比例粘性減衰とは? わかりやすく解説

比例粘性減衰

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 03:37 UTC 版)

線形多自由度系の振動」の記事における「比例粘性減衰」の解説

4.1のように一般的な減衰行列 C が運動方程式存在する場合正規モード行列によって M と K は対角化できるが、C も同時に対角化することはできない。そのため、不減衰自由振動可能だったモード座標変換しての非連成化不可能となり、モード解析利点活かすことができなくなる。そこで、C が下記のような比例粘性減衰として与えられる仮定し実際振動解析が行われることも多い。 C = α M + β K {\displaystyle {\boldsymbol {C}}=\alpha {\boldsymbol {M}}+\beta {\boldsymbol {K}}} (4.8) ここで、α と β は定数で、比例減衰定数呼ばれる。比例粘性減衰を有する系を比例粘性減衰系などと呼ぶ。比例粘性減衰が成り立つと仮定すれば減衰行列対角化できる。 式4.8の形で与えられる比例粘性減衰は、特にレイリー減衰レイリー減衰呼ばれる。αM のみで仮定されるものは質量比例減衰、βK のみで仮定されるものは剛性比例減衰などと呼ぶ。 実際減衰が比例粘性減衰になっていることはまれであり、比例粘性減衰はあくまでも近似的なものである。しかし、比例粘性減衰の仮定導入することで、不減衰系と同じ取り扱いが可能となり、モード解析の手法が適用可能になる。もし減衰全体分布しているような構造であれば適当な比例減衰定数設定すれば、実際現象実用問題ないレベル再現できるという一定の妥当性もある。減衰摩擦材料減衰流体粘性など様々な要因で起こるため、そもそも減衰適切な定式化自体難しいといった事情もある。式2.3のように速度比例定数として与えられる一般の粘性減衰も、多種多様な発生機構によって減衰起きるという実情起因して厳密に成立しない。 式4.8を式4.1代入した場合M x ¨ + ( α M + β K ) x ˙ + K x = 0 {\displaystyle {\boldsymbol {M{\ddot {x}}}}+(\alpha {\boldsymbol {M}}+\beta {\boldsymbol {K}}){\boldsymbol {\dot {x}}}+{\boldsymbol {Kx}}={\boldsymbol {0}}} (4.9) という運動方程式になる。解を式3.2のように仮定して上式に代入し、整理すると、 { ( λ 2 + α λ ) M + ( β λ + 1 ) K } u = 0 {\displaystyle \{(\lambda ^{2}+\alpha \lambda ){\boldsymbol {M}}+(\beta \lambda +1){\boldsymbol {K}}\}{\boldsymbol {u}}={\boldsymbol {0}}} (4.10) となる。さらに、 γ 2 = λ 2 + α λ β λ + 1 {\displaystyle \gamma ^{2}={\frac {\lambda ^{2}+\alpha \lambda }{\beta \lambda +1}}} (4.11) とおけば、式4.10は ( γ 2 M + K ) u = 0 {\displaystyle (\gamma ^{2}{\boldsymbol {M}}+{\boldsymbol {K}}){\boldsymbol {u}}={\boldsymbol {0}}} (4.12) となる。式4.12は、(複素指数関数三角関数で解を仮定したときの)不減衰振動固有値問題における λ を γ に置き換えただけの式になる。したがって、比例粘性減衰を仮定した減衰振動固有モードは、同一質量行列剛性行列有する減衰振動固有モードと同じである。 一方、比例粘性減衰を仮定した減衰振動固有角振動数は、同一質量行列剛性行列の不減衰振動固有角振動数よりも小さくなるモード行列 U で減衰行列対角化すると U ⊤ C U = ( α M 1 + β K 1 00 0 α M 2 + β K 2 ⋯ 0 ⋮ ⋮ ⋱ ⋮ 0 0 ⋯ α M n + β K n ) {\displaystyle {\boldsymbol {U}}^{\top }{\boldsymbol {C}}{\boldsymbol {U}}={\begin{pmatrix}\alpha M_{1}+\beta K_{1}&0&\cdots &0\\0&\alpha M_{2}+\beta K_{2}&\cdots &0\\\vdots &\vdots &\ddots &\vdots \\0&0&\cdots &\alpha M_{n}+\beta K_{n}\end{pmatrix}}} (4.13) となる。