建基法不況へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/06 05:14 UTC 版)
法改正により、建築着工前に設計図面などをチェックする建築確認に、新たに構造計算適合性判定制度を導入するなど、建築確認や工事検査を厳格に運用することになった。 しかし、法施行の準備不足で建築確認・検査の実務に関するガイドラインやチェックリストなどを示したのが法施行日の直前になり、その上、構造計算を厳格にするための大臣認定プログラム(注:コンピュータのソフトウエア)は施行日を過ぎても完成しなかった。さらに施行後も過度な二重チェックなどの厳格すぎる新規定が審査日数の長期化を起し、住宅着工数が激減することになった。 次第に倒産する住宅建設会社が増えはじめ、さらに悪影響は住宅建設会社に留まらず、セメント・鉄鋼・木材の建材メーカーなどにも及び、日雇い労働者の求人数も激減した。これらにより、サブプライム住宅ローン危機の震源地である欧米よりも日本の方が株価が低迷する事態が起こってしまった。 この状況について、町村信孝内閣官房長官(当時)は、2007年12月19日の官房長官記者発表において、「(平成)19年度の(実質GDP)見通しは、プラス2.0%程度ということでしたが、これが1.3%に下がったのは、主として建築基準法の改正に基づくもの、これで住宅が△0.4%、建築系設備投資、例えばスーパーの店舗を建てるといったようなものが企業設備投資に入るわけでありますが、これが△0.2%、ここが大きく響いたのかなということでございます。それに加えて、原油高騰、円高、また、所得の伸びの緩さ、消費もあんまり伸びなかったというようなこともあったようでございますが、大きいのはやはり、建築基準法でございます。」と語った。 また、同年12月28日、冬柴鐵三国土交通相(当時)は閣議後の記者会見で「改正に伴う混乱がこのように生じたこと、それが国民経済にも影響を与えたことについて、心から国民にお詫び申し上げたいと思います。」「手続きの運用についても行き過ぎがありました。このようなことがあったが故に、遅れた部分や大変ご迷惑を掛けた部分がありました。」「社会資本整備審議会に諮って専門家の意見を聴いて、どうあるべきかということについて審議をしていただいて、新しく作るプログラムはこのような条件を満たしたものでなければならないというご意見を学術的な面で聴いてそれに基づいてメーカーが開発するわけですが、これが予想に反してプログラマーにとっては大変難しい問題であって時間がかかったという点については、もう少し予想しなければならなかったのかなと思いました。」などと謝罪した。 さらに、福田康夫首相(当時)も、2008年1月25日の衆議院予算委員会で「行政上の予見が足りなくて産業界に大変御迷惑をかけた。」と謝罪した。 政府も対応策を順次実施して住宅着工数は上昇したが、施行前の水準には戻らないまま1年が経ち、施行から1年後の2008年6月20日、冬柴国土交通相(当時)は、「十分に準備したつもりですけれども、中々習熟していなかったという点がありまして、建築着工が大変な落ち込みをしてしまいました。7月、8月、9月は大変混乱しましたし、国民経済にまで影響を与えるということになってしまったことは、私も再々国民にお詫び申し上げていますけれども、改めてお詫びを申し上げなければならないと思います。」と再度謝罪した。 その後も施行前の水準に戻らないまま3か月後の2008年9月15日にアメリカ合衆国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズが破綻するリーマン・ショックが起き、日本経済はさらに深い景気の谷に落ち、住宅着工数もさらに激減し、回復に数年を要することになった。
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