桂文枝
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2025/08/21 13:59 UTC 版)
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桂 文枝（かつら ぶんし）は、上方落語の名跡。現在は6代目。桂文治の名跡が東京に移ってからは、事実上、上方桂一門の止め名となっている。
なお「文枝」の名跡は、元は初代文枝の師匠であった上方4代目桂文治の以前の名前であるが[1]、現在は代数に数えられていない[2]。
文枝代々の紋は、漢字の「文」をあしらった（4つの「文」を丸くつなげた）文枝紋である。
初代
| 初代
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|
| 本名 | 桂 文枝 |
|---|---|
| 別名 | 初代桂藤兵衛 |
| 生年月日 | 1819年 |
| 没年月日 | 1874年4月2日 |
| 出身地 |  日本 |
| 師匠 | 笑福亭梅花 3代目桂文治 4代目桂文治 |
| 弟子 | 桂文左衛門 初代桂文之助 初代桂文團治 2代目桂文都 初代桂文我 3代目桂文吾 初代桂文昇 初代桂談枝 2代目笑福亭木鶴 初代桂燕枝 3代目桂藤兵衛 笑福亭松右衛門 |
| 名跡 | 笑福亭万光（萬光） 桂梅花 桂梅香 初代桂文枝 |
| 活動期間 | ? - 1874年 |
| 活動内容 | 上方落語 |
| 配偶者 | サト |
| 所属 | 桂派 |
| 主な作品 | |
| 三十石 | |
初代 桂 文枝（かつら ぶんし、1819年（文政2年） - 1874年（明治7年）4月2日[3][注釈 1]）は、幕末から明治にかけての上方落語の落語家。本名同じ[3]。明治維新で庶民の名字が許された際に、本名も桂文枝としたと推測されている[3]。通称（あだ名）は「藤兵衛」[3]。弟は桂文福といい、後に兄の通称（あだ名）の初代桂藤兵衛を名乗ったと伝わっている[要出典]。
大阪市天王寺区の全慶院（浄土寺）から発見された墓碑に加え、子孫の所持していた過去帳により、出身や背景が『古今東西落語家事典』刊行（1989年）の時点では確認されていた[3][注釈 2]。それによると、生家は大阪市中央区心斎橋近辺にあったとされる[3]。文献では鍛冶職人と伝わっているが、子孫には家具職人と伝わり、道具も残されている[3]。『古今東西落語家事典』は「写真・肖像画の存在は今のところ知らない」としていた[3]。株式会社亘徳のウェブサイト「日本の墓」では、「掛け軸による肖像画も発見されている」とする[4]。
上方3代目桂文治門下とする説と、上方4代目門下とする両説があるが、『古今東西落語家事典』は「三代目が早く世を去ったために四代目に預かりけられたのかもしれない」としている[3]。1840年、笑福亭梅花の門人となり笑福亭万光（萬光）を名乗る[3]。後、文治の門人に移って梅香となり、4代目文治の以前の名前を継ぐ形で文枝を名乗る[3]。最初の読みは「フミエ」であったが、女と間違えられるため、「ブンシ」と読みを変えた。本来、実力から桂文治を襲名してもおかしくなかったが、文治代々が夭折したことを嫌って、敢えて文枝のままで襲名を行わなかったのだという。なお、「藤兵衛」というあだ名は、当時、藤兵衛という贔屓の旦那衆がこの文枝と容貌が瓜二つだったために、そう言われるようになったという。[要出典]
上方落語中興の祖であり、当時流行していた唄や踊り交じりの派手な噺ではなく、素噺で評判を取った[3]。この芸風は、2代目・3代目の文枝にも引き継がれてゆく[要出典]。また、前座噺の『三十石』を大ネタに仕立て上げた人物でもある[3]。この噺を質入して贔屓客が請け出したという伝説は長く伝わっている[3]。また、あまりにも人気があったため、寄席の席亭が文枝の画像を床の間にかけて敬ったという逸話もある[3]。
門人には、「四天王」として知られる、初代桂文三（後の2代目桂文枝、桂文左衛門）、初代桂文之助（後の2世曽呂利新左衛門）、初代桂文團治、2代目桂文都（後の2代目月亭文都）がいた[3]。そのほかにも、初代桂文我、3代目桂文吾、初代桂文昇、初代桂談枝、2代目笑福亭木鶴、初代桂燕枝、3代目桂藤兵衛、軽口の笑福亭松右衛門らがいた[要出典]。
