特別救済手続
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/28 06:32 UTC 版)
人権委員会は、不当な差別、虐待等、差別助長行為等、次に掲げる人権侵害については、一般救済のほか、次に掲げる措置(特別救済)を講ずることができる(擁護法案42条、法案43条)。 不当な差別的取扱い 不当な差別的言動等。不当な差別的言動であって、相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの。性的な言動であって、相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの。 国又は地方公共団体の公権力の行使に当たる職員、社会福祉施設、医療施設その他これらに類する施設を管理する者又はその職員、学校その他これに類する施設を管理する者又はその職員、配偶者、高齢者の同居者などがする、暴行、わいせつな行為、心理的外傷を与える言動などの虐待。 報道機関又は報道機関の報道若しくはその取材の業務に従事する者がする、私生活に関する事実をみだりに報道し、その者の名誉又は生活の平穏を著しく害するなどの人権侵害 前各号に規定する人権侵害に準ずる人権侵害であって、その被害者の置かれている状況等にかんがみ、当該被害者が自らその排除又は被害の回復のための適切な措置を執ることが困難であると認められるもの。 人権委員会は、人権侵害について、調査を行い、又は同項に規定する措置を講ずるに当たっては、報道機関等の報道の自由又は取材の自由その他の表現の自由の保障に十分に配慮するとともに、報道機関等による自主的な解決に向けた取組を尊重しなければならない。 人権委員会は、上記1から3までの人権侵害(不当な差別的取扱い、不当な差別的言動等又は虐待。ただし、後述の労働分野における人権侵害を除く。)又は差別助長行為等について必要な調査をするため、次に掲げる処分(特別調査)を行うことができる(擁護法案44条)。 事件の関係者に対する出頭要求・質問 当該人権侵害等に関係のある文書その他の物件の提出要求 当該人権侵害等が現に行われ、又は行われた疑いがあると認める場所の立入検査 人権委員会は、委員又は事務局の職員に、この処分を行わせることができる。人権委員会の委員又は事務局の職員に立入検査をさせる場合においては、当該委員又は職員に身分を示す証明書を携帯させ、関係者に提示させなければならない。この処分の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。 人権委員会は、特別人権侵害(前節の人権侵害から、後述の労働分野における人権侵害を除いたものをいう。)に係る事件について、調停又は仲裁の申請を受理し、調停委員会又は仲裁委員会を設けて、これに調停又は仲裁を行わせる(擁護法案45条)。人権委員会に、その行う調停及び仲裁に参与させるため、人権調整委員を置き、人権調整委員は、人権委員会が任命する(擁護法案48条1項、2項)。人権調整委員の任期は3年とし、人権調整委員は非常勤とする(擁護法案48条3項、5項)。 人権委員会は、特別人権侵害が現に行われ、又は現に行われたと認める場合において、当該特別人権侵害による被害の救済又は予防のため必要があると認めるときは、当該行為をした者に対し、理由を付して、当該行為の停止等その他被害の救済又は予防に必要な措置を執るべきことを勧告することができる(擁護法案60条)。人権委員会は、この勧告をした場合において、当該勧告を受けた者がこれに従わないときは、その旨及び当該勧告の内容を公表することができる(擁護法案61条)。 人権委員会は、前節の勧告をした場合において、正当な理由がある場合であって、相当と認めるときは、資料を閲覧させ、謄抄本を交付することができ(擁護法案62条)、当該人権侵害に関する請求に係る訴訟に参加することができるなどの訴訟援助を行うことができる(擁護法案63条)。 人権委員会は、差別助長行為等が現に行われ、又は行われたと認めるときは、当該行為をした者に対し、理由を付して、当該行為の停止等を勧告することができる(擁護法案64条)。また、人権委員会は、差別助長行為等をした者に対し、勧告をしたにもかかわらず、その者がこれに従わない場合において、当該不当な差別的取扱いを防止するため必要があると認めるときは、その者に対し、当該行為の停止等を請求する差止め訴訟を提起することができる(擁護法案65条)。
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