脳脊髄液の採取
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/28 06:51 UTC 版)
脳脊髄液採取法には腰椎穿刺法、後頭下穿刺法、脳室穿刺法などがあるが、一般的に行われるのは腰椎穿刺法である。腰椎穿刺法とは、腰椎椎間腔より脊柱管に穿刺針を刺入してそこから脳脊髄液を取り出すという方法である。史上初めての腰椎穿刺は、1891年にハインリッヒ・イレネウス・クインケが結核性髄膜炎の患者に対して、頭蓋内圧を下げるために行ったとされる(この行為は非常に危険なので現在では行われない。理由は後述)。 穿刺部位はヤコビ線(左右の腸骨稜の最高点を結んだ線。通常L4の棘突起上を通過する。)を目安にして決定する。通常脊髄の下端はL1~L2高位にあるため、それよりも高位から穿刺すると脊髄損傷のリスクがある。従って穿刺部位は、L4-5、L3-4、あるいはL5-S1が選択されるのが一般的である。腰椎穿刺手技に伴い起こりうる合併症としては、馬尾神経の損傷、感染、出血、低髄液圧症等が挙げられる。腰椎穿刺検査の禁忌としては、 頭蓋内に脳腫瘍や脳出血などの占拠性病変があり頭蓋内圧が亢進しているとき。この場合、経テントヘルニアや小脳ヘルニアなどの脳ヘルニアを起こして最悪の場合患者が死亡するリスクがある。従って事前に頭部CTやMRIで頭蓋内圧亢進の原因となる病態がないかどうかを確認したり、あるいは眼底検査で鬱血乳頭(=頭蓋内圧亢進所見)がないかを確認しておく必要がある。 穿刺部位に感染症がある場合、 出血傾向が強い場合、 穿刺部位に脊髄血管奇形が存在する場合、 等が挙げられる。なお成人は約150mlの髄液を有しているが新生児では30~60ml、小児は平均で90ml、思春期はで100mlまでと乳児や小児では成人よりも髄液が少ない。成人では分析のために約10~12mlほどの髄液採取が可能であるが新生児や乳児では3~5mlほどの採取が推奨される。 イヌでは主に後頭下穿刺が用いられる。
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