補償金の分担
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 05:28 UTC 版)
「信楽高原鐵道列車衝突事故」の記事における「補償金の分担」の解説
信楽高原鐵道は3億円の賠償保険契約(車両損害保険を含む)を締結していたが、保険金の額はイベント開催で乗客が増加することが見込まれたにも関わらず増額されなかった。補償費用を信楽高原鐵道単体で支弁することが資金面からほぼ不可能だったことから、JR西日本・信楽高原鐵道・信楽町・滋賀県の四者で協定を結んだ。JR西日本・信楽高原鐵道は、犠牲者補償にかかる費用と事故復旧にかかる費用とを協力して立て替えることにし、信楽高原鐵道に対しJR西日本は社員の応援、当面の費用の立替を行うことに合意した。また信楽町・滋賀県は職員の応援の他、信楽高原鐵道への資金面の応援を文面にじませた上で応援を行うことにした。この協定により犠牲者の補償に関しては信楽高原鐵道・JR西日本が双方折半して支払いを行うこととし、責任割合が確定した時点で事故復旧等費用とともに清算することとなった。 民事裁判の終結を受け補償金の総額は確定したものの、その負担割合についてはJR西日本・信楽高原鐵道双方で折り合いがつかなかった。2004年4月19日、JR西日本は大津簡易裁判所で調停を申し立て、合計17回、調停の場を持ったが調停不成立に終わった。それを受け、2008年(平成20年)6月14日、JR西日本は信楽高原鐵道と、同鉄道に出資している滋賀県や甲賀市に対し、先に四者で結んだ協定を根拠として約25億3000万円の支払いを求め大阪地裁に訴訟を提起した。その内容は、被害者や遺族への補償に関係した費用等約55億7000万円のうち、JR西日本の責任割合を1割とし、JR西日本が過分に支払った額を返還するよう求めたものだった。裁判においてJR西日本は、事故の責任の大半が信楽高原鐵道側にあるためと主張してきた。この訴訟を受けて信楽高原鐡道の北川啓一顧問らはJR西日本の主張に対し、これまでの裁判でJR西日本にも責任があると指摘し、その主張は責任を認めていないも同然であると非難、滋賀県の嘉田由紀子知事は、「被災者補償も(JR西日本と信楽高原鐵道の)折半負担で終了しており、さらに負担することは県民の理解が得られない」とコメントした。 2011年4月27日、大阪地裁は過失割合についてJR西日本側が3割、信楽高原鐡道が7割とし、費用を精査した上でJR西日本に信楽高原鐡道への約11億1400万円の賠償請求権を認める一方で、JR西日本と滋賀県・甲賀市との間には損害担保契約が締結されていなかったとして、滋賀県や甲賀市に対する請求を棄却する判決を言い渡した。判決ではJR西日本側の過失を3割としたことについて、信楽高原鐡道の見切り発車を最大の過失とした上で、訴訟の争点となったJR西日本が設置した方向優先てこについて、現場を混乱に陥る原因であると改めて指摘した。またJR西日本の運転士については小野谷信号所に待機しているはずの対向列車がいないことを認識していたにもかかわらず、小野谷信号場下り出発信号に従って出発した点につき改めて注意義務違反を認定した。その他、JR西日本の信号システムに関する注意義務違反、教育・訓練の義務違反、報告義務及び報告体制確立義務違反も同時に認定している。なおJR西日本に請求権を認めた約11億1400万円については、JR西日本が請求根拠とした約55億7000万円のうち人件費などを控除した約50億円のうち、JR西日本が過分に負担した費用部分である。 この判決を受け訴えた側のJR西日本は控訴しない方針を示し、また信楽高原鐡道も2011年5月10日、臨時取締役会と臨時株主総会を開き控訴しない方針を決定・公表。判決は確定した。同時にJR西日本は、裁判で認められた信楽高原鐡道への賠償請求権を放棄することを表明した。
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