この行列成分 αMr + βKr (r = 1, 2, …, n) をモード減衰モード減衰係数呼びCr などで表す。ここで、Mr はモード質量Krモード剛性である。さらに、 C c , r = 2 M r K r {\displaystyle C_{c,r}=2{\sqrt {M_{r}K_{r}}}} (4.14) という量を導入して、これでモード減衰割った量 ζ r = C r C c , r = α M r + β K r 2 M r K r {\displaystyle \zeta _{r}={\frac {C_{r}}{C_{c,r}}}={\frac {\alpha M_{r}+\beta K_{r}}{2{\sqrt {M_{r}K_{r}}}}}} (4.15) をモード減衰比と呼ぶ。多自由度系減衰系では固有モードごとに減衰効果異なっており、モード減衰比固有モードごとの減衰効果程度表している。ζr ≥ 1 ならば過減衰の状態であり、その固有モード振動起こらない。ζr < 1 ならば減衰振動となり、その固有角振動数は ω d , r = ω r 1 − ζ r 2 {\displaystyle \omega _{d,r}=\omega _{r}{\sqrt {1-\zeta _{r}^{2}}}} (4.16) で与えられる。ωd,r を減衰固有角振動数と呼ぶ。以上のように、線形1自由度系減衰振動考え方固有モードごとの振動にも当てはまる。正規座標変換行いモード減衰比固有角振動数用いて運動方程式を表すと、下記のように表現できる。 { q ¨ 1 + 2 ζ 1 ω 1 q ˙ 1 + ω 1 2 q 1 = 0 q ¨ 2 + 2 ζ 2 ω 2 q ˙ 2 + ω 2 2 q 2 = 0 ⋮ q ¨ n + 2 ζ r ω r q ˙ r + ω n 2 q n = 0 {\displaystyle {\begin{cases}{\ddot {q}}_{1}+2\zeta _{1}\omega _{1}{\dot {q}}_{1}+\omega _{1}^{2}q_{1}=0\\{\ddot {q}}_{2}+2\zeta _{2}\omega _{2}{\dot {q}}_{2}+\omega _{2}^{2}q_{2}=0\\\vdots \\{\ddot {q}}_{n}+2\zeta _{r}\omega _{r}{\dot {q}}_{r}+\omega _{n}^{2}q_{n}=0\\\end{cases}}} (4.17) ζr < 1 であればqr一般解積分定数arbr として、 q r = e − ζ r ω r t ( a r cos ⁡ ω d , r t + b r sin ⁡ ω d , r t ) {\displaystyle q_{r}=e^{-\zeta _{r}\omega _{r}t}(a_{r}\cos \omega _{d,r}t+b_{r}\sin \omega _{d,r}t)} (4.18) となる。物理座標 x へ逆変換すれば、比例粘性減衰系自由振動一般解下記のようになる。 x = ∑ r = 1 n u ¯ r e − ζ r ω r t ( a r cos ⁡ ω d , r t + b r sin ⁡ ω d , r t ) {\displaystyle {\boldsymbol {x}}=\sum _{r=1}^{n}{\boldsymbol {\overline {u}}}_{r}e^{-\zeta _{r}\omega _{r}t}(a_{r}\cos \omega _{d,r}t+b_{r}\sin \omega _{d,r}t)} (4.19)

※この「比例粘性減衰」の解説は、「線形多自由度系の振動」の解説の一部です。
「比例粘性減衰」を含む「線形多自由度系の振動」の記事については、「線形多自由度系の振動」の概要を参照ください。

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