授賞に係わる問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 08:44 UTC 版)
受賞が検討されるのは、現役引退、記録達成、オリンピックでの記録樹立といった節目がきっかけになることが多く、結果的にスポーツ選手は若年で授与される傾向にあり、芸能人・文化人にはそれがないために多くが死去時に初めて検討される傾向にある。そのために美空ひばりに対する授与など、没後追贈者が過半数を占めることについて「なぜ存命のうちに授与しないのか」との声があり、2003年に開かれた文化庁の「映画振興に関する懇談会」でも委員から、社会的認知という点において、三船敏郎の死去時に国民栄誉賞を与えるという話があったこと、決定権を持つ総理大臣の個人の主観で受賞者が決定されることが挙げられ、文化芸術分野は文化庁等で話し合って受賞者を決めて欲しいという意見が出された。 評価基準が非常に曖昧であり、2004年に当時の内閣官房長官細田博之は選考について「確たる基準がなく、その時々の判断」とし、「王貞治には授与されたが長嶋茂雄には贈られていない」など線引きの難しさを指摘している。2018年に羽生結弦への授与が取り沙汰された際は、同等以上の功績を持つスポーツ選手への授与が過去に無かったこともあり、政治家や評論家のみならず現役スポーツ選手からも疑問が呈され、勲章としての価値への言及もされるなど、大きな議論を呼んだ。 授与時の政権の思惑に基づくものであるという疑念や批判も常にあり、授与の検討報道がされるたびに、「政権浮揚が目的」、「贈られる側の賞ではなく、贈る側(政治家のため)の賞だ」、「スポーツの政治利用」などの批判意見が常に出て、顕彰の事務手続きを行う内閣府官僚も、「結局、時の政権が『国民栄誉賞を出したい』と言えば出さざるを得ない」としている。元ラグビー選手で神戸親和女子大学教授の平尾剛はこれをジュールズ・ボイコフの云う「スポーツ・ウォッシング」だと評している。なお2021年にNHKが賞と内閣支持率との関係を調査したところ、授与により支持率が上昇した例は少なく、逆に下がった事例が多数あることから、政権浮揚の効果はほぼ無いと結論づけている。 2011年7月にサッカー日本女子代表が団体では初の受賞となったことについて、表彰規定では表彰対象を「適当と認める者」としており、行政用語の場合は者に該当するのは個人や法人であり団体(集団、グループ)は含まれない場合が多く、国民栄誉賞を団体に授与するなら表彰規定の見直しが必要との意見もある。当時の総理大臣である菅直人は、国民が皆で喜べることから国民栄誉賞の案が浮上し、チームで勝利したことからチーム全体への授与としたと語っている。
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