江戸・上方ともに現在活躍している桂一門のほとんどが、この初代 桂文枝が始祖であり、直系一門2系統[注釈 3]4流派[注釈 4]のほか庶流として、初代桂文枝一門系譜→他派へ移籍または他派→初代文枝一門系譜へ移籍し桂の亭号・名跡を襲名した事例[注釈 5]や、他派でありながら実父・養父など親類が初代文枝一門の系譜であるため桂の亭号・名跡を襲名した事例[注釈 6]があり[注釈 7]、今に至っている。[要出典]
法名は、桂壽院善譽諦心文枝居士（けいじゅいんぜんよたいしんぶんしこじ）[3]。墓所は全慶院[3]。享年56[3]。1880年の7回忌には、弟子らによって天王寺圓成院（別名遊行寺）にて記念法要が行われ[3]、 同所に上記の天王寺区全慶院のものとは別の墓も建てられている[要出典]。その際、妻のサトは初代文三に2代目文枝の襲名を薦めたという[3]。サトとの間には1男1女がいたが、サトは同年6月22日に没した[3]。
2代目
2代目 桂 文枝（かつら ぶんし、1844年（弘化元年） - 1916年（大正5年）5月16日）は、後の桂文左衛門[2][5][注釈 8]。
3代目
| 3代目
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| 本名 | 橋本 亀吉 |
|---|---|
| 生年月日 | 1864年 |
| 没年月日 | 1910年12月24日 |
| 出身地 | 日本大阪 |
| 師匠 | 初代桂文枝 2代目桂文枝 |
| 弟子 | 2代目桂圓枝 初代桂歌之助 5代目桂文吾 4代目桂文枝 初代桂枝三郎 8代目桂文治 |
| 名跡 | 1.桂小文（1869年 - 1880年） 2.初代桂小文枝（1880年 - 1904年） 3.3代目桂文枝（1904年 - 1910年） |
| 活動期間 | 1869年 - 1910年 |
| 活動内容 | 上方落語 |
| 所属 | 桂派 |
3代目 桂 文枝（かつら ぶんし、1864年（元治元年） - 1910年（明治43年）12月24日[6][注釈 10]）は、明治期の上方落語の落語家。本名は「橋本亀吉」とされるが、死亡記事でも「橋本熊吉」とした新聞があったり、『浪速演芸家談叢』という書籍には「橋本梅吉」と記されたりしている[6]。
大阪上本町の城代用達「橋本屋」の子として生まれるが、幼少期に父と死別した[6]。住所の近かった初代文枝の寵愛を受けて小噺を伝授されたのちに入門し、6歳で小文を名乗り、法善寺泉熊席で初高座を踏む[6]。
1874年、初代文枝が没して2代目文枝門下に移る[6]。子供噺家として人気を得たが、変声期になると口演が難しくなり、舞踊や胡弓、笛を学んで端席で出演した[6]。
1880年に初代桂小文枝を名乗り、神戸を中心に京阪神地方の旅興行へ出る[6]。。1886年に帰阪[6]。1904年、3代目文枝を襲名した[6]。
芸風は上品ながら「覇気に乏し」かったという[6]。。持ちネタの豊富さは随一であったといい、『土橋万歳』『大丸屋騒動』『箒屋娘』などが十八番だった[6]。また、山村流の舞踊や、笛（桂萬光から伝授された）など、音曲の腕前も一流であった[6]。1906年には上京に際して伏見宮貞愛親王の前で『抜け雀』の口演および舞踊・胡弓の実演を披露した[6]。
桂派の中心と目されていた1910年12月20日、寄席に出演後に病気を発して入院し、4日後に数え年47歳で急逝した[6][注釈 9]。
没後に桂派は急速に衰退、反対派や大八会のように興行主が主導権を持つ形が主流となり、上方落語界全体が退潮するきっかけとなった[6]。
門下
4代目
| 4代目
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 1955年正月、「宝塚若手落語会」 前列左から4人目が四代目文枝[注釈 11] |
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| 本名 | 瀬崎 米三郎 |
