運動の歴史的意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 08:18 UTC 版)
では、チャーティスト運動の意義はなんだったのであろうか。 労働者の階級団結を強めてその政治的影響力を飛躍的に高めたこと、集権的組織の形成を促したこと、選挙権の拡大を要求する国民的世論を拡大させたことに運動の意義がある。これは、第二次選挙法改正(1867)(英語版)、第三次選挙法改正(1884)(英語版)を促して戸主参政権の導入の下地をなすものとなった。 また、労働組合の存在と活動を議会に承認させるという組合指導者たちの野心は、彼らをチャーティスト運動と同様の道筋へと導いていった。そう、かつてチャーティストが呼びかけていた政治の改革、熟練労働者に対する選挙権の拡大要求へと収斂していったのである。チャーティスト運動の経験は、労働時間を短縮したり法定労働時間を設定するにはまず何が必要なのかを示唆し、目標実現のための具体的な方向性を改革連盟指導者たちに示したとも言えるであろう。 さらに、マルクスの共産主義思想の形成に一役果たす一方で、自由党や保守党に働きかけ労働者保護のための労働立法・社会立法の制定を盛んに促す自由・労働主義(英語版)の時代が終わったときに、議会主義的活動に根拠を置くイギリス社会主義フェビアン主義を誕生させ、それがやがて労働党へとつながる道筋になったことも重要である。 おわりに、チャーティスト運動の誕生・発展・衰退の模様を見てきた。そこからは、フランス革命の影響を受けたチャーティストが当時の議会体制への労働者の不満を吸収して出発したこと、主目的である「人権」の拡大と「人民主権」の確立を「人民憲章」の成立で成し遂げようと活動していたこと、政治改革だけでなく社会改良にまで踏み込んで運動を展開していったという「挑戦」の姿が見えている。確かにチャーティスト運動は挫折を余儀なくされたが、この運動は全く無意味であるわけではない。当時の労働者階級の政治意識を高め、後に選挙法改正と労働者保護の必要性を社会の上層部の人々に意識させる契機になったのではないか。チャーティズムの歴史的成果は高く評価されている。
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