鬱血乳頭
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鬱血乳頭(papilledema)は頭蓋内圧亢進による乳頭浮腫と定義されるが初期には無症状で発見されることもある。旺盛期には頭痛、嘔気、嘔吐などを訴え、慢性期になれば一過性視力障害が頻発する。鬱血乳頭は初期、完成期、慢性期、萎縮機の4期に分けられ、各期で視機能の障害の程度と乳頭所見に違いがみられる。画像診断ではなく特徴的な乳頭所見で鬱血乳頭と診断することも可能である。頭蓋内圧亢進による網膜神経節細胞の軸索輸送が障害された結果、軸索内に種々の物質が貯留し、静脈鬱滞および乳頭浮腫をおこす。 病期視機能乳頭所見初期 無自覚、良好な視機能、マリオット盲点の拡大 乳頭辺縁不鮮明(上下や鼻側が先行)、中心陥凹の保存 中期 乳頭所見に比較して視機能障害は軽度、gray-outやblock-out(一過性視力低下)、光視症 発赤腫脹、Paton’s line、出血、白斑、血管拡張 慢性期 霧視、周辺視野狭窄 白色のドーム状隆起、中心陥凹は不明瞭 萎縮期 視力低下が進行、視野障害(神経線維欠損型、周辺狭窄、広範欠損など) 炎性視神経萎縮 乳頭浮腫の中でも最も腫脹が強い代表的なものである。検眼鏡的に視神経乳頭は境界不明瞭で硝子体側に強く突出し、乳頭上および周囲に旺盛な表在性出血や軟性白斑が認められるが、乳頭陥凹は保持される。蛍光眼底造影では乳頭上および周囲に無数の毛細血管がみられ、時間とともに色素漏出が旺盛にみられる。視野検査では初期にはマリオット盲点の拡大のみであるが、そのまま放置された場合は視神経の萎縮の進行とともに次第に恒久的視力障害と視野障害が進行する。治療が慢性期になった場合には境界不明瞭な炎性視神経萎縮におちいることがある。 偽脳腫瘍とは頭蓋内圧亢進の所見(鬱血乳頭、頭痛)があるものの、通常の神経放射線学的に正常な病態である。薬剤性(経口避妊薬、ステロイド薬、ビタミンA過剰摂取)、静脈洞血栓症、動静脈奇形、髄膜炎、白血病、POEMS症候群などに起因する続発性のものが知られている。そのため原因検査のため血液検査や髄液検査やMRV(MR Venography)なども行われる。このような精査にもかかわらず原因不明も多い。原因不明の場合は特発性頭蓋内圧亢進症といわれる。初期は視機能が良好で進行は緩徐、自然回復もあり予後も良好なものが多い。しかし、急激な悪化、重篤な後遺症にいたり予後不良の場合もある。 また、通常であれば鬱血乳頭は両側性だが、視神経炎の既往や緑内障などにより片側の視神経萎縮が存在する場合、萎縮側の鬱血乳頭は生じにくくなる。病側の視神経萎縮と対側の鬱血乳頭はFoster Kennedy症候群とよばれる。嗅窩髄膜腫が典型的である。視神経萎縮がない場合も数%の割合で鬱血乳頭に顕著な左右差が認められることがある。特に偽脳腫瘍では左右非対称性の例が少なくない。 偽乳頭浮腫(pseudopapilledema)は初期鬱血乳頭と類似する点が多い。これはドルーゼンや小乳頭などの先天異常でみられる。
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鬱血乳頭
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視神経乳頭が突出、乳頭辺縁が不鮮明となる。乳頭周辺に網膜出血を認めることがある。
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