|---|---|
| 生年月日 | 1891年1月29日 |
| 没年月日 | 1958年3月16日（67歳没） |
| 出身地 | 日本大阪 |
| 師匠 | 3代目桂文枝 |
| 弟子 | 5代目桂文枝 3代目桂枝之助 |
| 名跡 | 1.初代桂
2.2代目桂枝三郎（1910年 - 1921年） 3.坂東三津治（1921年 - 1932年） 4.坂東三之丞（1932年 - ？） 5.橋本文司（？ - 1946年） 6.4代目桂文枝（1946年 - 1958年） |
| 活動期間 | 1905年 - 1958年 |
| 活動内容 | 上方落語 |
| 配偶者 | 豊竹東昇 |
| 主な作品 | |
| 浄瑠璃落語 『小倉舟』 『愛宕山』 『蛸芝居』 |
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4代目 桂 文枝（かつら ぶんし、1891年（明治24年） 1月29日[要出典][注釈 12] - 1958年（昭和33年）3月16日[11]）は、明治から昭和にかけての上方落語の落語家。本名: 瀬崎米三郎[11]。満67歳没。
大阪坂町に生まれる[11]。生家は寄席だったという[11]。4歳から歌舞伎の子役として活躍するが、病弱になったため廃業した[11]。15歳の時、3代目文枝門下となり、初代桂
20歳時に2代目桂枝三郎となるが、旅回りでは「橋本文司」（橋本は師匠の3代目文枝の本名）の名を使用した[11]。1921年、舞踊家として山村流7代目坂東三津五郎の弟子となり、初め坂東三津治、1932年、三之丞を名乗る[11]。1932年からは満洲の新京（あるいは青島ともいう）で舞踊の教習所や、東北省長春で芸子相手に舞踊の師匠していたともいわれる。このころ2代目三遊亭百生も世話になっていたという。戦後は落語家に復帰し、橋本文司を再び名乗っていたが、1946年秋、4代目文枝を襲名。
経歴からも分かるように、舞踊は本格派で、噺を手早く切り上げて踊りを見せるのが常であった[11]。妻が女義太夫の豊竹東昇（豊竹呂昇門下）であったため、落語と義太夫を合わせた「浄瑠璃落語」なるものを作り上げ、披露していた[11]。 舞踊の名人7代目三津五郎にしこまれたこともあって、桐の高下駄をはいて枡の上に片足で立って十数本の扇を広げる「松尽くし」に見られるような高度な技量の舞踊などをも得意としていた。三津五郎の後見もしていたが、晩年になると、役者時代の事は後輩にはあまり話さず、「わしは市川箱登羅の弟子で、猫登羅やった。」と、とぼけて周囲を笑わせていた。[要出典]
ずぼらな点もあって、入れ歯の具合が悪くなり言語が不明瞭となっても全く意に介さなかった。5代目桂文枝は「入歯にのりつけるのがじゃまくさいんですな。…衣装なんかはきっちりしてるけど、かんじんのしゃべることについてはずぼらでしたな。」と証言している[12]。
得意ネタには『小倉舟』『愛宕山』『蛸芝居』等をよく演じていた[要出典]。
戦後は戎橋松竹にも出演。また「宝塚落語会」の指導者として、後進の指導にも当たった。門下には5代目桂文枝、3代目桂枝之助（後の俳優山本稔）らがいる[11]。
法名: 釈文枝。墓所は一心寺納骨堂。[要出典]
5代目以降
脚注
注釈
- ^ 生年は享年からの逆算のため[3]、1820年の可能性もある。
- ^ 『古今東西落語家事典』は墓碑の発見を「近年」と記す[3]。
- ^ 初代文枝門下桂文左衛門系統と初代桂文團治系統
- ^ 文左衛門より下る5代目桂文枝一門、初代文團治より下る3代目桂米朝一門・3代目桂春團治一門・江戸落語の2代目桂小文治一門であるが、江戸の2代目桂小文治一門を4流派（4代目桂米丸一門、2代目桂枝太郎一門、2代目桂小南一門、10代目桂文治一門）とし7流派とする場合もしくは2代目露の五郎兵衛一門を含め5流派とする場合もあるが、『止め名』を考慮しさらに亭号を『桂』に限った場合とした。
