自然科学と科学技術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 06:05 UTC 版)
「自然科学」および「科学技術」も参照 『世界大百科事典 第2版』では「科学とは今日通常は自然科学を指す。人文科学,社会科学という呼び方もある」となっている。(「17世紀以降ヨーロッパで近代科学が展開されると、それ以前の伝統的自然哲学は、実験的・実証的根拠をもたない思弁であるとして否定されるようになり、自然哲学ということばもあまり使われなくなった」とも言う。) 日本では物理学、化学、生物学などを「理学」と呼んでいるが、もともと英語に「理学」に相当する概念は無い。第一次世界大戦と第二次世界大戦では、科学者は国家によって動員され、化学兵器や核兵器の開発に加担し、戦争の帰趨に影響を与え、多くの人々の命を奪ってしまう悲惨な結果を生んでしまった。アインシュタインは「科学技術の進歩というのは、病的犯罪者の手の中にある斧のようなものだ」と述べた。特に科学者が加担し開発した原爆によって第二次世界大戦中に数十万人が命を落とした、という事実は科学界に重くのしかかり、戦後に原爆開発の経緯が次第に明らかになるにつれ、それに加担した科学者の責任を問う声が、科学界(科学者集団)の中からも、その外からも上がった。また冷戦時代にも、核戦争によって人類が滅亡しかねない状況が何度も起き、やはり科学者の活動の行為責任・社会的責任についての問いは提起されつづけ、(たとえ政治家、国家権力者からそそのかされたり、資金を提供されたり、職を提供されても)研究に着手する前に、それがどのような(悲惨な)結果を人類にもたらすか慎重に検討し、悲惨な結果をもたらす可能性が高い研究はあらかじめ絶対に止めるべきだ、科学に携わる者には責任がある、研究をするということにも行為責任がある、結果として多くの人が死んだらそれはそれを研究してしまった者の責任だ、悲惨な結果を生むと予測できなかった、などという嘘や言い訳は通用しない、あらかじめもっと倫理をふまえた上で研究対象を選ぶべきだ、などといった指摘も科学者からされるようになった。日本ではこのような議論を踏まえ、1980年に科学者達が「科学者憲章」を発表した。 今日では、科学は社会から遊離した純粋な知的営為として位置づけることは困難となっている。科学的、政治的、経済的、文化的な価値がどのように科学の研究と技術革新に影響するのか、また科学やテクノロジーがどのように社会・政治・経済・文化に影響を与えているのか、それら相互の関係を研究する領域が科学技術社会論であり、科学者も参加して研究が行われている。
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