改訂された朝鮮の建国神話
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 20:02 UTC 版)
「朝鮮民族主義歴史学」の記事における「改訂された朝鮮の建国神話」の解説
李氏朝鮮中期 、歴史家の間で確立された見解は、朝鮮の起源を中国の難民にさかのぼり、朝鮮の歴史を中国とつながる王朝の長い連続だと考えた。箕子朝鮮と新羅はこのように価値づけられ、古朝鮮と高句麗は重要だとは考えられなかった。この見解によると、朝鮮で最初の国家である箕子朝鮮は、紀元前1122年に、殷王朝に不満を持つ中国の顧問だった箕子によって設立された。彼が朝鮮半島に詩、音楽、医学、貿易、政治システムを持って来た物語は、トロイの難民アイネイアースによるローマ建国と同様に考えられていた。しかし1930年代に、申采浩の歴史の影響を受けて、箕子朝鮮の建国物語より、虎と熊の子で朝鮮半島に文明をもたらした檀君の建国物語の方が人気が出たが、後者は日本の民話で一般的である。申やこの神話を宣伝した他の歴史家は、檀君を崇拝する新宗教運動である大倧教の影響を受けていたが、彼を日本の神スサノオの兄弟として描いた併合前の教科書の物語を攻撃した。申にとって、檀君は朝鮮民族と最初の朝鮮の国の両方の創設者であり、したがって、朝鮮の歴史のために必要な出発点だった。檀君を『三国遺事』の著者による創作だとする日本の学者白鳥庫吉と今西龍による挑戦に応えて、民族主義的歴史家崔南善は、日本の神話を創作によって作られていると攻撃した。 朝鮮民族主義歴史学は、「神聖種族」を創った神話の神を中心に、古代朝鮮を、文化的成果が中国や日本に匹敵する、「神々と英雄」の黄金時代として描こうとしている。それに沿って、申采浩は、檀君を持ち上げ、中国の黄帝や日本のアマテラスと同様の役割を演じさせた。崔南善は、彼の不咸文化理論に基づき、中国の皇帝や日本の天皇は古代朝鮮の「Părk」伝統のシャーマニズム的支配者だと思われるので、檀君を彼らの上に置きさえした。檀君の話も、朝鮮の遺産は5000年以上古いという主張に信用を与える。裵炯逸(배형일, Hyung Il Pai)によると、檀君研究の人気は「今日の朝鮮の歴史学と考古学が超国家主義的になってきている傾向を反映している」と言える。申采浩は、中国と朝鮮の国境の長白山(朝鮮語では白頭山)を、神話の檀君との関連の効力により、朝鮮の遺産の一部だと示した。しかし、長白山は、すでに17世紀から、清朝がその起源の神話のために領有権を主張しており、モンゴル人も同様で、中国の漢文化でも山は神聖だと考えられている。この長白山/白頭山と朝鮮人との民族主義的同一視は、中国国境から行われた朝鮮独立運動パルチザンの行動によって強固にされ、古朝鮮と渤海の歴史を参照して過去に遡って正当化された。古代朝鮮の中国文明との関係は、箕子朝鮮の歴史は「封建的支配階級、事大主義信者、大国至上主義者によって、不道徳に歪められた」と主張する北朝鮮の歴史家によって攻撃され続けている。
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