カワムツとは? わかりやすく解説

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かわ‐むつ〔かは‐〕【河×鯥】

読み方:かわむつ

コイ科淡水魚全長20センチ。主に山地の川にすみ、体形オイカワに似る。体色褐色で、体側に暗青色の1本の縦帯がある。繁殖期の夏には体色赤くなり、特に雄で著しい。本州中部地方以西分布あかむつ。むつ。


川鯥

読み方:カワムツ(kawamutsu)

コイ科淡水魚

学名 Zacco temminckii


カワムツ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/03 03:02 UTC 版)

カワムツ
初夏、激しい追星と強い婚姻色を呈するカワムツのオス(福岡県)
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: コイ目 Cypriniformes
: コイ科 Cyprinidae
亜科 : クセノキプリス亜科 Oxygastrinae
: カワムツ属 Nipponocypris
: カワムツ N. temminckii
学名
Nipponocypris temminckii
(Temminck et Schlegel1846)[1]
シノニム
英名
Dark chub

カワムツ(川鯥、Nipponocypris temminckii)は、コイ科に分類される淡水魚の一種。西日本東アジアに分布し、分布域ではオイカワウグイなどと並んで身近な川魚の1つである。

形態

初夏、抱卵したカワムツのメス、福岡県。

成魚の体長は10-15cmほど。オスがメスより大きく、大型のオスでは全長20cm近くなることもある。

側面形は紡錘形。上から見るとオイカワに似ているが、胴体に対してひれが小さいほか、側扁が弱いために体幅が大きい。大型になるにつれて胴の太い箇所が次第に長くなり、魚雷型を呈するようになる。頭部は吻が非常に短く丸い、ずんぐりとした形状である。口は大きくへの字に裂けるが、ハスのように唇が折れ曲がってはいない。

背中は黄褐色で、体側には太い紺色の縦帯がある。背中の背びれの前には黄色の紡錘形の斑点が1つあり、胸びれと腹びれの前縁は黄色である。オイカワと同じく三角形の大きな尻びれをもつ。若魚やメスは体側から腹部にかけてが銀白色だが、成体のオスは喉から腹にかけてが赤く、顔に追星がある。

外見は近縁のヌマムツによく似ており[2]2000年頃まではヌマムツと同種と見なされていた。

分布

日本では能登半島天竜川水系以西の本州四国九州に分布し、日本以外では朝鮮半島全域、中国にも分布する。台湾における分布は疑わしい。日本ではアユゲンゴロウブナなど有用魚種に紛れて放流されることにより、東日本(関東地方、宮城県)にも分布を広げている。

生態

生息環境

川や湖沼などに生息するが、ヌマムツやオイカワよりも水がきれいな所を好み、その中でも水流が緩い所を好む。岸辺の植物が水面に覆いかぶさったような所に多く、人が近づくと茂みの陰へ逃げ込む。

よく似たオイカワ(上)とカワムツ(下)の稚魚、福岡県。カワムツの臀鰭は薄く黄色味を帯びる。

川那部浩哉の宇川での研究によるとカワムツとオイカワが両方生息する川では、オイカワが流れの速い「」に出てくるのに対し、カワムツは流れのゆるい川底部分「」に追いやられることが知られる。さらにこれにアユが混じると、アユが川の浅瀬部分に生息し、オイカワは流れの中心部分や淵に追いやられ、カワムツは瀬に追い出されてアユと瀬で共存する。

河川に住むカワムツは河川が改修されて平瀬が増えるとオイカワが増えてカワムツが減ることがわかっており[3]、生物学の棲み分けの例として教科書等に載っている[4]。ただし、近年は関東地方の河川ではオイカワからカワムツが優先種となる逆のパターン[5]も見られ、これも河川改修等が原因と考えられることから、両者の関係には今後も注意すべきである。鮎に混じって放流されたカワムツが増加し元々生息していた在来魚が激減してしまった河川もある。また、河川改修による平坦化や農業用用水取水の影響による水量減少が原因となり、もともとは棲み分けをしているオイカワと産卵場所が重なることによる交雑も確認されている[6]

食性

食性については、水生昆虫や水面に落下した昆虫、底生動物を捕食するが、藻類水草も食べる雑食性である[7][8][9]

生活史

繁殖期は5 - 8月で、この時期のオスは腹部の赤色部分が広い婚姻色となり、顔は赤黒く、追星がくっきりと現れる。成魚は昼の暑い時間帯に川の浅場に群がり、砂礫の中に産卵する。なお、産卵の際はカップリングできなかった若魚が群がり、卵を食べることがある。

