1947年 - 1970年
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「ダイヤモンド類似石」の記事における「1947年 - 1970年」の解説
光学上の欠点が改善された最初のダイヤモンド類似石は合成ルチル(TiO2、二酸化チタン単結晶)である。1947-48年ごろから用いられはじめた合成ルチルは、まばゆいばかりの光に溢れた石であった。いや、光り過ぎていた、と、言うべきかもしれない。合成ルチルの屈折率と分散値(2.8と0.33)は、本物のダイヤモンドのそれをはるかに越えているため、結果として生じるきらめきは目映いばかりの虹色を呈し、オパールではないかとすら思えてくる。合成ルチルはまた複屈折を示す。これはカットテーブルを光軸に垂直にした場合、表には出ない特性だが、それがわずかでもずれると背面ファセットの稜線が二重に映ることであからさまになる。こうして合成ルチルは一時はかなりもてはやされたものの、色が若干黄ばんで見えるのがどうやっても改善できなかったので、次第に用いられなくなってくる。しかしながら、合成ルチルは様々な金属酸化物を不純物として混入させることにより、青や赤といった幅広い色石を得ることが可能である。こういった色石や無色に近い石は、それまでになかった石としてたいへんに人気を博したのだが、この石はモース硬度も6以下と低くて傷つきやすく、おまけにかなり脆いので、次第に身に付けられることもなくなりやがて消えていった。この素材は第3の酸素パイプを設けたトリコーンバーナという発明を採用した改良ベルヌーイ法により合成された。チタンの焼成にはさらに多量の酸素を必要とするため、単結晶の生成にはこういった工夫が必要だったのである。この技術はCharles H. Moore, Jr.によりニュージャージー州のサウスアンボイに位置するナショナルリード(後のN.L.インダストリ)により発明された。合成ルチルの製造はナショナルリードとユニオンカーバイドの2社でほぼ独占され、ピーク時の年間生産量は750,000カラット (150kg) に達した。合成ルチルには多くの流通名が付けられている。例を挙げれば「アストリル」 (Astryl) 「ダイヤモティスト」 (Diamothyst) 「ジャワゲム」 (Gava or Java Gem) 「メレディス」 (Meredith) 「ミリディス」 (Miridis) 「レインボー(マジック)ダイヤモンド」 (Rainbow (Magic) Diamond) 「ルタニア」 (Rutania) 「チタンジェム」 (Titangem) 「チタニア」 (Titania) 「アルティメット」(Ultamite) などなど。 ナショナルリードはまた別のチタン化合物に目をつけ、その合成法を研究した結果リリースされたのがチタン酸ストロンチウム(SrTiO3、タウソン石単結晶)である。この研究は1940年代の終わり頃から1950年初頭にかけ Leon Merker と Langtry E. Lynd の二人により、またもやトリコーンバーナを採用した改良ベルヌーイ法を用いて行われた。1955年にチタン酸ストロンチウムが市場に導入されると、それまでイミテーションダイヤモンドの市場を席巻していた合成ルチルにたちまちとって変わった。これはチタン酸ストロンチウムが目新しかっただけではなく、その光学的特性がダイヤモンドにきわめて近く(屈折率は2.41、分散値は0.19)、合成ルチルのけばけばしい極彩色の外観をかなり改善できたためである。合成ルチルと同じ不純物を混入させることにより、黄色、オレンジ、赤、青、黒といった色石も得られた。本物のダイヤモンドと同じく等軸晶系なので複屈折もなく、合成ルチルのようにファセットの稜線が二重に見えることもない。 チタン酸ストロンチウムの唯一にして最大の欠点は、焼成温度がかなりの高温になる点を除けば、耐久性に乏しい点である。モース硬度は5.5と傷つき易く、合成ルチルよりずっと脆い。それゆえチタン酸ストロンチウムと、安定した他の素材を組み合わせたダブレットが作成されたりもした。そういう欠点を抱えてはいたが、この時点では最良のダイヤモンド類似石であったので、ピーク時の年間生産量は150万カラット (300kg) に達した。製法特許の関係からアメリカ合衆国内ではナショナルリードの一社独占で製造され、海外では日本の中住結晶ラボラトリーで製造された。チタン酸ストロンチウムには「ブリリアンテ」(Brilliante)「ダイヤジェム」(Diagem)「ダイアモンティア」(Diamontina)「ファブライテ」(Fabulite)「マーベライト」(Marvelite) といった流通名が与えられた。
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