高温式ヴァルター・ロケットモーター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/07 05:29 UTC 版)
「ヴァルター機関」の記事における「高温式ヴァルター・ロケットモーター」の解説
触媒 : なし 燃料 : C液=メタノール (57%) +水和ヒドラジン (30%) +水 (13%) +シアン化銅カリウム (0.6g/l) 水噴射 : なし(燃料に混合) 反応ガス温度 : 1,900℃ 反応生成物 : 水、二酸化炭素、窒素 主用途 : 飛行機用ロケット(推力制御可能)Me163、秋水、誘導ミサイルHs293 第二次世界大戦末期に使用された局地防空戦闘機メッサーシュミット Me163B型には、高温式ヴァルター機関であるHWK 109-509 (HWK-R2-211) ロケットモーターが装備されていた。ロケットモーター本体には燃焼室1個があり、この燃焼室内でT液(80%過酸化水素)とC液(メタノール+ヒドラジン系燃料)が混合されると、直ちに爆発的な燃焼反応が発生し、(自己着火性推進剤)推力となる。 作動中、タンクから出たT液の大部分は送液ポンプにより燃焼室へと送られるが、その一部は別系統の配管を通じて蒸気発生器に送られる。蒸気発生器内にある触媒(過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、水酸化ナトリウムなどをセメントで練り固めたブロック)と反応して、T液は酸素と水蒸気に分解され、発生した水蒸気により蒸気タービンを作動させる。タービン軸の両端には送液ポンプがあり、T液とC液はあらかじめ一定の割合で燃焼室へ圧送されるように調整されていた。 なお、蒸気発生系には別にバッテリーで作動する電動ポンプがあり、始動時はこの電動ポンプを使ってT液を蒸気発生器に送るようになっていた。 また、ロケットモーター終端にある燃焼室にはT液とC液を噴射する12本の噴射弁が配置されていた。この噴射弁は、2本・6本・12本の3パターンの噴射によって推力を3段階に調整できるようになっていた。 メッサーシュミットMe163Bは、最大速度960km/h、高度1万mまで3分で上昇するという、当時としては画期的な性能を示した。エンジン単体の質量は150kg、最大推力1,500kg/hrにおける燃料消費量は8.5kg/sec、ロケット噴射時間は6分であった。 ヴァルター・ロケット技術は、当時、軍事同盟を結んでいた関係で日本にももたらされた。この時の概略資料を基に特呂二号薬液ロケットが開発されるとともに、B-29爆撃機迎撃用にロケット戦闘機秋水が試作された。開発中の地対空ミサイル奮龍の液体燃料ロケットエンジンとしても予定されていた。
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