格差社会に関する議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 09:06 UTC 版)
ジョセフ・E・スティグリッツは「格差はグローバリゼーション、労働・資本・モノ・サービスの移動、スキルや高学歴の従業員の優遇、技術変化の副産物だというものは真実ではない」と指摘する一方で「グローバル化による不均衡は、世界中に被害をもたらした。国境を越え移動する資本は、労働者に賃金の譲歩、政府に法人税の減税を要求した。その結果、底辺への競争が起き、賃金・労働条件が脅かされるようになった」と指摘しているしている。 トマ・ピケティは、資本主義では、資本収益率が所得成長率より高いのが常であり、先進国でも格差は拡大するとしている。ピケティは「資本主義を否定しているわけではなく、格差自体が問題だと言うつもりはない。経済成長のためには、ある程度の格差は必要であるが、限度がある。格差が行きすぎると、共同体が維持できず、社会が成り立たなくなるおそれがある。どの段階から行きすぎた格差かは、決まった数式があるわけではない」と指摘している。ピケティは、富裕層の資産が増えるスピードが一般の人の賃金などが増えるスピードを上回っていることが問題の根源だとしており、勤労よりも相続・結婚などのほうが資産を蓄積できる構造になっているとしている。ピケティは、資産を持つ者がさらに資産を蓄積していく傾向にあり、格差は世襲を通じて拡大すると結論づけている。トマ・ピケティは「格差の拡大が数十年続くと、社会基盤が揺らぐ」と指摘している。 政治経済学者のアルベルト・アレジーナらの研究によれば、ヨーロッパとアメリカの格差に対する意識の違いについて、ヨーロッパでは不平等感が高まると人々は幸福感が低下するのに対して、アメリカでは不平等感が高まっても幸福感に影響を受けないとしている。アメリカでは所得階層間の移動率が高いため、現在貧しいことは必ずしも将来の貧しさを意味しないのが、ヨーロッパでは所得階層間の移動率が低いため、所得の不平等感が深刻な問題だと考えられているとしている。 スティーヴン・ランズバーグは「幸福と所得が同等であれば、全員が中程度の所得の国の方が、一部が豊かで一部が貧しい国よりも優れていることになる。同時に最底辺の人々にも生活水準以上の福利が保証されている場合なら不平等も認められる。所得格差が大きくても最貧困者が十分に食べていける社会の方が、全員が等しく飢えている社会よりも望ましい」と指摘している。
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