非常用ディーゼル発電機の増設
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 07:31 UTC 版)
「福島第一原子力発電所」の記事における「非常用ディーゼル発電機の増設」の解説
本発電所の原子炉が6機体制となった際、非常用ディーゼル発電機は複数の炉で共用するものを含めて合計10台設置されていた。これらは各種注水系・ポンプ等に代表される「工学的安全施設」の電源として機能するため、岩着した構造物に設置することとされ、また、数千kWの出力を持つ非常用発電機は重量物でありそれ自体の振動もあるため、1〜5号機ではタービン建屋の地下階に設置されていた。その他の理由として、GEが1号機の建設をターンキーにて請け負った際、米本国でハリケーンによる暴風で倒木などが舞い上がり、建屋に突き刺さることを懸念して地下に配置した設計をそのまま導入したという事情もあるとされる。 また、これらが各プラントに付属する設備として分散配置されているが、建設時より1994年までは、専用の非常用発電機が1台しか配置されておらず、2台目の非常用発電機は隣接するプラントと共用となっている場合があり、福島原発事故独立検証委員会は2号機の2台目が1号機と共用されている例を挙げている他、このような関係は上記3号機の設計で述べたように3・4号機でも見られた。 NUREG-1150が出された後の1992年、ブルーノ・ペロードも助言の際、非常用ディーゼル発電機の増設に言及した。 このような交流電源喪失への対応策の強化として1994年、外部電源喪失時の起動失敗の確率を低減するため、東京電力はアクシデントマネジメント策と呼応して3台の増設を申請し、それぞれ2号機、4号機、6号機に増設する形となった(下記に表で一覧化)。この際、増設したディーゼル発電機は原子炉建屋やタービン建屋とは別棟(共用プール建屋)に収納された。なお、既存の10台は水冷式でディーゼル発電機の冷却を海水を取水して実施、そのためのポンプが海岸沿いに設置された。増設された3台は空冷式であった。空冷式としたのは、海水ポンプが機能を喪失しても非常用発電機として運転を継続できるように考慮したためであった。 この内6号機の増設非常用発電機は1階の配置だが、他の増設非常用発電機に比べても高い位置に設置された。この理由は鈴木篤之によると「たまたまスペースが無かったから」で、それに対しインタビュアーの田原総一朗が「高いところへ置くと決めると、日本のすべての電力会社がそうしなければならなくなるけれども、たまたま六号機は、場所がなかったから高いところに設置することができた、と」と述べ、鈴木は同意している。 また、1〜2、3〜4号機にはシビアアクシデント対策として電源融通用のケーブルが敷設されたが、それらが繋がる金属閉鎖配電盤は浸水対策を考慮していなかった。 なお、1978年6月、地震により2号機用の送電線碍子が破損し送電を停止したことがあった。舘野淳は1999年に初出した著書でこれを取り上げ、碍子は材質的に破壊されやすいため所外からの交流電源喪失の要因となり「大事故に繋がる恐れがある」と警告している。
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