銀河3号による軌道投入成功とICBM関連技術との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/22 01:38 UTC 版)
「光明星3号2号機」の記事における「銀河3号による軌道投入成功とICBM関連技術との関係」の解説
北朝鮮が今回の打ち上げでブースター3段目の切り離しに成功し、人工衛星を予め設定した軌道に投入する技術を確保したことは、予め設定した地点にICBM(大陸間弾道ミサイル)の弾頭を落下させる技術と直結している。国際連合安全保障理事会が平和利用か否かに関わらず北朝鮮のロケットの発射を禁止しているのはこの事情が背景にある。ただし、ICBMは人工衛星とは異なり、一度宇宙に上がった弾頭が再び大気圏に再突入しなければならない。再突入の際、ICBMは最大でマッハ20の速度に達し、表面が6000℃から7000℃まで加熱される。この高温高圧に耐えるノーズコーンは、衛星打ち上げ用のペイロードフェアリングとは全く異なり、より高度な技術が必要となる。 発射直後の段階では、複数の当局者・識者・報道機関が、北朝鮮がこの発射で弾道ミサイル技術を高度に進展させ、ICBM技術が完成に近づきつつある事を認めているが、未だ完成されたICBM技術やICBMに搭載される核弾頭の保有には至っていない事を分析している。 例えば、日本の柳沢協二元内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)は、北朝鮮が技術的に保有する事ができる現時点の弾道ミサイルの推力と、北朝鮮が入手し得るパキスタンの核弾頭の小型化技術(1トン程度)を推測すると、未だアメリカに核弾頭を搭載した弾道ミサイルを到達させる事はできないと分析している。また財団法人未来工学研究所の稗田浩雄理事は、北朝鮮がICBM用のノーズコーンの技術を確保する事について、弾道ミサイル技術で協力し得るイランがこの技術を保有していないため、北朝鮮が現時点でこの技術を確保する事は難しいと分析している。発射同日の12月12日付のニューヨーク・タイムズは、北朝鮮の弾道ミサイル技術に対するアメリカ政府高官の「アメリカへの脅威ではない」とする評価と、ロッキード・マーチン社関係者の「赤ん坊の衛星打ち上げ機」とする評価を掲載している。韓国国防部は12月13日時点で、北朝鮮がこの発射成功により射程1万kmの弾道ミサイル技術を確保しつつあると分析している。 松浦晋也は北朝鮮が太陽同期軌道への人工衛星の投入に成功したことを「予想より高度だった」としながらも、ICBM技術の確保については、大気圏再突入技術の確保の観点から「完成にはほど遠い」としている。 発射直前には、「国籍の不明のミサイル専門家が極秘に訪朝して弾道ミサイルに関する技術指導を行っていた事」と、「2012年7月にウクライナで北朝鮮のスパイ2名が弾道ミサイルの燃料供給装置や液体燃料エンジン関連の極秘文書を入手しようとして逮捕され、その後懲役8年を宣告されていたこと」が報道されていた。
※この「銀河3号による軌道投入成功とICBM関連技術との関係」の解説は、「光明星3号2号機」の解説の一部です。
「銀河3号による軌道投入成功とICBM関連技術との関係」を含む「光明星3号2号機」の記事については、「光明星3号2号機」の概要を参照ください。
- 銀河3号による軌道投入成功とICBM関連技術との関係のページへのリンク