騎手が調教師をパワハラで提訴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 09:38 UTC 版)
「2021年の日本競馬」の記事における「騎手が調教師をパワハラで提訴」の解説
JRA所属騎手の大塚海渡(美浦)は1月12日、所属厩舎の調教師木村哲也から度重なる暴言や暴行のパワーハラスメントを受け、精神的苦痛を負ったとして損害賠償請求訴訟を水戸地裁土浦支部に提起したことを明らかにした。大塚は木村から頭部を殴打されるなどの暴行を継続的に受けていたといい、うち2件については茨城県警稲敷署に被害届を提出している。1月28日に大塚が弁護士を通じて開示した訴状では、2020年1月の落馬負傷による療養中に複数回自殺を図ったことや、うつ病の診断を受けていたことが記されていたという。 この件について、木村は1月13日に書面にて「競馬ファンやJRA等の競馬関係者に多大なるご迷惑・ご心配をお掛けして申し訳ありません」とした上で、「当該事案についてはコメントを差し控える」とした。 1月20日に第1回口頭弁論が同支部で行われ、木村は出廷しなかったものの請求棄却を求めた。2月24日に行われた弁論準備手続きで、原告側弁護士は2月19日に木村が書類送検されたことを明かしたほか「被告側が前回提出した答弁書に対し、15個の証拠を提出して再反論した」と説明した。4月9日に行われた弁論準備手続きでは、被告側弁護士が裁判所に再反論書類を2通提出。パワハラや暴力はないとしたほか、大塚が精神的苦痛を受けたことに因果関係はないとし、2020年1月の落馬事故に起因していると主張。大塚の騎乗技術が未熟だったことも指摘、落馬した際のJRAのパトロールフィルムも証拠として提出し、責任はないとした。5月28日に行われた弁論準備手続きでは被告側の「礼儀やあいさつがなっておらず、馬主からもクレームがあった」という主張に対し、原告側が「無礼な態度など聞いたことがない」という複数の調教師を含む関係者の証言を証拠としてまとめた陳述書を提出。被告側は従来の「指導である」との主張を貫いており、原告側弁護士は裁判所から和解を求められる可能性もあると示唆したうえで、「判決を目指します」とした。原告側弁護士は、6月30日付で土浦区検察庁が木村を暴行の罪で略式起訴(内容:2019年12月11日に大塚が書いた祝儀袋の字が汚いと怒鳴った木村が大塚の頭を叩いた)したことを明らかにしたうえで、裁判所から和解を求められても示談には応じず、徹底抗戦する姿勢を示した。土浦簡易裁判所は7月12日付で、木村に対し罰金10万円の略式命令を出した。木村は正式裁判を提起せず罰金を納付し、罰金刑が確定した。JRAの調教師が暴行罪で刑事処分されるのは初めて。 これを受け、JRAは調教師として重大な非行があったとして、木村を7月29日から裁定委員会の議定があるまで調教停止とする処分を発表。これに伴い、木村厩舎に所属していた競走馬67頭は岩戸孝樹厩舎へ転厩となった。転厩馬にはGI優勝馬のステルヴィオも含まれている。8月4日に第1回裁定委員会が開かれ、その後木村に弁明の機会を与えたが指定期日までに弁明書は提出されず、8月18日に開かれた第2回裁定委員会で「7月29日から10月31日までの調教停止」とする処分が決定された。 一方、民事訴訟は10月8日に、木村がこれまでの暴言及び暴行行為について大塚へ謝罪するとともに、解決金として80万円を支払うことで和解が成立。これを受け、大塚も一切の請求を放棄した。なお、和解金は世間から暴言や暴行をなくす活動に尽力している機関・団体へ全額寄付する意向を大塚が示した。 大塚は1月21日付で、木村厩舎からフリーに所属変更することがJRAより発表された。
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