1次元の格子振動の量子化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 01:14 UTC 版)
「フォノン」の記事における「1次元の格子振動の量子化」の解説
1次元の量子的な調和振動子はN個の同種原子から成る。これはフォノンを考える上で、最も簡単な量子的モデルである。このモデルは直ちに2次元、3次元に一般化することができる。 質点の位置は平衡位置からのずれx1, x2…として記述される。(すなわちxi = 0は、粒子iが平衡位置にあることを意味する)2次元以上の場合では xiはベクトル量となる。この系のハミルトニアンは次のように書ける。 H = ∑ i = 1 N p i 2 2 m + 1 2 m ω 2 ∑ { i j } ( n n ) ( x i − x j ) 2 {\displaystyle {\mathcal {H}}=\sum _{i=1}^{N}{\frac {p_{i}^{2}}{2m}}+{\frac {1}{2}}m\omega ^{2}\sum _{\{ij\}(\mathrm {nn} )}\left(x_{i}-x_{j}\right)^{2}} ここでmは各原子の質量(ここでは全ての原子で等しいと仮定する)、xi とpiはそれぞれi番目の原子の位置演算子と運動量演算子であり、和は最近接において行う。しかし格子は、粒子のようにふるまう波動としての側面も現れる。慣習として、変数として粒子の座標の代わりに、基準モードの波数ベクトルを用いたフーリエ空間における波を扱う。基準モードの数は、粒子数と等しい。しかし、フーリエ空間は系の周期性を考える上で非常に有用である。 xkの離散フーリエ変換として定義されるN個の基準座標Qk、pkのフーリエ変換として定義されるN個の共役運動量Πkを導入する。 Q k = 1 N ∑ l e i k a l x l Π k = 1 N ∑ l e − i k a l p l . {\displaystyle {\begin{aligned}Q_{k}&={\frac {1}{\sqrt {N}}}\sum _{l}e^{ikal}x_{l}\\\Pi _{k}&={\frac {1}{\sqrt {N}}}\sum _{l}e^{-ikal}p_{l}.\end{aligned}}} kn はフォノンの波数であり、すなわち2πを波長で割ったものである。 これらは実空間もしくは波数空間における次の交換関係を満たす。 [ x l , p m ] = i ℏ δ l , m [ Q k , Π k ′ ] = 1 N ∑ l , m e i k a l e − i k ′ a m [ x l , p m ] = i ℏ N ∑ l e i a l ( k − k ′ ) = i ℏ δ k , k ′ [ Q k , Q k ′ ] = [ Π k , Π k ′ ] = 0 {\displaystyle {\begin{aligned}\left[x_{l},p_{m}\right]&=i\hbar \delta _{l,m}\\\left[Q_{k},\Pi _{k'}\right]&={\frac {1}{N}}\sum _{l,m}e^{ikal}e^{-ik'am}\left[x_{l},p_{m}\right]\\&={\frac {i\hbar }{N}}\sum _{l}e^{ial\left(k-k'\right)}=i\hbar \delta _{k,k'}\\\left[Q_{k},Q_{k'}\right]&=\left[\Pi _{k},\Pi _{k'}\right]=0\end{aligned}}} 一般的な結果から、 ∑ l x l x l + m = 1 N ∑ k k ′ Q k Q k ′ ∑ l e i a l ( k + k ′ ) e i a m k ′ = ∑ k Q k Q − k e i a m k ∑ l p l 2 = ∑ k Π k Π − k {\displaystyle {\begin{aligned}\sum _{l}x_{l}x_{l+m}&={\frac {1}{N}}\sum _{kk'}Q_{k}Q_{k'}\sum _{l}e^{ial\left(k+k'\right)}e^{iamk'}=\sum _{k}Q_{k}Q_{-k}e^{iamk}\\\sum _{l}{p_{l}}^{2}&=\sum _{k}\Pi _{k}\Pi _{-k}\end{aligned}}} 位置エネルギー項は 1 2 m ω 2 ∑ j ( x j − x j + 1 ) 2 = 1 2 m ω 2 ∑ k Q k Q − k ( 2 − e i k a − e − i k a ) = 1 2 ∑ k m ω k 2 Q k Q − k {\displaystyle {\tfrac {1}{2}}m\omega ^{2}\sum _{j}\left(x_{j}-x_{j+1}\right)^{2}={\tfrac {1}{2}}m\omega ^{2}\sum _{k}Q_{k}Q_{-k}(2-e^{ika}-e^{-ika})={\tfrac {1}{2}}\sum _{k}m{\omega _{k}}^{2}Q_{k}Q_{-k}} ここで ω k = 2 ω 2 ( 1 − cos k a ) = 2 ω | sin k a 2 | {\displaystyle \omega _{k}={\sqrt {2\omega ^{2}\left(1-\cos {ka}\right)}}=2\omega \left|\sin {\frac {ka}{2}}\right|} ハミルトニアンは波数空間において次のように書ける H = 1 2 m ∑ k ( Π k Π − k + m 2 ω k 2 Q k Q − k ) {\displaystyle {\mathcal {H}}={\frac {1}{2m}}\sum _{k}\left(\Pi _{k}\Pi _{-k}+m^{2}\omega _{k}^{2}Q_{k}Q_{-k}\right)} 位置変数の間のカップリングは解きほぐされる。Q とΠがエルミートであれば(これらはそうではない)、変換されたハミルトニアンはN個の独立な調和振動子を記述する。 量子化されたあとの形は境界条件に依存する。簡単のため周期的境界条件が課すと、(N + 1)番目の原子は1番目の原子と同等になる。これは物理的には原子鎖の始まりと終わりを繋ぎ合わせることに相当する。この結果の量子化は次のように書ける。 k = k n = 2 π n N a for n = 0 , ± 1 , ± 2 , … ± N 2 . {\displaystyle k=k_{n}={\frac {2\pi n}{Na}}\quad {\mbox{for }}n=0,\pm 1,\pm 2,\ldots \pm {\frac {N}{2}}.\ } nの上限は波長の最小値から求められ、格子面間隔aの2倍となる。 調和振動子の固有値、またはモードωkのエネルギー準位は次のように書ける。 E n = ( 1 2 + n ) ℏ ω k n = 0 , 1 , 2 , 3 … {\displaystyle E_{n}=\left({\tfrac {1}{2}}+n\right)\hbar \omega _{k}\qquad n=0,1,2,3\ldots } このエネルギー準位は等間隔であり、それぞれ次のようになる。 1 2 ℏ ω , 3 2 ℏ ω , 5 2 ℏ ω ⋯ {\displaystyle {\tfrac {1}{2}}\hbar \omega ,\ {\tfrac {3}{2}}\hbar \omega ,\ {\tfrac {5}{2}}\hbar \omega \ \cdots } ここで1/2ħωは量子的な調和振動子の零点エネルギーである。 次のエネルギー準位に押し上げるためには、正確にエネルギーħωだけが調和振動子の格子に供給されなければならない。電磁場が量子化されたときのフォトン(光子)との比較から、振動エネルギーの量子はフォノンと呼ばれる。 全ての量子系は波動性と粒子性を同時に示す。フォノンの粒子性は第二量子化と生成消滅演算子によって理解される。
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