当時の批評
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 14:08 UTC 版)
1969年10月の『週刊現代』に「かくれたるピンク映画というのがあるそうな。東映と日活でつくられている"歌謡シリーズ"のことである。『長崎ブルース』、『港町ブルース』、『おんな』(東映)、『池袋の夜』(日活)。いずれも森進一、青江三奈のヒット曲の映画化で、二人の出演が売りものになっている。歌謡曲映画といえば、毒にも薬にもならないメロドラマとくるのが常識。『恐らく、これも』と思うと、完全にうらぎられる(?)...別の意味で、なんともスサマジいシロモノなのである。例えば近作『池袋の夜』。谷村昌彦がマンションの秘密クラブのシロシロの真最中で興奮し、女の体に酒をかけ、むざぼるように舐めまわすわ、和田浩治が女学生に男の味を教えるわ、由利徹が性具屋を冷やかすわ、青江三奈など、ほんのお添えものに過ぎず"夜の手配師"というサブタイトルにこそ、日活の製作意図があることが分かる。しかもこの映画の準主役として抜擢された高樹蓉子という新人、半年前まで東映で事務員をしていたというから、笑わせるじゃありませんか。聞くところによると『脱がされるからイヤ』とおひざ元の勧誘を断り『青春ものをやらせる』という日活に入った途端にこの脱ぎっぷり。映画を地でいく"ポン引き合戦"とは、さもしいことになってきた」などと書き、同じ月の『週刊平凡』は「舟木一夫が『廃墟の周囲』(仮題)で、二度目の松竹出演をしている。(中略)それにしても、森進一は東映で『おんな』、黛ジュンは日活で『涙でいいの』と、人気歌手を主演にした歌謡映画の製作があいかわらず盛んだ。たとえば、今年松竹では3度大入り袋が出たが、そのうち2本が歌謡映画。水前寺清子とコント55号の『神様の恋人』(『コント55号と水前寺清子の神様の恋人』)は配収2億5000万円、美空ひばりと橋幸夫の『花と喧嘩』(『ひばり・橋の花と喧嘩』)は2億円をバッチリ稼いでいる。これでは、たとえ橋、舟木クラスで一本400万円~500万円のギャラを払っても、充分にオツリがくる計算だ。とはいえ、歌謡映画といえば、歌手の人気におぶさり、脚本もずさんなら、撮影も人気歌手の出演場面は、せいぜい一週間であげてしまうというインスタント製作。例えば奥村チヨ主演の大映『あなたの好みの・恋の奴隷』(『あなたの好み』)の場合など、12月に公開が予定されながら、題名だけが決まっただけで、まだ台本も出来てなければ(10月3日現在)奥村の10月~11月のスケジュールも抑えていないというから、お粗末な話。こんなインスタント商法が、ますます映画を退潮に導くのではなかろうか」などボロクソに書いている。
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