相利共生者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/17 14:43 UTC 版)
特定の細菌は、生存に不可欠な密接した空間的相互作用を形成し、これは相利共生と呼ばれる。例えば種間水素移動(interspecies hydrogen transfer)と呼ばれる相互作用では、酪酸やプロピオン酸などの有機酸を消費して水素を生成する嫌気性細菌クラスターと、水素を消費するメタン生成古細菌との間で発生する。この関係性において、水素生成細菌は自身が生成した水素が細胞外に蓄積してしまうため、有機物を周辺環境から吸収し消費することができなくなってしまう。そのため、水素を消費する古細菌と相互作用することによって、成長できる程度に細胞周辺の水素濃度を低く保っている。 土壌では、根圏(根の表面や近接する土壌)に存在する微生物が窒素固定を行い、窒素ガスを窒素化合物に変換する。これは、窒素自体を固定できない多くの植物に、吸収しやすい形の窒素を提供するのに役立っている。他の多くの細菌は、人間や他の生物の共生細菌として発見されている。例えば、正常なヒトにおいて1,000以上の細菌種が腸内細菌として存在しており、それらはの腸は、腸免疫や、葉酸、ビタミンK、ビオチンなどを含むビタミンの合成、糖の乳酸への変換(ラクトバチルスを参照)、複雑な難消化性炭水化物の発酵、など様々なプロセスに寄与している。この腸内細菌叢の存在はまた、潜在的に競合相手の排除などによって病原性細菌の増殖を阻害しており、このような有益な細菌は実際にプロバイオティクス栄養補助食品として市販されている。 一部の共生細菌および古細菌はビタミンB 12(コバラミン)合成に必要な酵素遺伝子を有しており、ほぼ全ての動物は食物連鎖を通してこのような細菌が生産するビタミンの恩恵を受けている。ビタミンB 12は水溶性ビタミンであり、DNA合成や脂肪酸代謝、アミノ酸代謝における補因子として、ヒトのあらゆる細胞の代謝に関与している。ミエリンの合成における役割のため、神経系の正常な機能においても重要である。
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