脳脊髄液の異常
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/28 06:51 UTC 版)
脳脊髄液の異常として臨床で最初に見つかるのは、頭蓋内圧の上昇である。決まった体積しか入らない頭蓋内に、ないはずのものが新たに加わると、脳脊髄液に高い圧力がかかり、同時に脳の実質も圧迫されて、頭痛、嘔吐、痙攣、徐脈、精神症状、視神経乳頭の浮腫・鬱血、外転神経の麻痺などの所見を呈する。頭蓋内の脳脊髄液にかかった圧力(脳実質にも同じ圧力がかかる)を頭蓋内圧または脳圧と言い、脳圧が上がることを脳圧亢進などと言う。正常の脳圧は60〜150 mmH2O程度(1 mmH2Oはおおむね1 kg/m2程度)だが、200 mmH2O程度、あるいはそれ以上に上がることがある。 脳圧亢進の原因として、脳脊髄液が頭蓋内にたまることを挙げられる。そのうちもっとも代表的なものが水頭症である。これは脳室にたまった脳脊髄液が脳の実質を周りに向かって圧迫する疾患であり、頭蓋骨が癒合しきっていない乳幼児に発症すると頭が非常に大きくなることがある。モンロー孔など、脳室系の狭くなっている部分は何らかの原因で閉塞しやすく、中でも中脳水道は狭い上に細長く伸びているので、閉塞することが多い。閉塞以外にも、頭蓋内の炎症すなわち脳炎や髄膜炎によって脳脊髄液が異常に多く産生されること、あるいはクモ膜顆粒からの吸収が妨げられることでも脳脊髄液はたまり、脳圧を上げる。 頭蓋内の出血によって脳圧が上がることもある。これは血液の体積によるほかに、血栓ができたり、脳脊髄液の産生が増えることにもよる。原因となる疾患は頭部外傷、クモ膜下出血、脳出血、脳動脈瘤破裂、脳動静脈奇形、血管炎などがある。 脳の実質が増殖すること、すなわち脳腫瘍でも脳圧は上がる。そのほか、脳梗塞、肝性脳症など様々な原因で脳圧は上がりうる。 脳圧が高いことは以上のような疾患を示唆するが、逆に脳圧が低いと頭痛を起こす。これは脱水、髄液漏といった病的な原因のほか、後述の腰椎穿刺によって脳脊髄液を採りすぎたときに起こることがある。
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