真正細菌のホロ酵素-DNA複合体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 22:22 UTC 版)
「RNAポリメラーゼ」の記事における「真正細菌のホロ酵素-DNA複合体」の解説
ホロ酵素とDNAによって形成される複合体は、転写時の状態であるためRF複合体 (replicative form complex、RFは複製型) と呼ばれる。ダーストらは下図のフォークジャンクションDNAにT. aquaticus のDNAポリメラーゼホロ酵素を結合させた、RF複合体を作成した。このDNAは、-35ボックスを含むほとんどが二本鎖だが、-10ボックス中の非鋳型鎖に-11位から始まる一本鎖の突出部分を持つ。これは開放型複合体における状態を模倣したものである (詳しくは#真正細菌のβサブユニット)。 RF複合体の立体構造から、様々な事実が判明した。ホロ酵素に結合するDNAはσサブユニットがある場所を横切る。大腸菌のプロモーターにおいては、-12位の塩基がσ70因子の領域2.4のGln437およびThr440と相互作用している。T. aquaticus のσAで2つのアミノ酸はGln260とAsn263とに相当する。 Trp256は-10ボックス直前の-12位に非常に近い。T. aquaticus σAのPhe248、Tyr253、Trp256や大腸菌σ70における一部の3 芳香族アミノ酸は高度に保存されている。これらは開放型複合体の-10ボックスの非鋳型鎖に結合することで、プロモーターの融解に関与すると予測される。観察されたTrp256の位置から-11位の塩基対の代わりとなり、融解を促進する可能性が高い。 σの領域2.2と2.3における2つの保存された塩基性アミノ酸(Arg237とLys241)が 静電相互作用で結合していることが観察された。しかし、領域4.2の残基は35ボックスに結合していない。ダーストらは、RF複合体の結晶化の際に、-35ボックスが領域4.2に対する正常な位置から押し出されてしまったと結論付けた。ダーストらは自身の撮影したRF複合体の構造やその他の証拠から以下の仮説を提唱した。DNAの上流で二本鎖DNAが曲がることによって、DNaseⅠの標的部位が生じる。一方、下流領域では二重らせんが融解する。こうして閉鎖型から開放型へと複合体が移行する。開放型複合体でのDNAや各タンパク質の相互作用も立体的に解析された。-10ボックスがβとβ‘サブユニットの間で融解するが、これはβ’舵型構造によって維持される。この構造はβ’サブユニットの表面から隣接するβサブユニットに向けて、また分離した2つのDNA鎖の間隙に突き出す。これによって、DNAの再会合は阻止される。 活性部位には2つのMg+が3つのアスパラギン酸によって支えられる。 非鋳型鎖 -40 -30 -20 -105' GGCCGC|TTGACA|AAAGTGTTAAATTG|TG|C|TATACT 3'3' CCGGCG|AACTGT|TTTCACAATTTAAC|AC|G|A 5' -35ボックス ↑ -10ボックス 拡張した-10ボックス 鋳型鎖図:RF複合体の作成に使用したDNA 少なくとも開放型複合体になった時点で、ホロ酵素には内部に通じる5つの通路がある。NTP取り込み通路は基質であるリボヌクレオチドを触媒活性中心に迎え入れる。RNA出口通路は後の伸長段階で合成したRNA鎖の部分を出すためにある。ほかの3つの通路はDNAが出入りするために使う。下流のDNAは下流DNA用通路から二重らせんのまま活性中心溝に入る。そこでDNAは+3から2本の一本鎖に分かれる。非鋳型鎖は非鋳型鎖用通路(NT通路)を抜けてホロ酵素の表面に沿って進む。一方、鋳型鎖は触媒活性溝を突き進み、鋳型鎖用通路(T通路)から外に出る。2つの一本鎖はホロ酵素の後方にある上流DNAの-11の位置で二重らせんに戻る。
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