- ^ 初代桂小南（初代文枝のひ孫弟子にあたる）へ入門した8代目桂文楽と門下である9代目桂文楽や八代目文楽の孫弟子にあたる4代目桂文字助やひ孫弟子となる4代目桂右女助、7代目桂文治（初代文枝の孫弟子にあたる）門下の2代目桂小文治一門へ移籍した2代目桂小南門下（2代目桂文朝、一時2代目小南門下へ移籍した桂南喬など）、同様に二代目小文治一門へ移籍した2代目桂枝太郎のもとへ当初入門した3代目桂文生、一時2代目桂三木助（初代文枝のひ孫弟子にあたる）門下へ移籍した3代目桂三木助や9代目桂文治とその門下である7代目桂才賀
- ^ 3代目桂三木助の実子である4代目桂三木助と実孫にあたる5代目桂三木助
- ^ 3代目桂藤兵衛のように、桂派に祖がなく桂派の亭号・名跡を襲名しているケースも極めて少数ではあるが存在する。
- ^ 『古今東西落語家事典』は生誕の月日を未詳としているため[5]、1845年生まれの可能性もある。
- ^ a b 誕生日の日付が未詳なため、満年齢での寿命は不明。
- ^ 『古今東西落語家事典』は生誕の月日を未詳としているため[6]、1865年の可能性もある。
- ^ 前列左より桂春坊（2代目露の五郎兵衛）、笑福亭松之助、橘家円二郎、4代目桂文枝、3代目桂米朝、笑福亭小つる（和多田勝）、3代目桂米之助。後列左より見浪よし（5代目笑福亭松鶴夫人）、桂あやめ（5代目桂文枝）、旭堂小南陵（3代目旭堂南陵）、6代目桂小文吾、2代目桂麦團治、奥野しげる（宝塚若手落語会世話人）[10]。
- ^ 『古今東西落語家事典』は生誕の月日を「未詳」とする[11]。
出典
- ^ 古今東西落語家事典 1989, p. 257, 上方篇 二、幕末の群像（四代目桂文治の項）.
- ^ a b c 古今東西落語家事典 1989, p. 395, 索引小事典―上方.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x 古今東西落語家事典 1989, pp. 264–265, 上方篇 三、桂派と三友派（初代桂文枝の項）.
- ^ 著名人のお墓：初代桂文枝 - 株式会社亘徳
- ^ a b c d e 古今東西落語家事典 1989, p. 265, 上方篇 三、桂派と三友派（桂文左衛門の項）.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 古今東西落語家事典 1989, pp. 269–270, 上方篇 三、桂派と三友派（三代目桂文枝の項）.
- ^ 古今東西落語家事典 1989, p. 305, 上方篇 五、吉本派の興隆と漫才の台頭（二代目桂圓枝の項）.
- ^ 古今東西落語家事典 1989, p. 407, 索引小事典―上方.
- ^ 古今東西落語家事典 1989, pp. 177–178, 江戸・東京篇 九、昭和戦前の落語界（八代目桂文治の項）.
- ^ 桂米朝『桂米朝 私の履歴書』日本経済新聞出版〈日経ビジネス人文庫〉、2007年、p.93
- ^ a b c d e f g h i j k l 古今東西落語家事典 1989, p. 327, 上方篇 七、千語上方落語を支えた人々（四代目桂文枝の項）.
- ^ 『上方芸能』93号、『上方芸能』編集部、1986年11月、[要ページ番号]
参考文献
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出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。
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- 月亭春松 編『落語系圖』植松秀一郎（自費出版・春松の本名）、929年。NDLJP:1194413。
- 諸芸懇話会、大阪芸能懇話会 編『古今東西落語家事典』平凡社、1989年4月7日。ISBN 4-582-12612-X。
- 5代目桂文枝 著、小佐田定雄 編『あんけら荘夜話』青蛙房、1996年。 ISBN 4-7905-0285-6。
- 小島貞二『古今東西噺家紳士録 噺家系図付』丸善出版、2000年。（CD-ROMつき）
- 文枝代々
関連項目
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