高リスク播種幼児に対する高用量メソトレキセート
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/25 07:27 UTC 版)
「髄芽腫」の記事における「高リスク播種幼児に対する高用量メソトレキセート」の解説
アメリカのニューヨーク大学からの2004年の報告である。 Chi SN, Gardner SL, Levy AS, et al: Feasibility and response to induction chemotherapy intensified with high-dose methotrexate for young children with newly diagnosed high-risk disseminated medulloblastoma. J Clin Oncol 22:4881-4887, 2004 原文(全文を無料で入手できる) http://www.jco.org/cgi/content/abstract/22/24/4881 1997年1月から2003年5月までに、21人の高リスク播種髄芽腫患者が登録された。できる限り摘出した後、患者は5サイクルのビンクリスチン(3サイクル。1サイクルあたり0.05mg/kg/wkx3)、シスプラチン(1サイクルあたり3.5mg/kg)、エトポシド(1サイクルあたり4mg/kg/d x2)、メスナ併用のシクロホスファミド(1サイクルあたり65mg/kg/d x2)、およびロイコボリン救援があるメソトレキセート(1サイクルあたり400mg/kg)で治療された。導入化学療法に続いて、適格性のある患者は自家幹細胞救援のある骨髄破壊的な1サイクルの大量化学療法を受けた。 この強化レジメンの重要な毒性は、腸炎および感染症であった。登録された21人の患者の中で、17人が寛解(81%)、2人が部分寛解、1人が変化なし、および1人が進行した。3年の無イベントの生存率は、49%(95%の信頼区間、27%から72%)、全生存率は60%(95%の信頼区間、 36%から84%)だった。 髄芽腫患者21名の内訳は、M1(髄液播種)4名、M2(脳室内播種)およびM3(脊髄播種)17名である。また、3歳未満9名、3歳以上6歳未満7名、6歳以上5名である。 導入化学療法の後に、自家幹細胞救援を伴う骨髄破壊的な地固め化学療法(寛解に到達したのち最初に行われる療法で、わずかに残存する腫瘍細胞をさらに減少させて寛解状態をいっそう安定化させる治療法)が行われているが、カルボプラチン、チオテパ、エトポシドの薬剤となっている。導入化学療法終了時に残存腫瘍がない場合はそのまま地固め化学療法に進み、導入化学療法終了時に残存腫瘍がある場合は、セカンドルックオペで摘出後、地固め化学療法に進んでいる。 地固め療法後、6歳以上、および導入化学療法終了時において残存腫瘍がある患者は局所ブーストのある23.4Gyの全脳全脊髄照射を行い、それ以外は原則照射はしていない。 この報告は、M2およびM3という転移の存在、そして3歳未満というとても治しにくい患者が大半を占めているにも関わらず、原則放射線を使わないで、3年無イベント生存率49%という非常に優秀な成績を収めていることが注目される。また、導入レジメンで81%の寛解を導くことが可能になっている。日本では、3歳未満で播種がある場合には、生存率は10%台と思われる。なお、観察期間が3年と短いが、髄芽腫は一般にコリン法というルールの適用があり、診断時年齢+9か月の間再発しなければ治癒したものとみなされるので、本報告でその期間無進行の患児は治癒したものと一応考えてよいことになる。 問題点としては、6歳以上では照射をするが、全化学療法終了後に照射するため、照射時期が遅れることで、そのため、照射の効果が薄れるのではないかということ、そして他方で照射線量は23.4Gyと比較的高めになっていることである。照射対象年齢、照射線量と照射時期については、晩期障害と治療効果のバランスから検証の余地がある。
※この「高リスク播種幼児に対する高用量メソトレキセート」の解説は、「髄芽腫」の解説の一部です。
「高リスク播種幼児に対する高用量メソトレキセート」を含む「髄芽腫」の記事については、「髄芽腫」の概要を参照ください。
- 高リスク播種幼児に対する高用量メソトレキセートのページへのリンク