だいにのせい【第二の性】
第二の性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/18 09:52 UTC 版)

『第二の性』(だいにのせい、仏語: Le Deuxième Sexe)は、1949年6月に刊行された、フランスの実存主義者シモーヌ・ド・ボーヴォワールの著作(ISBN:0-679-72451-6 、OCLC:20905133)。
女性への待遇について歴史を通して考察した作品であり、フェミニズムの代表的作品とされることも多い。
女性ともう一方の性
ボーヴォワールは本著中で、女性とは、歴史的に「もう一方の」性、つまり「通常の」男性から逸脱した性として定義されてきたと主張している[1]。 ボーヴォワールは、自身について書いた後に『第二の性』に取り組んだ。彼女が最初に書いたのは、自身が女性であることだったが、女性について定義する必要を感じて本著を執筆した。
ジェンダーとセックス
ボーヴォワールの「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」という理論[2]は、「セックス」と「ジェンダー」の相違を示しているとジュディス・バトラーは指摘している。バトラーによれば、「ジェンダー」とは「徐々に獲得していった」アイデンティティの一面だと示唆している。また、本著はジェンダーに対する根本的な理解を潜在的にもたらしたのだという[3]。
翻訳の問題
トリル・モイの指摘によれば、現在の『第二の性』の英訳には誤りがあるという[4]。 哲学の概念についての微妙な語彙がしばしば誤訳され、本文も大幅に削られている[5]。
英語の出版権を持つのはAlfred A. Knopf, Incである。 モイによれば、出版者は英語の文章に問題があることに気づいていたが、彼らは長く、新しく翻訳する必要はないと主張していたという[4]。 著者ボーヴォワール自身も1985年のインタビューで、新しい翻訳を次のようにはっきりと希望している。「私は『第二の性』の新しい翻訳、つまりもっとずっと正確で、妥協のない正確な翻訳を切望している[6]。
出版社はその後、これらの要望を受け入れて新しい翻訳を依頼。2009年にコンスタンス・ボーデとシーラ・マロヴァニー=シュヴァリエ[7]による新英訳がなされる。
訴訟
1950年、訴訟の対象となった。ボーヴォワールは同著中で、ベル・エポック期の代表的な美女で知られ、当時大変に著名なバレエダンサー・クルチザンヌで数々のゴシップの対象となっていたクレオ・ド・メロードを取り上げた上で「貴族を騙った高級娼婦」と記述した。クレオは貴族の末裔である、と称していたことに異議を唱えた内容である。それに対してクレオは、名誉毀損として裁判を起こした。
裁判はクレオの勝訴という結果に終わり、ボーヴォワールには賠償が命じられた。ただし、この賠償金は「フラン・サンボリック」といって額面のみで実際には支払わなくてもよい性質のものであった。
実際のクレオについて、本当に貴族の出であったのかは謎のままである。
邦訳
脚注
- ^ シモーヌ・ド・ボーヴォワール、『 Force of Circumstances 』。リチャード・ハワード英訳。(ペンギン社、1968年)
- ^ シモーヌ・ド・ボーヴォワール『第二の性』(Vintage Books, 1973年), 301ページ
- ^ ジュディス・バトラー, 『シモーヌ・ド・ボーヴォワールの《第二の性》に見るセックスとジェンダー』、Yale French Studies , No. 72 (1986年), 35 - 49ページ.
- ^ a b トリル・モイ, 'While we wait: The English translation of The Second Sex' in Signs: Journal of Women in Culture and Society vol. 27, no 4 (2002年), 1005–1035ページ.
- ^ マーガレット・シモンズ, 'The Silencing of Simone de Beauvoir: Guess What's Missing from The Second Sex' in Beauvoir and The Second Sex (1999年), 61-71ページ
- ^ マーガレット・シモンズ, 'Beauvoir Interview (1985年)' in Beauvoir and The Second Sex (1999年), 93-94ページ
- ^ コンスタンス・ボーデ、シーラ・マロヴァニー=シュヴァリエ訳, 'The Second Sex’, Vintage books, 2009年
参照
外部リンク
- 'The Second Sex' by Simone de Beauvoir (Free English Translation of a small part of the book のページが Marxists Internet Archive に保存されたもの)
第二の性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 06:42 UTC 版)
第二の性の身体的特徴男性女性陰茎子宮陰茎子宮アルファY N Y / N Y ベータY N N Y オメガY Y N Y オメガバースにおいて、キャラクターは男女といった性別のうえに「アルファ」(英語: Alpha)、「ベータ」(英語: Beta)、「オメガ」(英語: Omega)の3つに分類される「第二の性」(英語: secondary gender)を持つ。オメガバースが「A/B/O」とも呼ばれるのはこのためである。オメガバースにおいては性別が6つ存在することになるが、多くの作品ではアルファの男性とオメガの男性の関係が描かれている。 アルファはフィクション中のヒエラルキーのなかで最高位に位置づけられ、身体的な性に関わらず他者を妊娠させることが出来る。アルファはさかり(英語版)のような習性や、亀頭球付きの陰茎を持つ。2014は、アルファであれば女性であってもこのような陰茎を持つとしているが、阿部 & 石橋 (2020)は、アルファの女性が陰茎を持っているかは作品によって異なるとしている。 ベータは一般的な人間であり、ヒエラルキーのなかではアルファに次ぐ。フィクションにおいて、ベータは一般的にはアルファやオメガとペアにされることはなく、物語の筋から排除されることが多いが、なかにはアルファとオメガの「仲裁人」といったキャラクターとして登場するものもある。 オメガはフィクション中のヒエラルキーのなかで最下層に位置づけられ、性別に関わらず妊娠することが可能である。オメガは発情期を持っており、アルファを発情させるフェロモンを発する。 いくつかの作品においてはアルファとオメガの中間に位置する「デルタ」や「ガンマ」も登場する。
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