新古典派成長モデルとは? わかりやすく解説

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新古典派成長モデル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/31 04:38 UTC 版)

経済成長の黄金律」の記事における「新古典派成長モデル」の解説

もともとデイヴィッド・キャスチャリング・クープマンスモデル社会計画のための最適成長モデルであったが、後にこれを市場経済における家計最適化行動おきかえて動学一般均衡モデルとして用いようになった。この種の動学一般均衡モデルを新古典派成長モデルなどという。 新古典派成長モデルでは、均斉成長利子率成長率を上まわり、消費黄金律より少なくなる黄金律達するほど時間選好率を低く設定すると、家計効用無限大発散するからである。このことを以下に示す。 まず企業考える。企業について次のように想定する企業多数存在し、どれも同じ構造をもつ。 企業競争市場労働者 N t {\displaystyle N_{t}} を雇い資本 K t {\displaystyle K_{t}} を借り生産物 Y t {\displaystyle Y_{t}} を売る。 生産技術 A t {\displaystyle A_{t}} は伸び率 a {\displaystyle a} で外生的上昇する企業生産関数 Y t = F ( K t , A t N t ) {\displaystyle Y_{t}=F(K_{t},A_{t}N_{t})} で生産を行う。 企業利潤最大化し、生じた利潤全て家計配当する生産関数について次のように仮定する。 F {\displaystyle F} は1次同次関数とする(規模に関する収穫一定)。 f ( k ) ≡ F ( k , 1 ) {\displaystyle f(k)\equiv F(k,1)} は2回微分可能で f ′ ( k ) > 0 , f ″ ( k ) < 0 {\displaystyle f'(k)>0,f''(k)<0} とする。 lim k → 0 f ′ ( k ) = ∞ , lim k → ∞ f ′ ( k ) = 0 {\displaystyle \lim _{k\to 0}f'(k)=\infty ,\lim _{k\to \infty }f'(k)=0} とする(稲田の条件)。 有効労働 A t N t {\displaystyle A_{t}N_{t}} あたりの資本を k t ≡ K t / A t N t {\displaystyle k_{t}\equiv K_{t}/A_{t}N_{t}} と定義すると、資本の限界生産力は f ′ ( k t ) {\displaystyle f'(k_{t})} と表される。競争市場であるから資本レンタル料は資本の限界生産力と一致し、また、市場利子率 r t {\displaystyle r_{t}} は資本レンタル料から資本減耗率 δ {\displaystyle \delta } を控除した分に等しくなる。 r t = f ′ ( k t ) − δ {\displaystyle r_{t}=f'(k_{t})-\delta } 有効労働の限界生産物は f ( k t ) − f ′ ( k t ) k t {\displaystyle f(k_{t})-f^{\prime }(k_{t})k_{t}} で表され、競争市場のもとでそれは有効労働あたりの実質賃金 w t {\displaystyle w_{t}} と等しくなる。 w t = f ( k t ) − f ′ ( k t ) k t {\displaystyle w_{t}=f(k_{t})-f^{\prime }(k_{t})k_{t}} 次に家計を考える。家計について次のように想定する。 家計は多数存在し、どれも同じ構造をもつ。 各家計の構成人数は伸び率 n {\displaystyle n} で増える。 各人は各時点で労働を1単位供給する。 家計は資本を保有し企業に貸す。初期時点でどの家計も同じだけ資本を保有する。 家計は生涯の効用を最大化するように、所得を消費と貯蓄に分配する 家計の生涯効用は次のように定義される。 U = ∫ 0 ∞ e − ρ t u ( C t N t ) N t H d t {\displaystyle U=\int _{0}^{\infty }e^{-\rho t}u({\frac {C_{t}}{N_{t}}}){\frac {N_{t}}{H}}dt} C t {\displaystyle C_{t}} は消費の総量、 N t {\displaystyle N_{t}} は総人口、 H {\displaystyle H} は家計の総数であり、したがって C t / N t {\displaystyle C_{t}/N_{t}} は一人あたり消費、 N t / H {\displaystyle N_{t}/H} は各家計の構成人数である。