摂食活動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 19:58 UTC 版)
成虫・幼虫とも獲物を待ち伏せて襲い掛かり捕食する肉食性昆虫で、目の前で動いている捕獲可能なものならば何でも襲い掛かって捕食する。大食漢のタガメが生息するには大量の餌が必要で、タガメの存在はその地域の生物相が豊かであることの証となる。特にメスはオスに比べて体が大きく、産卵するためオス以上に多くの餌が必要となる。 かつてはドジョウ・フナなど淡水魚が水田におけるタガメの重要な餌となっており、1980年代ごろまでは日本各地の棚田でドジョウのいる水田が残っていたため、そのような水田ではタガメに食い殺されたドジョウの死体を多数目にすることができたが、ドジョウ・フナが水田から姿を消した近年ではカエル類がタガメにとって最も重要な餌となっている。このほかカブトエビを捕食したり、小川の水草の中に潜んで川の小魚(カワムツなど)を捕食したりする場合もあるほか、ギンヤンマの幼虫など大型のヤゴ類を含めた水生昆虫も食べる。また自分の体長の倍以上ある獲物を捕らえることも珍しくなく、都築 (2003) は「『釣り上げられたニゴイ(30 cm級)の腹にタガメがしがみついていた』という話もある」と述べている。 これらのような無脊椎動物・魚類・両生類だけでなく、爬虫類のヘビ・カメを捕食した記録がある。陸生の肉食性昆虫には他の昆虫・クモ類を捕食するカマキリ・スズメバチなどがいるが、魚類・両生類・爬虫類といった脊椎動物を常食する昆虫は、タガメ類以外にはほとんど例がない。なお獲物が自身の体より大きかったり激しく暴れる場合には前脚のみならず中脚・後脚も含め6本脚でしがみついてから口吻を突き立てるが、この行動は成虫に比べ体が小さい幼虫(特に若齢幼虫)に多く、前脚先端の爪も若齢幼虫では強く湾曲し、成長に従って湾曲が弱くなる傾向にある。 獲物を捕食する際にはイネなどに留まり、獲物が通りかかるまで鎌状の前脚を広げて待ち構え、接近した獲物に大きな前脚で襲い掛かる。そして獲物を捕獲すると直後に針状の口吻を突き刺し、口吻内に収納された口針を伸ばして消化液を注入する。「獲物の血を吸う」という表現がなされる場合があるが、決して血液のみを吸っているわけではなく、吐き出した消化液で獲物の肉を溶かし、液状になった肉質を口吻から吸収して食べる(体外消化)。この消化液はタンパク質分解酵素を含み、肉質を溶かすだけでなく骨までボロボロにしてしまうほど強力なもので、大きなトノサマガエルでもタガメに捕まってから数分で動かなくなる。獲物を仕留めた後、タガメは時々口吻を刺す場所を換えながら1,2時間程度かけてカエル・魚を食べ尽くすが、餌食になった生物の死骸は小さなものでは溶けかかった骨・皮膚しか残らず、大型の獲物も溶かされた肉質が流れ出しそうなほど柔らかくなる。あまり小さな生き物には関心を示さず、1齢幼虫でも自分よりはるかに大きな小魚に集団で襲い掛かり捕食するほどだが、狭い飼育容器内で大きい魚類・カエル類を捕獲すると一撃で仕留められず、獲物が暴れ回った際に容器の壁・流木などに激突して前脚の爪・関節を痛める可能性があるため、飼育下では体長の半分ほどの大きさの生き餌を数多く(大型でもタガメの体長と同程度のもの)与えることが好ましい。 タガメを含め多くの水生昆虫は極端な飢餓状態でない限り陸上で捕食行動を取ることは少ないが、これは「捕食中の個体は無防備で鳥などの外敵に襲われやすいため」と考えられている。ただし成虫・幼虫とも大量の餌を食べた直後は溺れやすいため、獲物を持ったまま植物などへ登り空気中で食べ続ける場合がある。排泄時には多量の尿酸を含む液体の排泄物を多量に排出する。
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