従業員の転籍施策に纏わる諸問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 04:22 UTC 版)
「丸井」の記事における「従業員の転籍施策に纏わる諸問題」の解説
在籍社員の95%(5,100名:当時)を子会社に転籍させ、消費者ニーズに応え専門性を高め、経営資源の選択と集中を図るという大英断は、実施当時、株主や経済界からは一定の評価を得ると同時に、人件費の高騰と売上減少に悩む小売業界関係者から大いにその成否が注目された。しかしその一方で、この改革を前後に発生した出向と転籍を繰り返す雇用形態の変更、それに伴う人事制度・給与体系等の度重なる見直しによる混乱、完全成果型報酬体系がもたらす極端な年収のアップダウンにより生活設計が立てにくくなったことなどを理由に、旧来の丸井時代から会社を担っていた正規従業員らのモチベーション低下と多数の優秀な人材の外部流出を招いたといわれる。 当時の運営形態は各販売子会社と丸井本体との「業務委託契約」によるアウトソーシングの形であったが、実体として販社社員に対し丸井本体の管理職(店長・副店長など)が直接指揮命令を行っており、これが、いわゆる偽装請負にあたっていた可能性がある。もっとも、これは派遣法の理解不足や見解の相違がもたらした結果であり、製造業等で多発していたような最初から故意に違反行為を承知で実施した施策ではなかった。また、実際に勤務していた販社社員にはこういったビジネスモデル的な説明は転籍に際して事前にほとんどされておらず、それまでの勤務形態と比較してなんら変化を感じるものではなかったため大きな問題にはならなかった。なお、事務代行を主なサービス領域とするマルイスマートサポートなど一部の子会社を除き、丸井本体及び販売系子会社は一般・特定を問わず労働者派遣事業の許認可取得・届出はしていない。 その意味では、今回の雇用形態の再転換は事業再編による組織力の強化という目的の他に、こういった諸問題の解消という狙いが含まれていたと推測される。一部の革新系政党や労働団体まで巻き込んで議論がなされた一連の転籍騒動については、現在まで、当時の関係者も含め失敗であったと認める発言等は公式の場では見られない。一説には、この施策に不満を持ち早期退職していった人材数が会社側が当初想定していたものより遥かに多かったという現実に当時の青井忠雄社長が激怒し、施策の推進に大きく関与した関係役員を更迭したといわれるが、その因果関係は定かではない。しかし、“失われた5年間”に浪費した貴重な時間・資金、そして何より従業員のモラールダウンにともなう販売力の低下という大きな損失を招いてしまったことは否めない。同業他社を含めた大手小売業でこの改革に追随した企業はなかった。
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