A1の事件
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「日本ボクシングコミッション事件」の記事における「A1の事件」の解説
東京地裁平成27年1月23日判決(労働判例1117号50頁、判例秘書L07030722、LEX/DB 25505716、D1-Law.com 28233189、Westlaw Japan 2015WLJPCA01238002) 事件番号と事件名:平成24年(ワ)第12908号 地位確認等本訴請求事件/平成25年(ワ)第32537号 損害賠償等反訴請求事件 著名事件名:「日本ボクシングコミッション事件」 裁判長:芝本昌征 A1は1997年頃、訴外の法人に勤務しながらJBCのレフェリーライセンスを取得し、レフェリーとして活動するようになり、2004年1月にアルバイトとしてJBCに採用され、試合管理業務、ライセンス管理業務、ホームページの開設・更新と『ボクシング広報』の編集等を行うようになった。2005年1月にJBCの正規職員となり、本部事務局員として総務・試合管理等の業務を担当し、2006年3月頃には経理業務にも携わるようになり、レフェリーを引退して事務局の業務に専念するようになった。その後、上述の通りJBCから3度にわたり懲戒解雇の意思表示を受けたため、A1はこれらの解雇がいずれも無効であると主張し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めて東京地裁に提訴した。JBCはA1の競業避止義務違反等により損害を被ったなどと主張し、損害賠償を求めて反訴した。第2次解雇は仮処分手続においてJBCがA1に弁明の機会を与えることなく懲戒解雇の意思表示をしたものであるが、就業規則の規定には懲戒解雇の前に事実関係を精査しなければならないとあり、第一審判決は、単に訴訟手続等で事後、主張立証が行われるというだけでは事前の弁明を経ることができなかった特段の支障として不十分であるとしてA1の請求をほぼ認容し、JBCの反訴請求を棄却した。 労働判例ジャーナル(労働開発研究会)は判示事項として、(1) 公益通報を行ったことは懲戒解雇事由にあたるとは認められず、情報提供等の行為も懲戒解雇を正当化するものではなく、その他の行為についても懲戒解雇の正当性は認めがたい、(2) 賞与については具体的な支給条件が規定されておらず、法的拘束力を持つ労働慣行が確立していたとまでいえないから賞与請求を肯認することはできない、(3) 法人の社会的評価を低下させたとはいえない、の3点を挙げている。水町勇一郎『労働法〔第6版〕』では、適正な手続きを欠いた懲戒権の行使を無効とした判例として紹介されている。 この事件では次のような平等原則違反が指摘されている。 「[2011年9月29日付]公益通報もいわゆる内部通報にとどまり、殊更外部に喧伝したものでもない。なお、平成23年5月31日にB5らが報道関係者に対して行った、安河内、B14ら4名の飲食代1万7180円を被告の経費として処理した行為が背任罪に当たるとの外部通報において、何ら懲戒処分はなされておらず、むしろ、B5がまもなく主任に昇進していることは[略]のとおりである。 以上によれば、[9月29日付]公益通報が公益通報者保護法による公益通報に該当するか否かの点を措いても、同通報に及んだことが、懲戒解雇事由を定める就業規則55条2号所定の素行不良に該当するとまでは認められない。」 「B4、B11及びB5らにおいては、安河内の事務局長解職前、報道関係者向けに記者会見を開き、被告[JBC]に代わって国内試合を統括する新団体設立の意向を外部的に表明したこともあったところ、かかるB4らの外部的表明を伴う上記行動に対して何らの処分もなされておらず、むしろ、B4は事務局長に就任し、B5は主任に昇進し、B11も被告における枢要なポストに収まっていることからすれば、新団体設立の内部的検討にとどまっている原告らについて懲戒解雇事由に当たるとするのは、明らかに均衡を欠くともいえる(なお、本件証拠上、B4らによる上記新団体の設立があくまで暫定的なものであった趣旨を述べる証拠[略]もあるが、報道関係者らに対し、新団体設立の意向を外部的に表明するにまで至っていることに照らせば、直ちに採用し難い。)」
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