惑星X仮説との混同
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/09 06:17 UTC 版)
「ニビル (仮説上の惑星)」の記事における「惑星X仮説との混同」の解説
1982年、ワシントンD.C.にあるアメリカ海軍天文台でロバート・ハリントンが木星、海王星、冥王星の軌道に摂動と誤差が生じていることを発見した。この摂動は冥王星の外側にある惑星クラスの質量を持つ天体によるものだと考えられ、ロバートはこの仮説上の天体を「惑星X」と命名した。ロバートが惑星Xの証拠を発見したと主張した直後、NASAもパイオニア10号とパイオニア11号の調査により、天王星と海王星の軌道に歪みが生じていることを確認しているが、これらの探査機が外惑星の近くを通過した際に惑星から受けた重力による加速度の値からこれらの惑星の質量が高精度で求まった。これによって、地上観測に基づく計算から得られていた外惑星の質量は最大約1%小さかったことが明らかになり、修正された質量に基づいて外惑星の軌道を決定することで矛盾は解消した。これらの宇宙探査機の軌道からは太陽系内にある未発見の大きな惑星の重力を考えなくてはならないような誤差は検出されなかった。多くの天文学者はこの事実から、惑星X仮説は役割を終えたと考えた。もっとも、天体の質量が小さい場合にはこの手法では検出できず、外惑星の軌道にも目に見えるような影響を与えないので、地球と同程度の質量を持つ天体が冥王星外に存在する可能性は依然として排除されていない。しかし、これらの状況はニビルとは一切関係がなく、ニビルの設定上の大きさや質量、軌道などと大きく矛盾し、むしろニビルの存在を否定している。 惑星Xがニビルと混同されるのは、作家のゼカリア・シッチンが1976年よりシュメール文明、古代宇宙飛行士説に関する著書、「The 12th Planet (第12番惑星)」と関連する7つの著書を発表したことによる。著書によるとニビルの名称の由来はシュメール文明の粘土板に描かれたとされる11個の惑星のうち1つが「ニビル」と呼ばれていたという。ゼカリアによるとニビルとはシュメール語で「交差する」を意味するというが、シュメール語における「ニビル」という単語は川の分岐点や船着き場を意味するものでゼカリアの翻訳は誤りである。 この著書は世界で25の言語に翻訳、各国で出版され商業的成功を収めた。著書の内容は極めて根拠の薄いものであったが、多くの人の目に触れたために影響力を持つに至った。科学者・歴史家・考古学者はゼカリアの著書について古代文献の解釈や物理学に関する理解に問題があると批判している。著書の中でゼカリアはシュメールの研究者を自称しているが、実際には考古学者や天文学者ではなくジャーナリスト・編集者であり、「The 12th Planet (第12番惑星)」以前にシュメール文明や天文に関する研究を行った事はない。 惑星X仮説とゼカリアの作品に登場するニビルとは一切の関係がなく設定上の物理的・天文的性質も矛盾するが、終末論やドゥームズデー・カルトでは混同される事が多いため注意が必要である。
※この「惑星X仮説との混同」の解説は、「ニビル (仮説上の惑星)」の解説の一部です。
「惑星X仮説との混同」を含む「ニビル (仮説上の惑星)」の記事については、「ニビル (仮説上の惑星)」の概要を参照ください。
- 惑星X仮説との混同のページへのリンク