準固体電解質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/11 02:08 UTC 版)
潜在的なサーモセル用途として、液体電解質が適していないものも数多くあり、特に電解液の漏れが起こる可能性があるもの、例えば柔軟で着用可能なデバイスがある。準固体電解質の開発に関する最近の研究は、これに対処することを目指している。「準固体状態」という用語は、これらが一般に固体の機械的性質を有する固体(例えば、ポリマー)と液体成分との組み合わせを指し、最初期の研究の焦点であったAgIのようなより脆い無機固体電解質とは異なる。 柔軟性や漏れ防止といった特徴に加え、固体電解質は対流を排除するでセル全体に大きな熱勾配を維持するために有益でる。準固体状態の電解質は、セルロース、48ポリビニルアルコール(PVA)、49寒天、50またはポリ(アクリル酸ナトリウム)ビーズなどの様々な異なるゲル化剤を用いて製造されている。セルロース系ポリマーマトリックスと水溶性レドックス活物質(フェリシアン/フェロシアン化物)が近年開発されている48。固化した電解質を使用する際の主な考慮点は、酸化還元対の物質輸送の制限を避けることである。この観点では、セルロース濃度が高くなるとゲルによって輸送パスがより制限され、出力が減少する(図5)。しかし物質移動と機械的性質の両方を最大にする最適なセルロース濃度(5wt%)では、出力は水溶液系と比較して約20%の減少でおさまり、14mWm-2(0.06Wm-2K-2)を示す。柔軟なポリイミド電極に挟まれ、Auと直列に接続された2つの異なる電解質(フェリシアン/フェロシアン化物および第二鉄/塩化鉄水溶液)がポリビニルアルコールを用いてゲル化された2種類の異なる電池が使用された49。フェリシアン/フェロシアン化物水溶液と第二鉄/第二鉄塩化物対は、反対のゼーベック係数(それぞれ-1.21および1.02mVK-1)を有し、これらを金/クロムで直列に接続することにより、より大きな電位差を生じさせることができる。2つのフェリシアン/フェロシアン化物および2つの第二鉄/塩化鉄ユニットからなる装置を使用して、24μWm-2 K-2の最大出力を生成することができた。電力出力は比較的低いが、この研究は、ゲル電解質が着用可能な用途に利用できることを実証している。サーモセル電位を最大化するためにゼーベック係数を反対にした酸化還元対の使用は、他のシステムでさらに発展しており、6.4節で詳細に論じられている。 図5(a)異なる重量%のセルロース濃度を有する準固体電解質を用いたサーモセルの出力電力、(b)22℃における溶液中および固体電解質中のFe(CN)64-およびFe(CN)64-。挿入図:5wt%セルロースを含む固体レドックス電解質。(c)凍結乾燥後の準固体状態電解質の断面のSEM画像(5および20wt%セルロース)。ref 48より。
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