型ロケットは2基のそれぞれ推力2,400 kN (550,000 lbf) のBE-4 エンジンを1段目に使用する予定である。エンジンの開発計画の開始は3年前に遡る。 ULA は新型ロケットの最初の打ち上げを2019年より早い時期を期待する。
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