新幹線整備後の在来線の将来像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/30 08:36 UTC 版)
「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」の記事における「新幹線整備後の在来線の将来像」の解説
新幹線整備は、沿線地域の並行在来線をはじめとする在来線の利用者数に影響を与えてきた。令和元年度調査では、新幹線整備が在来線に与える影響を明らかにし、新幹線整備後の在来線の将来像について検討された。人口減少下で並行在来線の経営が今後さらに厳しさを増していくことにも十分留意しつつ、沿線地域の特性と将来需要の見通しに応じて、地域における具体的な交通体系のあり方を整理することが必要であるとしている。 令和元年度調査では、整備新幹線(既開業区間)周辺の在来線56路線70ケース(開業時期毎)の輸送量(人/日)の変化が分析された。新幹線の開業前年度と翌年度を比較した場合、全ケース中、増加・横ばいのケースは約6割、減少したケースは約3割だった。開業翌年度から5年間を見ても増加・横ばいのケースは約6割だった。この分析では、開業前年度と翌年度の比較では2%の変化を、開業翌年度より5年間の比較では5%の変化を輸送量の増減の判断基準としている。輸送人員の増加が見られるのは主に定期外の利用であり、開業に合わせて観光施策を講じ、輸送量を増加させたと考えられる。 新幹線開業後の周辺在来線の輸送量変化開業前年度-開業翌年度(N=70)開業翌年度より5年間(N=70)輸送量増加輸送量横ばい輸送量減少分析不可輸送量増加輸送量横ばい輸送量減少分析不可39% (27ケース) 17% (12ケース) 29% (20ケース) 16% (11ケース) 19% (13ケース) 40% (28ケース) 34% (24ケース) 7%(5ケース) また、在来線56路線70ケース(開業時期毎)が新幹線との接続状況・位置関係から以下の6タイプに分類され、在来線の輸送量変化の分析が行われた。Aの並行在来線タイプにおいては、優等列車の廃止によって減少したケースの割合が大きい。一方、新幹線と接続するそれ以外のタイプ(B、C、D、Eタイプ)では、増加・横ばいケースの割合が大きいことが分かった。今後の調査では、新幹線整備後の在来線の営業方針や代替交通への転換に係る課題の整理が行われる。 在来線タイプ別の輸送量変化の傾向在来線タイプ調査結果事例事例数輸送量増加輸送量横ばい輸送量減少A:並行在来線 新幹線駅に接続する並行在来線およびそれに類する路線。新幹線開業後、優等列車の廃止による利用者全体の減少や、観光入込客数の増加による定期外利用者の増加が見られた。 肥薩おれんじ鉄道、IGRいわて銀河鉄道など 13路線(18) 2 1 4 B:新幹線-幹線接続 新幹線駅と幹線の駅を接続している在来線。新幹線開業に伴う観光・ビジネス利用増によると見られる定期外利用者の増加や新幹線開業により移動方向が変化し、長距離移動が減少する事例があった。 大糸線、八戸線など 6路線(7) 3 1 3 C:幹線 新幹線駅に接続する幹線。新幹線開業に伴う観光・ビジネス利用増があると思われ、利用者は増加する傾向。優等列車の再編や廃止に伴う利用者の増減もあった。 奥羽本線、高山本線など 5路線(6) 4 1 1 D:支線 新幹線駅に接続している支線(一方の終点がどこにも接続していない)の在来線。新幹線開業後、利用者は増加傾向。主に観光利用と思われる定期外利用者の増加が顕著な事例があった。 富山地方鉄道立山線、上田電鉄別所線など 6路線(7) 5 0 2 E:都市内交通 都市内交通を担う路線。いずれも都市圏人口の大きな都市にある。新幹線開業により、都市内での人の流動が増えることにより利用者が増加した。 熊本市電、富山地方鉄道富山軌道線など 3路線(3) 3 0 0 F:未接続 新幹線駅に直接接続していない在来線。新幹線開業前後において、利用者の増加が顕著な事例も確認された。 三角線、津軽線など 23路線(30) 10 9 10
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