利用

分布域では個体数が多い身近な川魚で、水遊びの相手や川釣りの外道としてなじみ深い。釣り方は、ウキ釣り、ミャク釣りなど。練り餌川虫サシミミズ毛針、ブドウ虫(ブドウスカシバシンクイムシ等のの幼虫)など。あまり食用にはされないが、オイカワと同じく甘露煮唐揚げなどに利用される。泳がせ釣り用の活き餌として釣られることもある。近年では、オイカワと同じく、フライフィッシングの対象となることもある。また、動くものによく反応するため、ルアーフィッシングの対象として人気が高まりつつある。

飼育には大型の蓋つき水槽が要る。丈夫で餌も特に選ばないが、他の魚に対しては攻撃的、人間に対しては臆病な性格であるため、注意する必要がある。

名称

ハヤ、ハエ(各地・混称)アカバエ、ヤマソ(北九州)モト(近畿地方)ハイジャコ(和歌山県)ムツ、モツ(琵琶湖沿岸)ブト(静岡県)ダンバエ(岡山県)アカマツ(香川県)など、各地に多くの方言呼称があるが、多くの地方でウグイやオイカワなどと一括りに「ハヤ」と呼ばれる。ハヤという俗称は動きが速いことに由来するといわれる。

なお、カワムツを初めてヨーロッパに紹介したのは長崎に赴任したドイツ人医師シーボルトで、オイカワの属名 "Zacco" は日本語の「雑魚」(ザコ)に由来する。このオイカワ属にはオイカワとカワムツとヌマムツが含まれていたが、2008年にカワムツとヌマムツがこのオイカワ属 (Zacco) から新属のカワムツ属 "Nipponocypris" に分離された。日本では2013年発行の『日本産魚類検索』第3版に準じてカワムツ属 "Candidia" とされることもあるが、これは本書独自の属名変更とされる(オイカワもハス属 "Opsariichthys"となる)[10][11]。種小名 "temminckii " は、命名者の1人テミンクへの献名である。

2000年頃まではヌマムツと同種と扱われており、ヌマムツが「カワムツA型」、カワムツが「カワムツB型」と呼ばれていた。しかし、交雑がないこと、が細かいこと(側線鱗数カワムツ46-55、ヌマムツ53-63)、体側の縦帯や胸びれと腹びれの前縁の違い[12]や、カワムツが河川上中流などに住む流水適応型に対してヌマムツは用水路や支流、湖沼などの緩やかな流れを好む止水適応型であることなどから別種とされ、2003年にカワムツA型を和名「ヌマムツ」、カワムツB型を「カワムツ」とすることが決まった。

参考文献

脚注

  1. ^ Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2006). "Nipponocypris temminckii" in FishBase. April 2006 version.
  2. ^ カワムツとヌマムツ(大阪府立環境農林水産総合研究所)”. 2015年3月27日閲覧。
  3. ^ 川の自然を残したい 川那部浩哉先生とアユ(ポプラ社)より
  4. ^ オイカワ・カワムツ(棲み分け)”. 2015年3月27日閲覧。
  5. ^ あきる野市 生き物”. 2015年3月27日閲覧。
  6. ^ 愛知県で採集されたオイカワとカワムツの交雑個体 - 豊橋市の博物館 (PDF)
  7. ^ 細⾕和海 (2022年2月). “カワムツ”. 琵琶湖生物多様性画像データベース. 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター. 2025年6月30日閲覧。
  8. ^ 金光究 (2011年). “カワムツ”. いばらき魚顔帳. 茨城県内水面水産試験場. 2025年6月30日閲覧。
  9. ^ 奈良の川にすむ魚たち: カワムツ”. 奈良県環境森林部水・大気環境課. 2025年6月30日閲覧。
  10. ^ 水口憲哉オイカワ/カワムツはどこから来たか」『身近で楽しい! オイカワ/カワムツのフライフィッシング ハンドブック』フライの雑誌社、2019年。ISBN 978-4-939003-78-3https://furainozasshi.com/asakawa/20210202-3/ 
  11. ^ 河村功一「Book Reviews: 日本産魚類検索全種の同定 第三版」『タクサ:日本動物分類学会誌』第36巻、日本動物分類学会、2014年、33-35頁、doi:10.19004/taxa.36.0_33 
  12. ^ ヌマムツorカワムツ(日本淡水魚類愛護会)”. 2015年3月27日閲覧。

関連項目




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