駒の損得
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 09:29 UTC 版)
詳細は「大駒・小駒」を参照 将棋の駒は動けるマスに違いがあることから、それぞれ価値が異なる。玉将(王将)はゲームの勝利条件となる最終目標の駒であるから、当然最高の価値を持つ。その他の駒の価値は局面によって変わってくるが、おおむね価値のある順に飛角金銀桂香歩となる。このうち、特に価値の大きい飛車と角行を大駒といい、大駒と比べて価値の小さい金将・銀将・桂馬・香車・歩兵を小駒という。 ただで相手の駒を手に入れたり、自分の価値の低い駒と相手の価値の高い駒を交換したりすれば、局面を有利にできることが多い。このようにして、駒のやりとりで自分の戦力を上げたり相手の戦力を下げたりすることを駒得(こまどく)という。反対に相手に駒得をされることを駒損(こまぞん)という。駒得・駒損は形勢が有利か不利かを判断する上で、もっとも基本的な要素となる。特に相手の玉将を詰めるという目標がまだ見えていない序盤から中盤は、基本的に駒得を目指していくことになる。 自分の大駒1枚と相手の小駒2枚(または大駒と小駒1枚ずつ)の交換を行うことを、二枚替えという。一般的に二枚替えは小駒2枚を得た側が有利とされることが多く、駒得を図るための基本的な戦略の一つとなっている。例えば、角行を相手に渡したかわりに金将と銀将を手に入れた場合、金銀2枚を得たメリットが角行を失ったデメリットを上回る。もっとも、例えば飛車1枚と桂馬+香車の2枚との交換ならば一般に飛車のほうが価値は大きく、必ずしも小駒2枚が駒得となるわけではない。 この際、駒得・駒損の目安として、各駒の価値を点数化した表を用いて点数計算をする方法がある(なお、ここでいう点数計算は持将棋となった場合の判定のための点数計算とは無関係であるため注意)。コンピュータ将棋のソフトウェア(ソフト)では、各駒の点数を内部で計算したものを局面評価のためのベースとすることがある。また、駒の点数計算による駒得・駒損の評価は、もっとも基本的な価値判断の方法としてプロ棋士が執筆した将棋の入門書などでも解説されることが多い。ここでは、代表的なコンピュータ将棋ソフトとして世界コンピュータ将棋選手権で複数回の優勝経験があるPonanzaとBonanza、代表的な棋士として永世名人の資格保持者である羽生善治と谷川浩司の4者がつけた評価値のうち、それぞれ最新のものを掲載する。 代表的なソフト・棋士による将棋の駒の評価駒PonanzaBonanza羽生善治谷川浩司歩兵0.9 1.2 1 1 香車3.2 3.2 3 3 桂馬4.1 3.6 4 4 銀将5.2 5.1 5 5 金将5.5 6.2 6 6 角行9.3 7.9 9 8 飛車10.6 8.9 10 10 と金5.9 7.4 8 7 成香5.5 6.8 6 6 成桂5.6 7.1 6 6 成銀5.7 6.9 6 6 竜馬10.8 11.5 13 10 竜王15.2 13.2 15 12 例えば羽生方式や谷川方式に沿って計算する場合、自分の飛車を相手の金将・銀将の2枚と交換(二枚替え)すると、自分は6点+5点-10点=1点、相手は10点-(6点+5点)=-1点で、差し引き2点自分が得したことになる。また、自分の成香(香車の成り駒)と相手の金将を交換すると、自分は6点-6点=0点、相手は3点-6点=-3点で、差し引き3点だけ自分が得したことになる。 なお、上記における駒の価値はあくまでも目安であり、状況に応じて常に変化する。昇格(成り)に関しても、全ての駒において形式的な点数が上がってはいるが、局面によっては実質的に生駒の価値のほうが大きいとされる場合もある。特に利きの変化においてデメリットを伴う銀将(→成銀)・桂馬(→成桂)・香車(→成香)に関しては、昇格の判断が難しいとされる。
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