研究・評論
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「大衆文化における近親相姦」の記事における「研究・評論」の解説
近親相姦は戦後のカストリ雑誌でも描かれており、戦争直後に流行した軍隊批判を軸として姉弟の近親相姦を描いた作品などがある。また近親相姦は日本の官能小説では普及した題材である。永田守弘による著書である『日本の官能小説』という新書が朝日新聞出版より2015年に出版され、1991年デビューの牧村僚が母と息子の関係を描いた歴史的な官能小説家として引き合いに出されているが、このような母性を扱った作品が描かれた背景には母と息子の関係の濃密化という実際の社会の変化があると永田守弘は指摘している。 少女漫画においても近親相姦は取り上げられやすいテーマであり、1972年(昭和47年)に母子相姦を扱った水野英子『ママに青い花を』などの作品が見出される。石子順造は戦前の宝塚歌劇から引き継いで「男装の麗人」のイメージを純粋培養している少女漫画に母子相姦が描かれたのは象徴的だと述べ、男性でありながら男性でない兄を原イメージとした男装の麗人に恋人を仮託すれば、予感される母である自分にとってもう一つの決定的な愛は息子への愛情であるので、男装の麗人と母子相姦は日本の思春期の少女にとって深く切実な愛のイメージの二相であると指摘している。藤本由香里はレディースコミックにおいては近親相姦も武器となり得るとした上で、母子相姦ではなく娘が父親を誘惑する父子相姦に着目する。娘に誘惑され、それに応じた父親が破滅させられるというレディースコミックに見られる題材は、「近親相姦」が「父権制」への反逆として姿を現した例であるという。 成人向け漫画でも近親相姦は扱われるが、2006年にイースト・プレスより単行本が出版され、2014年に筑摩書房より文庫が出版された、永山薫の著書『エロマンガ・スタディーズ 「快楽装置」としての漫画入門』(文庫版の書名は『増補 エロマンガ・スタディーズ 「快楽装置」としての漫画入門』)では「妹系と近親相姦」という見出しで一章を割いて話題にしている。永山薫は、21世紀初頭の段階ではエロマンガ全体を見ても妹を扱った作品が最も一般的といっていい状態で、母親を扱った作品は目立って多いというほどではなくリアルに描かれることも少ないと書く一方で、文庫版の注ではエロ劇画に類する今の作品では母親をリアルに描くことは一般的としている。兄妹の近親相姦の作品を多数著す成人向け漫画家の三上ミカは、自身が弟に対してブラザーコンプレックスであることが兄と妹という関係性に惹かれる理由の一つになっていると述べている。また、兄妹ゆえに愛情の種類も他のカップルより複雑なはずなので、それを火種にできたら良いと思うとしている。
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