待ち人の心得
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 03:57 UTC 版)
初出:『yom yom』vol.15〈2010年4月〉 依頼人、土谷功一の視点で語られる。 9年前の春、功一は飲み会の帰り、強風にあおられた少女が看板にぶつかり、額を怪我したのに出くわして、救急車で病院に同行する。日向キラリと名乗った少女は、後日電話をかけてきて、お礼に食事をごちそうしてくれたが、お金が足りないことが分かって結局功一が貸すことになる。知らないことを知らないと素直に認め、功一の言葉に心から感動し、貸した金も律儀に返すキラリに、功一は次第に好意を抱くようになり、やがて二人は功一の部屋で同棲を始める。しかし、出会って2年後、功一のプロポーズを受け入れたキラリは、バイトの友だちと旅行に行くと言って出かけたまま、帰ってこなかった。一緒に行ったはずの友だちは、旅行に行くことは聞いていないと言う。また、彼女が語った実家の住所はでたらめだったことが分かる。そして、その後もキラリの手がかりは全くつかめない。同僚の大橋も警察もキラリにだまされていたのだと指摘するが、プロポーズの指輪を受け取った時の「うれしい」と 言った表情が、嘘や演技だとは功一にはどうしても思えない。そこで、彼はずっとキラリと暮らした家に住み、彼女の帰りを待ち続けている。 キラリが失踪して7年後、功一は過労のせいで肩を痛めて病院に行き、そこで出会った老婆に、会いたい人がいるのではないかと指摘される。そして、使者について教えられた功一は、迷った末に使者に連絡できるという番号に電話をかける。 依頼後に連絡してきた使者の少年は、キラリの本名が鍬本輝子といい、7年前のフェリー事故で亡くなったと言う。 面会当日、功一は指定されたホテルに1時間早く到着する。そして、もしキラリに会ってしまうと、自分の中で生きていたキラリの死を認め、彼女を確実に殺すことになるのだと思って怖くなり、ホテルに入らずに逃げ出してしまう。喫茶店に逃げ込んでうつむいていると、使者が飛び込んでくる。そして、功一に「甘えるな」と叱咤し、キラリだって自分の死が功一の中で確定するのがつらいのに、功一に先に進んで欲しいから会うことを決めたのだと言い、キラリに会ってくださいと懇願する。 ホテルの部屋で待っていたキラリは、身の上を話し始める。出会った当時は20歳と言っていたが、実は17歳で、熊本の実家にいる頃は親子げんかが絶えず、思いつきで家出して東京に出てきて功一に会ったという。そして、功一にプロポーズされたことで、ちゃんと両親に会って謝っておかなければと思い、友だちとの旅行を装って出かけたところ、フェリー事故に巻き込まれたという。そして、君のために何もできなかったと言う功一に、キラリは幸せだったと言う。そして、クローゼットの中に「大事な物入れ」があるから、それを親に渡して欲しいと願う。それから、「大好き」という言葉を残して、キラリは消えてしまう。 功一が見つけた「大事な物入れ」の缶の中には、鍬本輝子の生徒手帳の他、2人で食べたキャラメルポップコーンの容器や一緒に観た映画の半券が入っている。生徒手帳から実家の住所を知った功一は、この缶を自分の手で両親の元に持っていき、おそらく未成年の娘と暮らしていた自分を罵るだろう彼らと、盛大にケンカしようと決意する。
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待ち人の心得
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土谷功一 都内の映像関連機器会社に勤める30代のサラリーマン。アイ子と病院で出会ったことがきっかけで使者のことを知り、7年前に突然失踪した婚約者、日向キラリに会いたいと依頼してきた。ところが、実際にはキラリの生存を信じていただけに会うことで、彼女が死んだという事実を認めることになるのを恐れ、面会の約束の時間にホテルに現れなかった。しかし、歩美に探し出されて、叱咤され、会う覚悟を決める。 キラリと再会して、ようやく彼女の死を受け入れることができ、望むと望まないとに関わらず、自分はこれから変わらざるを得ないだろうと思う。そして、彼女がクローゼットの中に隠しておいた「大事な物入れ」を見つけ、それを持って彼女の両親に会いに行こうと決意する。 日向キラリ(ひむかい きらり) 功一の婚約者だったが、7年前に友だちと旅行に行くといって出かけたきり、戻ってこなかった。 日向キラリは偽名で、本名は鍬本輝子(くわもと てるこ)。功一には、出会った当時20歳で埼玉県出身だと言っていたが、当時はまだ17歳で熊本の出身。実家にいる頃は親子げんかが絶えず、思いつきで家出して東京にやってきて、功一に出会った。日向キラリの偽名は、東京では風俗で働くことになると覚悟し、自分で考えた源氏名である。 功一に出会って2年後、彼にプロポーズされる。そこで、ずっと連絡していなかった両親に会って謝罪し、結婚することを報告しようと思い、熊本の実家に向かう。しかし、途中でフェリー事故に巻き込まれて溺死してしまった。 使者に呼び出された時、もし功一と再会すると、彼の中で自分の死が確定してしまうことになると思って躊躇するが、彼が7年も待っていたことを知らされ、彼を新しい道に送り出すために会うことを決意した。 再会した功一には、自分が幸せだったと語った。そして、クローゼットの中に「大事な物入れ」を隠してあるから、それを両親に送って欲しいと願う。そして、「大好き」という言葉を残して消えていった。 大橋 功一と同じ会社の同期。いつまでもキラリを待ち続ける功一を心配し、もう忘れるように促す。 大橋久美子 大橋の妻。功一とキラリが同棲を始めた頃はまだ結婚していなかった。功一がキラリにだまされているのではないかと大橋が心配したため、4人で一緒に食事をしたが、その時、キラリをいい子だと評した。
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