関数 u {\displaystyle u} は各人の各時点の効用を示し、それにその時点の家計構成人数を乗じた u ( C t / N t ) N t / H {\displaystyle u(C_{t}/N_{t})N_{t}/H} は各家計の各時点の効用を表わす。 ρ {\displaystyle \rho } は主観的な割引率であり、 ρ {\displaystyle \rho } が高いほど家計は目先を重視し先行きを軽視する。 関数 u {\displaystyle u} は次のような形を仮定する。 u ( c ) = { c 1 − θ 1 − θ θ ≠ 1 , θ > 0 log( c ) θ = 1 {\displaystyle u(c)={\begin{cases}{\dfrac {c^{1-\theta }}{1-\theta }}&\theta \neq 1,\theta >0\\\log(c)&\theta =1\end{cases}}} 有効労働あたりの消費 c tC t / A t N t {\displaystyle c_{t}\equiv C_{t}/A_{t}N_{t}} と有効労働成長率 g ≡ a + n {\displaystyle g\equiv a+n} を用いて家計生涯効用を表すと次のとおりである。 U = A 0 1 − θ L 0 H ∫ 0 ∞ e − ( ρ + θ a − g ) t u ( c t ) d t {\displaystyle U={\frac {A_{0}^{1-\theta }L_{0}}{H}}\int _{0}^{\infty }e^{-(\rho +\theta a-g)t}u(c_{t})dt} また次のように仮定する技術進歩を伴う割引仮定: ρ > ( 1 − θ ) a + n {\displaystyle \rho >(1-\theta )a+n} この条件追加することで家計効用無限大発散しないことが保証される。この条件満たされないと、家計効用無限大になり家計最大化問題適切に設定されない。この仮定本節目的のために重要であり、後で再び登場する代表的な家計は、 r t {\displaystyle r_{t}} や w t {\displaystyle w_{t}} を所与考える。家計予算制約は、生涯にわたる消費現在価値が、生涯にわたる労働所得現在価値と、ゼロ時点財産の和を超えないことである。割引因子を δ t ≡ e − ∫ 0 t r s d s {\displaystyle \delta _{t}\equiv e^{-\int _{0}^{t}r_{s}ds}} と定義すると、各家計消費C t / H {\displaystyle C_{t}/H} であり、労働所得w t A t N t / H {\displaystyle w_{t}A_{t}N_{t}/H} であるので、家計予算制約は次式のとおり表わされる。 ∫ 0 ∞ δ t C t H d t ≤ K 0 H + ∫ 0 ∞ δ t w t A t N t H d t {\displaystyle \int _{0}^{\infty }\delta _{t}{\frac {C_{t}}{H}}dt\leq {\frac {K_{0}}{H}}+\int _{0}^{\infty }\delta _{t}w_{t}{\frac {A_{t}N_{t}}{H}}dt} これを有効労働あたりで表すと次のとおりである。 ∫ 0 ∞ δ t e g t c t d tk 0 + ∫ 0 ∞ δ t e g t w t d t {\displaystyle \int _{0}^{\infty }\delta _{t}e^{gt}c_{t}dt\leq k_{0}+\int _{0}^{\infty }\delta _{t}e^{gt}w_{t}dt} 以上をまとめて家計最適化問題設定するためラグランジュ関数次のように定義する。 L = ∫ 0 ∞ e − ( ρ + θ a − g ) t u ( c t ) d t {\displaystyle L=\int _{0}^{\infty }e^{-(\rho +\theta a-g)t}u(c_{t})dt} + λ [ k 0 + ∫ 0 ∞ δ t e g t w t d t − ∫ 0 ∞ δ t e g t c t d t ] {\displaystyle +\lambda {\bigg [}k_{0}+\int _{0}^{\infty }\delta _{t}e^{gt}w_{t}dt-\int _{0}^{\infty }\delta _{t}e^{gt}c_{t}dt{\bigg ]}} 各 t {\displaystyle t} 時点c t {\displaystyle c_{t}} についての1階条件次のとおり(効用関数 u {\displaystyle u} の定義をつかう)。 e − ( ρ + θ a − g ) t c t − θ = λ δ t e g t {\displaystyle e^{-(\rho +\theta a-g)t}c_{t}^{-\theta }=\lambda \delta _{t}e^{gt}} この式の対数をとって時間微分して整理する次のオイラー方程式を得る(割引因子 δ t {\displaystyle \delta _{t}} の定義をつかう)。 c t ˙ / c t = ( r t − ρ − θ a ) θ − 1 {\displaystyle {\dot {c_{t}}}/{c_{t}}=(r_{t}-\rho -\theta a)\theta ^{-1}} また、資本蓄積は次式で与えられるk t ˙ = f ( k t ) − ( g + δ ) k tc t {\displaystyle {\dot {k_{t}}}=f(k_{t})-(g+{\delta })k_{t}-c_{t}} 以上をまとめると次の3つの式によりこの経済モデル記述されることになる。 c t ˙ = ( r t − ρ − θ a ) θ − 1 c t {\displaystyle {\dot {c_{t}}}=(r_{t}-\rho -\theta a)\theta ^{-1}c_{t}} (オイラー方程式r t = f ′ ( k t ) − δ {\displaystyle r_{t}=f'(k_{t})-\delta } (均衡実質利子率k t ˙ = f ( k t ) − ( g + δ ) k tc t {\displaystyle {\dot {k_{t}}}=f(k_{t})-(g+{\delta })k_{t}-c_{t}} (資本蓄積式) 均斉成長における値を添え字なしで表わす均斉成長では次が成り立つ。 r = ρ + θ a {\displaystyle r=\rho +\theta a} k = f ′ − 1 ( r + δ ) {\displaystyle k=f'^{-1}(r+\delta )} c = f ( k ) − ( g + δ ) k {\displaystyle c=f(k)-(g+{\delta })k} また、均斉成長では成長率が有効労働成長率 g = a + n {\displaystyle g=a+n} で決定される。そして、先に仮定した技術進歩を伴う割引仮定」の不等式 ρ > ( 1 − θ ) a + n {\displaystyle \rho >(1-\theta )a+n} に、 g = a + n {\displaystyle g=a+n} と上記の式1 r = ρ + θ a {\displaystyle r=\rho +\theta a} を代入すると r > g {\displaystyle r>g} を得る。すなわち均斉成長利子率成長率上まわる。このことは、 ρ > ( 1 − θ ) a + n {\displaystyle \rho >(1-\theta )a+n} の仮定によって保証される先に述べたように、この仮定満たされない家計効用無限大発散し家計最適化問題適切に設定できなくなる。 r > g {\displaystyle r>g} は新古典派成長モデルの均斉成長黄金律 r = g {\displaystyle r=g} の水準達しないことを意味するこのように新古典派成長モデルが黄金律達しないことを修正黄金律という。また上記の式1 r = ρ + θ a {\displaystyle r=\rho +\theta a} を修正黄金律ということがある。これを変形黄金則と訳すこともある。 なお、1989年オリヴィエ・ブランシャールスタンレー・フィッシャーによって出版された『マクロ経済学講義』では修正黄金律の定義が少し異なっている。ブランシャールらは最適化問題目的関数の定義で人口乗じず、また技術進歩考えない。すると、上記の式1は r = ρ + n {\displaystyle r=\rho +n} という形になる。ブランシャールらはこの数式、すなわち均斉成長利子率時間選好率と人口増加率の和で決定されるという数式修正黄金律呼んでいる。

※この「新古典派成長モデル」の解説は、「経済成長の黄金律」の解説の一部です。
「新古典派成長モデル」を含む「経済成長の黄金律」の記事については、「経済成長の黄金律」の概要を参照ください。


新古典派成長モデル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 23:50 UTC 版)

開発経済学」の記事における「新古典派成長モデル」の解説

他の条件貯蓄率投資率、人口増加率技術進歩率など)が同じであれば収穫逓減の法則の下に、貧しい国は豊かな国よりも高い経済成長率達成するので、長期的に国家間所得格差無くなると主張する。従って、現実観察される所得格差は、貯蓄率投資率、人口増加率技術進歩率などの差によって説明されるロバート・ソローによる経済成長モデル元にした議論で、1980年代半ばまで学界主流意見であった

※この「新古典派成長モデル」の解説は、「開発経済学」の解説の一部です。
「新古典派成長モデル」を含む「開発経済学」の記事については、「開発経済学」の概要を参照ください。

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